清流の川音 囁きながら 友を呼び ある者は 大きく泡を吐いて喧嘩をし ある者は 肩を擦り寄せ合い戯れる 笑顔の楓が大きく口を開け 重なり合う山々に …うさぎ追いし、かの山… …小鮒釣りしかの川… …… 温かな声と凜とした静けさの中 川をくだりながら沁み渡る 湯煙立つ山里の空は高く 鱗雲の合間に人差し指を立て 希望の朝日を待ちわびる 幼き子どもの瞳が眩しい アグア
ため息をつきながら フッー…と肩を撫で下ろし 部屋の明かりをつける テーブルの上に丸い熟したみかん みかん色が部屋の隅々まで伸びて 私はみかんを手に取る 親指で皮を何度もなぞりながら… 遠い昔の家族が笑いかける 口元が緩み口角が少し上がった 二つ目のみかんを手に取ると 腐りかけてたみかんの皮が破け 汁が滲んでる 親指を思いきり押し込んだ その瞬間… 人生のリセットボタンが押された
窓ガラス越しに薄明の空をみあげ 夕焼け色の虹を見た 身体の芯の部分が フワフワと力強く引っ張られ 街路樹に足を走らせる いつもの街並みが虹を背にし 輪郭を纏い立体化して近づいてくる… 静かに真っ直ぐ 自身の存在感を誇示するように 私に問う …綺麗でしょ… …貴方の居場所は… …どこ… 貴方の指先が私の人差し指に触れた 熱線が粒が体内に散布され 右頬に温かさを感じる 貴方の顎の輪郭に触れたくて 両手を伸ばす もう虹は宙の彼方へ姿を消した 貴方がいる
貴方とのLINEの文字を眺めながら… 人差し指でゆっくりと愛でるように 何度も何度も言葉に触れる… …あなたに触れたら泡になって 消えてしまいそうで… …でも… …今すぐ、あなたをこの腕に包み込みたい… 言葉が私の指に触れる高揚感 指先に小さな針の光が音も無く刺す その刺激は熱を帯びて全身に巡り耐えきれず 外へ遠くへ放物線を描くように そして一気に放出されていった 愛の言霊が目の前の景色さえ一瞬で変化させる 躰が軽くなり時を超えた
空気が冷たく張り詰める真夜中に… ふっ…と目が覚めた 体を横に向けフワフワな羽毛布団に顔を埋めながら肺の奥まで息を吸い込み吐出した それから左右に何度も何度も 顔を擦り合わせる… 布団を身体を巻きつけながら… 僕は昨日の君の声や瞳を思い出す たくさんの言葉の掛け合いの後に 君の声が少しづつ小さくなり… 泉から湧きでたような艶やかで凛とした涙が 君の大きな瞳から流れる落ちる… どれくらいの時間が流れただろう …生きる意味はきみにある…と 君の瞳を真っ直ぐ見て
ビルの灯りが次々と消えて行く。寒い季節が大地に根を広げるように静かに…そっと…そっと近づく。コンクリートの冷たさがぶつかり合いながら私の前方で長く大きな壁を作る。 残業をする時はいつも一人と決めている。私の中のもう一人と対峙するために… 私は幼い頃から人と話すのが苦手だった。物心ついた時には大人が話す口元を見ながら、口から苔や昆虫、着色した液体がダラダラと流れ出るのを何度となく見てきた。そんな時は決まって顔の皮下組織に潜む一部の血管が小刻みに動く。私の胸がザワザワと
夕方5時過ぎ 金木犀の香りに誘われて 鼻を空に突き上げる 住宅街の雑踏の中 私の胸のザワザワするものが動き出し 身体の隅々まで走り回る 公園で子ども達が風を切る 料理店の裏口から遠い異国のスパイスが香り 今まで食べた料理を思い浮かべながら 私の思考を奪っていく… 踏切の警告音 コン、コン、コンとリズムよく鳴り響く 踏切を足早に渡る青年達 金木犀の香りが声を運ぶ 「合唱の練習をしよう」と誘う青年に 友が答える… そして空に向かい友と歌い歩く 大
突然恋に落ちたあの日から10年が経ってしまった。あの時の事を時々思い出す。 そんな時、厳しく長い冬を耐え、やっと芽が顔を出した蕾が暖かな太陽を浴びて膨らみ、花が咲く瞬間の様なエネルギーが私の身体を包み虹色に熱くなる…。私は思いっきり手を伸ばし、身体を抱きしめる。愛おしく彼を思って…今でも…。 あの日は夕方から雨が降り始め、秋の空気をいっそう冷たくしていた。 友達の雪乃とお祭りに出かけた帰り道に後ろから声をかけられた。「もう、帰るの」…と低くて透き通る優しい男性の
言葉の投げ合いが続き 小さな棘が彼と私の心の奥底に ズサズサと突き刺さる 些細な日常の埃がいつの間にか 積み重なっていた 彼の怒りの塊が彼自身を殴ったかのように みるみる憎しみに満ちた形相に変化した 怒りの電波を帯びた部屋の物たちが 宙に舞いグサリ、グサリと身体を傷つける 言葉は熱で燃え尽き灰になって ユラユラと茜色の夕焼けに吸い込まれた 何が言いたかったのか…言えたのか… わからない 夕焼け空、私の頭上にカラスが一羽 私が悪いとばかりに鳴き叫ぶ
ドアを開けた瞬間に 私の頬に秋かぜが吹く 火照った体の熱がサラサラと 小川の様な優しさで 一気に流されていく… 体の芯からつま先まで身体を確かめる様に… 私はスカートの裾を少し襷上げ コンクリートのステージで踊り出す つま先を上げ無重力の中でのステップしていた いつからだろう… 夕焼け色のライトが私を照らした 汗と一緒に私の黒髪が顔にくっついていた 黒い仮面がゆっくりとはがされ 私の心がしっかりと叫んだ 胸がすくほどかっこいい1日だった…と
雨の夜 私の身体はチョコレートに溶けていく 甘くて苦い気持ち 屋根に当たる雨音 トントン…トン…トン… 時を少しずつタイムスリップさせる 私の奥に眠っている記憶が目覚める 花のように笑う彼の笑顔 互いを探るような口づけ 温もりが繭のように私を包む そして私は静かに 満ち足りた気持ちで眠りにつく
4月から中学生になった。クラスには小学校 からの友達が1人、薫ちゃんが居たので何とか小さな居場所を作ることができた。 中学校の世界は薄っすらと化粧をした人、背が高く胸板が厚い人など、不揃いな人間がたくさんいる。先輩とすれ違う時の汗とコロンの匂いに私の鼓動が敏感に動いた。 コンクリートの校舎は冷たく、爪で引っ掻いた様な跡がいくつもある3階建ての建物。小学校の校舎と変わり映えしないのに私の身体はゾワゾワする。 私の教室は1階だったった。休み時間、ぼーっと窓際の席に座っていた
初めまして。こういうのを書くのは初めてなので、お見苦しい所も多々あると思いますが温かい目で読んでもらえたらなと思います。 そもそも、文書を書くのは苦手で頭の中が整理されずに悶々とする事が多くて… 皆さまに読んでもらうことで、自分の中にあるイメージした物や形、気持ちや言葉を書いてスッキリとさせたいと思っています。 今のところ…主にフィクションの短編小説、言葉探しなどを緩く書いていこうと思います。 よろしくお願いします。