夏色 陣

「私の彼は優しすぎる。」という話を書いてます。 フィクションです。

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「私の彼は優しすぎる。」という話を書いてます。 フィクションです。

記事一覧

私の彼は優しすぎる。36-他人。

「どうしたの、顔色悪いよ」 彼がバックパックを小さなソファに置きながら訊いた。 カリモクの彼のお気に入りのソファ。 「なんでもない」 私はそう言ったけどぎこちな…

夏色 陣
3年前

私の彼は優しすぎる。35-蒼白。

元奥さんはどういう心境で 今も彼の横に立ち ビジネスパートナーとして歩んでいるのだろう あの小柄で目立たない女性は 案外したたかに割り切っているのだろうか とっ…

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3年前
1

私の彼は優しすぎる。34-不倫。

そのとき誰も口にはしなかったけど 何となく冷めた空気が漂い 『え、彼女が彼の奥さん?』 と皆が残酷にも感じていたのが伝わってきた 華のある男に対し 野暮ったい見…

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3年前

私の彼は優しすぎる。33-醒。

それは戦慄の体験だった。 大学時代のちょっとした同窓会みたいなものがあった。 相変わらずグルメな先生がお店を選び 元女子大生の仲間がわらわらと集まる 先生が選ん…

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3年前

私の彼は優しすぎる。32-LINE。

ちらっと覗いた彼のスマホの画面は LINE通知が流れるように続いていた 「私のことって内緒だった?」 「うん…ごめんね、先輩にきつく言われて」 「ううん、マツイくん…

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3年前

私の彼は優しすぎる。31-香水。

彼は合コンに行くことは報告してくれたけど それがいつなのかは特に言わなかった。 でもある日帰宅して 匂いでそうかなと思った。 「どうだった、合コン」 こういうの…

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3年前
4

私の彼は優しすぎる。30-夢。

怖い夢を見た 夢なので何の脈絡もないけど 母親が海で溺れて 意識を失い蒼白になっている夢だった 父親が母を助け 私は遠くからふたりに近づこうとしてる 父親はなぜ…

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3年前
1

私の彼は優しすぎる。29-センサー。

彼女がいるのに合コンに行くのが 彼の正義に反していて 彼はごめん、と言ったのだろうけど それには 自分がモテてしまう自覚も含まれていたと思う 世の中にはイケメン…

夏色 陣
3年前
2

私の彼は優しすぎる。28-寛容。

「かわいそう、マツイくん」 「え?」 思わず心の声が出た 「行きたくないのに行くんでしょ」 その意味もあった 彼は本当に興味が薄いと思う 彼はそういうお金がある…

夏色 陣
3年前
3

私の彼は優しすぎる。27-ごめん。

彼は帰宅すると 少し困った顔をしていた。 感情の起伏があまりない彼がたまに見せる表情だ。 「どうしたの」 私が訊くと待ってましたと言わんばかりに 堰を切って話し…

夏色 陣
3年前

私の彼は優しすぎる。26-靄。

朝起きると つい癖で昨日までのように前髪を横に流してしまった。 私は簡単に変われそうにもない。 彼はいつの間にかどんどん洗練されていって 「都会の人」になったの…

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3年前
6

私の彼は優しすぎる。25-複雑。

彼は帰宅すると 「いいじゃん」 と髪のことを微笑んで誉めてくれた 「ありがとう、予約してくれて」 言いたいことは一呼吸置いてから言うタイプだ 「まっちゃんなのね…

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3年前
1

私の彼は優しすぎる。24-同じ。

私は知らなかった 美女だけでなく イケメンも得をすることを 美女に生まれてくると得、とは聞いたことがあったけど イケメンも得をしていた 彼はカットモデルをして …

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3年前
1

私の彼は優しすぎる。23-紅潮。

仕事終わりに地下鉄に乗って美容院に向かった 『彼と同じカラーにしてください』 と言えばいいだけ レセプションで名前を言って席に案内された 「どうも、はじめまして…

夏色 陣
3年前

私の彼は優しすぎる。22-見えにくい。

『いつ行きたい?候補日教えてくれたら伝えるよ』 彼から返事が来て、私はそれに甘えることにした。 平日の19時以降でなるはやで、 と業務連絡みたいなLINEをした。 そ…

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3年前
1

私の彼は優しすぎる。21-メタモルフォーゼ。

私は彼にLINEして 彼がいつもカラーしている美容院を尋ねた。 学生の頃はお金がなくて 彼の髪を切り揃えたこともあった 彼はそれくらい無頓着だった 思えば就活くらい…

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3年前
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私の彼は優しすぎる。36-他人。

私の彼は優しすぎる。36-他人。

「どうしたの、顔色悪いよ」

彼がバックパックを小さなソファに置きながら訊いた。

カリモクの彼のお気に入りのソファ。

「なんでもない」

私はそう言ったけどぎこちなくなってしまった。

「なんでもなくなくない?」

彼は心配そうな表情で私の顔を覗き込んだ。

「・・・こないだ大学時代のみんなと食事したじゃん」

「うん」

「素敵なご夫婦がやってるお店」

「あーなんか有名なシェフって言ってた

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私の彼は優しすぎる。35-蒼白。

私の彼は優しすぎる。35-蒼白。

元奥さんはどういう心境で

今も彼の横に立ち

ビジネスパートナーとして歩んでいるのだろう

あの小柄で目立たない女性は

案外したたかに割り切っているのだろうか

とっくのとうに愛は冷めていたのだろうか

離婚が明らかになる前、シェフの名前を調べたとき

平凡にも温かく「妻」への感謝を述べていた。

それも単なる「セルフプロデュース」の一環だったのだろうか

そして今度は新しい妻のことを検索した

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私の彼は優しすぎる。34-不倫。

私の彼は優しすぎる。34-不倫。

そのとき誰も口にはしなかったけど

何となく冷めた空気が漂い

『え、彼女が彼の奥さん?』

と皆が残酷にも感じていたのが伝わってきた

華のある男に対し

野暮ったい見た目の中年女性

不釣り合い

だけど

腕がある。センスがある。

彼の出世には欠かせない奥さんの存在

私は彼女の才能を「担保」にふたりは別れないんだろうな、と勝手に思った

でも違った

それから本当に間もなくのことだった

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私の彼は優しすぎる。33-醒。

私の彼は優しすぎる。33-醒。

それは戦慄の体験だった。

大学時代のちょっとした同窓会みたいなものがあった。

相変わらずグルメな先生がお店を選び

元女子大生の仲間がわらわらと集まる

先生が選んだのは

私は知らなかったが

雑誌等のメディアにもよく登場している

人気シェフのお店だった

女性ばかりでかしましく

先生も上機嫌でワインをあけた。

デザートのタイミングになっても

私たちのテンションは下がらず

スマホで

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私の彼は優しすぎる。32-LINE。

私の彼は優しすぎる。32-LINE。

ちらっと覗いた彼のスマホの画面は

LINE通知が流れるように続いていた

「私のことって内緒だった?」

「うん…ごめんね、先輩にきつく言われて」

「ううん、マツイくん悪くない

どうやって抜け出したの?」

「猫が元気ないって。

猫が元気なかったら早く帰るしかないやん?」

「エア猫やん?」

「違うよーここにはいないけど、まるがほんとに元気ないんだ」

「そうなの?」

「うん」

彼は

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私の彼は優しすぎる。31-香水。

私の彼は優しすぎる。31-香水。

彼は合コンに行くことは報告してくれたけど

それがいつなのかは特に言わなかった。

でもある日帰宅して

匂いでそうかなと思った。

「どうだった、合コン」

こういうのを『鎌をかける』と言うのかな。

「うん。何で分かったの」

彼は目をぱちくりさせた。

「香水」

「はは、浮気できないねー」

浮気できる人のが気楽かも。

この人は融通が利かないから本気になるだろう。

「うん、香水の・・・

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私の彼は優しすぎる。30-夢。

私の彼は優しすぎる。30-夢。

怖い夢を見た

夢なので何の脈絡もないけど

母親が海で溺れて

意識を失い蒼白になっている夢だった

父親が母を助け

私は遠くからふたりに近づこうとしてる

父親はなぜか

来るな!

と怒鳴るけど

私は狂ったように

お母さん!お母さん!

と連呼し泣き叫び

ふたりに近寄った

母は蘇生し命は助かって

私は母を抱き締め

わあわあ泣いた

…という夢

7時近かった

私は目を見開いて

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私の彼は優しすぎる。29-センサー。

私の彼は優しすぎる。29-センサー。

彼女がいるのに合コンに行くのが

彼の正義に反していて

彼はごめん、と言ったのだろうけど

それには

自分がモテてしまう自覚も含まれていたと思う

世の中にはイケメンに目ざとい人たちがいて

(女性だけではない、

彼の先輩は男性だし)

彼が眠そうな目をしていても

髪をセットする時間がなくて

ぼわっとした髪型のまま外出しても

センサーのように

イケメンを掘り出し発見するのだ

そして

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私の彼は優しすぎる。28-寛容。

私の彼は優しすぎる。28-寛容。

「かわいそう、マツイくん」

「え?」

思わず心の声が出た

「行きたくないのに行くんでしょ」

その意味もあった

彼は本当に興味が薄いと思う

彼はそういうお金があるのなら

趣味やキャリアに使いたいタイプだ

多くないお給料でやりくりしてるのを知っている

「私のことは気にしないで

せっかくだから少しは楽しめるといいんだけど」

「そうだね…ごめんね」

「ほんといいの。

言ってくれて

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私の彼は優しすぎる。27-ごめん。

私の彼は優しすぎる。27-ごめん。

彼は帰宅すると

少し困った顔をしていた。

感情の起伏があまりない彼がたまに見せる表情だ。

「どうしたの」

私が訊くと待ってましたと言わんばかりに

堰を切って話し出した

「ごめん、コンパに行くことになった」

私は目が点になった

そうか、そんなこと今までなかったかも

大学生時代は飲み会という名の合コンがあったかもしれない

でも彼は

「騒々しいの苦手」

「騒々しくて食べ物も味わう

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私の彼は優しすぎる。26-靄。

私の彼は優しすぎる。26-靄。

朝起きると

つい癖で昨日までのように前髪を横に流してしまった。

私は簡単に変われそうにもない。

彼はいつの間にかどんどん洗練されていって

「都会の人」になったのに。

今の彼ももちろん好きだけど

好きになった当初の

幼くて(私も幼かったけど)

部活で髪が短くて

素朴でどこにでもいる高校生だった彼には

あたりまえだけど

もう二度と会えないんだと思うと

切なくなる

今の彼は私に

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私の彼は優しすぎる。25-複雑。

私の彼は優しすぎる。25-複雑。

彼は帰宅すると

「いいじゃん」

と髪のことを微笑んで誉めてくれた

「ありがとう、予約してくれて」

言いたいことは一呼吸置いてから言うタイプだ

「まっちゃんなのね」

「距離近いよね」

彼は笑った

「かみちーとか言われなかった?」

「ないない」

名前すら呼んでもらえなかった

『彼女さん』だった

「モデルしてる写真見たよ」

「あー。笑えるでしょ?」

彼は温めたごはんを食べなが

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私の彼は優しすぎる。24-同じ。

私の彼は優しすぎる。24-同じ。

私は知らなかった

美女だけでなく

イケメンも得をすることを

美女に生まれてくると得、とは聞いたことがあったけど

イケメンも得をしていた

彼はカットモデルをして

美容院は彼からお金を取ってなかった

一方

私は普通にお金を払った

15000円くらいだった

髪は彼と同じ色になって

ハイライトも入れてもらった

彼が就活の時に指南してくれた

前髪の角度を私はずっと守ってきたけど

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私の彼は優しすぎる。23-紅潮。

私の彼は優しすぎる。23-紅潮。

仕事終わりに地下鉄に乗って美容院に向かった

『彼と同じカラーにしてください』

と言えばいいだけ

レセプションで名前を言って席に案内された

「どうも、はじめまして」

マスクをしていてもめいっぱい笑顔の男性が現れた

「まっちゃんの彼女さんですよねーお世話になってます!」

まっちゃん?

マツイくんのこと?

「今日はどうされますかー、カラーしたいって聞いてますけど」

私は鏡越しに少し視

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私の彼は優しすぎる。22-見えにくい。

私の彼は優しすぎる。22-見えにくい。

『いつ行きたい?候補日教えてくれたら伝えるよ』

彼から返事が来て、私はそれに甘えることにした。

平日の19時以降でなるはやで、

と業務連絡みたいなLINEをした。

その後、彼からスクショ画面が送られてきた。

美容師さんとのLINEのやりとりだった

(美容師さんとそんなに仲いいの?)

地味で大人しかった高校生の印象で止まっているから

社交的な彼に戸惑ってしまう

なんとなく内向的な印

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私の彼は優しすぎる。21-メタモルフォーゼ。

私の彼は優しすぎる。21-メタモルフォーゼ。

私は彼にLINEして

彼がいつもカラーしている美容院を尋ねた。

学生の頃はお金がなくて

彼の髪を切り揃えたこともあった

彼はそれくらい無頓着だった

思えば就活くらいから

彼のメタモルフォーゼは始まっていたのかもしれない

彼は頭のいい人で

自分をどう見せれば就活に有利か

直感的にわかっていたように思う

あの頃の彼はイケメンとは気づいていなかったけど

どこからどう見ても

どの世

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