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教育システムのゲームデザイン的アプローチ:漢字テストのインセンティブ設計と改善

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けテぶれチャンネルが始まりました。皆さん、こんにちは。パーソナリティの原祥太です。このチャンネルでは、全国の子供たちが自ら学び、自ら考え、自ら生きられるようになるために考えられた教育実践、けテぶれQNKS心マトリクスについてのお話をしていきます。

今回の放送では、僕がよく言っているシステムを作れという文脈の話で、その作ったシステムをチューニングするようなシーンが具体的に教室で現れたので、システムのチューニングという話をしていきたいと思います。

漢字テストのプラス点システム

先日、漢字大テストがありました。皆さんよく頑張って、1学期からの伸びを感じたり、もしくは1学期から下がってしまったりしたことで、自分を振り返り、2学期の自分の学習努力がどうだったかということを考えていました。

その中で、プラス点という仕組みがあります。これは100点以上が取れるという仕組みです。まずは合格点が取れるということが最低ラインとして定められているので、毎週の小テストの合格点は90点、単元テストは全部80点で合格ラインを切っています。まず80点取りましょうということですが、普通に一生懸命勉強したら80点ぐらいは皆さん狙える範囲です。苦手な子はそこを目指して頑張るという感じでいいのですが、80点を超えてきた子に関しては、そこからプラスで点数が入ります。

それは何かというと、習っていない漢字を書いたり、例えば「猫を飼う」という問題文で「飼う」を漢字で書かなければいけないのに、「猫」という漢字も書けたらプラス10点とか、「飼う」を使って「飼育」という言葉を書けたら、さらにプラス点が加算されます。文章にして使えたら1つにつき10点、もしくは1つの文の中にたくさんの言葉を入れられたらその分加点がされていくという感じでやっています。

さらに、「買う」という字を使った熟語や四字熟語、慣用句などを書けたらプラス10点、その意味を言葉で説明できたらプラス10点、意味を踏まえてそれを使った文章を書けたらプラス30点というような感じでやっています。

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現行システムの問題点

このルールで実際に運用すると、最初に言った漢字を使った文章で、1つの文になんか同じ漢字をたくさん使って文章を作ると、10点、10点、10点と漢字の数だけ点数が増えていきます。例えば、「飼育係がトカゲを買って飼っている飼育小屋」みたいな感じで、今のところそこをかなり緩くしていて、とりあえずなんとなく文章の意味が通っていれば、言葉を入れ放題で入れれば入れるだけ10点プラスどんどんされていくというルールになっています。

これは採点の負荷の問題があって、意味が変わって同じ意味の言葷を連続して使っても、あまり意味がないのですが、そこまで厳密に見られていません。出題されている字の意味はこれで、訓読みで考えられていて、それに対してプラスで、読みの別の読み方になっているかとか、熟語に関してもこういう熟語があるとか、そこまで細かく見られないので、もう出題されている漢字を見つければ、それを繰り返し使って10点、10点と数えていくぐらいしか、こちらのコストとしても払えないのが現状です。

そうなると、熟語を考えたり、文章を作ったりという努力をするよりも、一文になんでもいいから漢字を詰め込みまくって10点を重ねていく努力の方が実はコストパフォーマンスがいいのです。このような仕組みで限界まで点数を伸ばそうとしてくる子は、45分のテスト時間が始まった瞬間からチャイムが鳴るまでずっと書いています。時間が足りないので、時間がある限り書き続けるということになってきます。

そうなると、タイムパフォーマンスが重要になってきて、短い時間で効率的に点数を稼ぐという努力をしなければ、これは稼げてこないのです。子供たちも、こういうことがあるよねと話していました。つまり、何が起こったかというと、熟語とか意味とか文章とかを一生懸命努力して考え、学習してテストに臨んだ子よりも、そういう努力はせずに、ただ一文に漢字を詰め込みまくって、なんか意味が通っているのか通っていないのかも微妙な文章を大量に書く方が点数が伸びてしまったのです。

それを受けた時に、これは何かがおかしいということに子供たちも気づくわけです。僕も確かにそう思います。ここで重要なのは、効率的にやる子がズルいのではなく、ゲームデザインが悪いという話です。インセンティブ設計として、今のところその本当は学習価値としては熟語とか、二字熟語でも四字熟語でもそうですし、そこから慣用句とか小技とかに広げていくという、こういう語彙の広げ方をする方が語彙・言語学習としては豊かじゃないですか。意味が通っているのか通っていないのかわからないような、ただ点数稼ぎの長々しい文章を書くよりも、それはそれで結構頭の体操になるのでそれはそれだと思うけれども、その文章の中にも同じ読み方の字がたくさん入っていたりするので、頭のひねり方というか、その場での発想力みたいな指標になっちゃうわけです。

学習の本質からの乖離

それって語彙力というよりは、習った言葉をいかに何個も使って文章を書くかという発想力のようなことになっちゃっています。そういうものが点数として稼げてしまっているという状況は、漢字学習としてもおかしい。そういう方面に今の状況だとプレイヤーが流れていってしまうようなデザインになっているのです。それは微妙に学習の本質から外れるので、ちょっとここデザインを変えなきゃねという話を子供たちとしていました。

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システム改善の方向性

ここで1つのアイデアとしては、そういう発想勝負みたいな、何個漢字を入れ込んで点を稼ぎまくるみたいなものを制限するという方向です。ただ、これはプレイヤーにとってもちょっとテンションが下がるのです。今まで取れていた点数が取れなくなるので、そっちで努力してきた子の努力が無駄になるというか、そこで努力フォーカスしてきた子が否定されるみたいな感じになるので、そういう改変というのはプレイヤーの意欲を下げそうです。

かつ、現行のこのルールはチャレンジするハードルが低く、どの子もPlus点へのチャレンジがし易いという側面もあります。だから「禁止」のルールは適切ではないと判断しました。

そうではなくて、もうちょっとこっちの本質的に価値があるとされている、価値があると目されるほうの方面の褒美、インセンティブを上げていくという設計の方がプレイヤーとしても自然かという話をしていました。

子供たちとの対話によるシステム調整

自分でそういう言葉を使って文章を作る、1から文章を作るということにもまあまあ意味がないことはないかと思って今のところの話にしているのですが、もうちょっとこの辺整理して、プラス10の仕組みというものをその辺整理する。それをやり過ぎると本当に採点が面倒くさくなるので、ちょっとそことのバランスなのですけれども、そういうなんかちょっとこれは賢くなれないよねみたいなことは子供たちにはちょいちょい言うのです。

別にプラス10点入るけれども、これが自分にとって賢くなっている状況なのかということはあなたが一番よく分かっているはずだから、少しでも賢くなれるようなプラス点の取り方というのをあなたが工夫してねみたいな。取れる10点は一緒だよね、一緒だけどねみたいな位置付けなのです。今は子供たちが一番よく分かっているので、なんとなくとりあえず点数取りたいだけなら別にそういう感じで「家を出発する」「空港を出発する」とか、なんかもうただ言葉を変えて横にもう1個文章を付与すれば、それだけで全部作れば200点行きますから。漢字テストだったら200点行くわけです。

別にいいのですけど、別にそれでもプラスで文章考えて0から作るということやっているのでまあまあいいのだけど、もうちょっとレベル上げたいと思ったら上げれるよねみたいな。上げようと思ったら上げれるよねみたいな。そういう上げようとする努力というのはあなたの漢字学習の意味として非常に大事だから、そういうことはやってみたらいいんじゃないのみたいな話はして、それで子供たちは今調整してきたのです。

だからそれはそれでいっかに関しては、あんまり手つけなくてもいいかもしれないですけどね。話はそうじゃなくて、そっちはまあとりあえず置いといて、プラス点の熟語とか意味とかそれを使った熟語、文章とかが、今のところ熟語書いたら20点、意味書いたら10点、文章書いたら30点だったのだが、ここちょっと変えれるよねという話です。熟語書いたら30点にしましょうと。意味とかだって、いっぱい結構書かなきゃいけないのにいっぱい頑張って書いて10点だから、それちょっとインセンティブ少なすぎるよねということで、もう熟語書いて30点、意味書いて30点、それらを使って文章書いて30点の、もう30、30、30でいきましょうかみたいなことを言って。子供たちも確かにそれでそっちの方がいいかもねみたいなことで納得したので、まとりあえずそれで行こうかという話をしました。

ルールチェンジというのは、そのルールに基づいてそのルールを把握した上で努力を積み上げるという期間が保証されていないと、結果が出るタイミングでルールが変わっちゃうと、「いやいや、じゃあそれ前提に努力してきたのになんでこんなタイミングでルール変えんの」ということになっちゃうので、子供たちに経緯を説明して、こんな感じで三学期はちょっとルール変えようと、プラス点のルール変えようと思うから心づもりしといてねみたいな話を子供たちにはしました。

ゲーム開発との類似性

これ多分だけど、アプリでゲーム会社がゲーム作っていますけれども、本質的には多分同じことをやっていると思うのです。同じことというか、こういう種類の調整というのは、ゲーム開発の中にももうほぼ同じように含まれているような感じがして。つまりユーザーの動向を見て、インセンティブ設計からユーザーがどのように行動するのか、どういう行動にインセンティブが今のところ大きく付与されているのかみたいなことを分析し、システムを調節していくみたいな話です。そういうのを1つ1つチューニングしていって、プレイヤーの動きを誘導していくみたいな話ですね。どこにフォーカスを置いて、どういう行動を取って欲しいのかということをインセンティブ設計によって導いていくみたいな話を子供たちとはしています。

それをプレイヤーである子供たち自身と色々喋りながら、これだったらちょっと報われないよねという話ですね。つまり単語入れまくる方が点数取れちゃって、一生懸命熟語とか慣用句とか学習して臨んだ子の点数が伸びないみたいな。これはちょっとインセンティブ設計としてはおかしい、不自然だから調節しようねみたいな話を子供たちとしていたわけです。

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プレイヤー視点を考慮したシステム改変

はいということで、これはシステム作れって僕がずっと言っているところの1つのやり取りの具体的なシーンなのです。こうやってシステムをチューニングしていくのです。今のシステムではプレイヤーはどこに価値を感じて、こういう価値を感じてこういう行動を取ることがこの学習空間において最も合理的な判断になるよねみたいな。今のシステムだとこう判断するのが最も合理的だとプレイヤーは考えるよね。だから今プレイヤーはこうそういう行動に流されていってしまっているよねという洞察をし、じゃあシステムの中のどこにどのような変化を加えたりとか条件を加えたりとかすることがいいのかな。もっとこういう行動を取って欲しいと思っているのならば、このシステムの中のどこに変更を加えればプレイヤーはそういう行動を取るようになるのかなという視点で教室を見て、その改変もいろんなパターンがあるので、さっき言ったように今までやれていたことがやれなくなるみたいな改編はプレイヤーにとってあんまり飲み込みにくいわけです。

それよりもプラスアルファでやれなかったことがやれるようになるという改編の方がプレイヤーにとっては喜ばしいので、その改変の種類も、どこをどのように改変すると最もプレイヤーが自然にその変更を受け止め行動を変容させていくかな。システムのいじり方に工夫を加えていくということです。これを変にルールで縛っていくというのは、ゲームで言うとプレイの規約ですね。プレイ規約を1つ増やすということで解決しようとするというような発想になるのです。

これめっちゃ嫌でしょ。こんなゲーム、こうやってこうやったらめちゃくちゃ経験値が稼げてめっちゃいいじゃんと誰かが発見して、「わあ本当だ」って言って、みんなでやって。その行動が開発者としてはちょっとやって欲しくない行動だった時に、「こうやってこうやる方法を禁ずる」みたいな1文をプレイ規約の中に入れて終了みたいな。で、たまにそれに違反したプレイヤーが吊し上げられて、なんかゲームデータ消されたりとかなんか罰を受けるみたいな。そんなゲームやりたくないでしょという話です。

そうではなくって、もっと自然な形で前向きな形でシステム変更をプレイヤーが受け入れて行動変容するみたいなツールを探していくということが指導者にとっては大事なんじゃないかなと思うわけでございます。

教育におけるゲームデザイン思考の重要性

はいということで、今日はシステムのチューニングの話でした。こうやって子供たちと相談することもあるし、指導者の中で思考しながらちょっとずつシステムを変えていくということを仕組んでいくというのは、こちらが判断してこちらが提案してということをやっていくこともあります。

それはもうつまり、ゲーム開発会社がプレイヤーの動向を見て様々なアップグレード、アップデートを重ねてソーシャルゲームを運営していくことと非常によく似ているので、こうやってゲームデザインをするという発想はなかなか今の教育大学では全く教わらないですし、、あまりこういう発想にならないような気がするので、ちょっとそういう目線でシステムデザイナーというか、システムの管理者という視点で教室を見て、そのシステムの中で振る舞うプレーヤーとしての子供たちみたいな発想をしてみると、ちょっと教室の見え方が変わるんじゃないかなと思ったりします。

はいということで、今日はシステムのチューニングという話でございました。では明日の放送でまたお会いしましょう。バイバイ。

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