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なぜ男性の方が、女性よりも肥満や糖尿病になりやすいのか? : 理由は内臓脂肪の違いにある

今回は、なぜ男性の方が、同年代の女性よりも、肥満や糖尿病になりやすいのか、そのメカニズムを明らかにした研究をご紹介します。
男性の内臓脂肪では、女性よりも炎症が起こりやすくなっており、この内臓脂肪の炎症によって、肥満や糖尿病を発症しやすくなっていることが明らかにされています。

紹介論文

Sex-specific adipose tissue imprinting of regulatory T cells
Nature. 2020 Mar;579(7800):581-585. 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32103173/

女性よりも男性の方が、肥満や糖尿病になりやすい

厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、20歳以上の人の肥満の割合は男性32.2%、女性21.9%となっており、
男性の方が、女性に比べて肥満の割合がどの年代でも多い傾向が認められています。
(下図参照: 厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要」/平成30年より)

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また、糖尿病が強く疑われる人の割合も、男性の方が女性よりも多いことが、わかっています(下図参照)。

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なぜ、女性よりも男性の方が、肥満や糖尿病になる人の割合が高いのでしょうか。

今回紹介する研究では、なぜ男性の方が、同年代の女性よりも、肥満や糖尿病になりやすいのか、内臓脂肪の男女の性質の違いに着目して、そのメカニズムを明らかにしています。

内臓脂肪が多いと、肥満・糖尿病になりやすい

体脂肪は皮下脂肪と内臓脂肪に分けられます。
皮下脂肪は体の表面付近についている、見た目にわかりやすい部分の脂肪のことです。

一方、内臓脂肪とは、おなかの中で腸の周辺など、そとから見ただけではわかりにくい部分に沈着しています。
分かりやすく言うと、皮下脂肪は指でつまむことが出来ますが、内臓脂肪を指でつまむことは出来ません。

このうち、内臓脂肪が多くたまった状態の肥満を内臓肥満と呼び、 特にインスリン抵抗性や糖尿病などの病気と関係が深い事がわかっています。

内臓脂肪が増えると、血統値を下げるインスリンの働きを弱める物質の分泌量が増えるため、内臓脂肪に肥満があると、糖尿病になりやすくなります。

雄マウスの内臓脂肪では、雌マウスに比べて、炎症が起こりやすい

今回の研究では、雄マウスの内臓脂肪では、雌マウスの内臓脂肪に比べて、Treg細胞という免疫細胞が多く存在していることを明らかにしています。

Treg細胞は、体の過剰な自己免疫反応、つまり炎症を抑える働きを持つ免疫細胞です。
この細胞が多いということは、その場所で炎症が強く起こっているということを意味します。
炎症が強く起こっているため、Treg細胞が炎症を鎮めようと、たくさん集まってきてそれを抑えようしているということですね。

また、雄マウスと雌マウスの内臓脂肪の遺伝子発現パターンを比較すると、雄マウスの内臓脂肪では、炎症に関連する遺伝子の発現が増えていることが示されています。

よって、雄マウスの内臓脂肪では、雌に比べて炎症が起こりやすいということが、これらの結果から示唆されます。

さらにこの研究では、アンドロゲンという男性ホルモンが、内臓脂肪に存在する間質細胞に働きかけ、この間質細胞が、Treg細胞を内臓脂肪へと引き寄せる物質を分泌していることも突き止めています。

内臓脂肪の炎症は、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高める

内臓脂肪が炎症を起こすと、TNF-αという、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めるホルモンが、内臓脂肪から多く分泌されるようになります。

女性ホルモンである、エストロゲンは、体の炎症を抑制する働きを持っています。
なので、女性の内臓脂肪では、男性に比べて炎症が起こりにくいと言えます。

一方で、男性の体内では女性ホルモンが少ないために、内臓脂肪に炎症が起こりやすく、その結果として、内臓脂肪からTNF-αといった悪玉ホルモンがたくさん分泌されるようになり、肥満や糖尿病を発症しやすくなっているということになります。

まとめ

✅  内臓脂肪が多いと、肥満・糖尿病になりやすい
✅  雄マウスの内臓脂肪では、雌マウスに比べて、炎症が起こりやすい
✅  内臓脂肪の炎症は、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高める

今回の研究から、男性の方は、内臓脂肪の炎症が起こりやすく、それによって肥満や糖尿病が発症・進行しやすいことが示唆されます。

男性の方は、内臓脂肪が増えないように、より普段から節制や運動など健康的な生活を心がけた方が良いですね。


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