私の彼は優しすぎる。26-靄。

朝起きると

つい癖で昨日までのように前髪を横に流してしまった。

私は簡単に変われそうにもない。

彼はいつの間にかどんどん洗練されていって

「都会の人」になったのに。

今の彼ももちろん好きだけど

好きになった当初の

幼くて（私も幼かったけど）

部活で髪が短くて

素朴でどこにでもいる高校生だった彼には

あたりまえだけど

もう二度と会えないんだと思うと

切なくなる

今の彼は私には眩しすぎて

本当に自分でも不釣り合いで似合わないと思う

つきあっていていいのか悩む

彼が詰めてくれた綺麗なお弁当を

誰もいない場所でひとりで食べて

これを当然のようにみんなの前で

私幸せなんですって

食べられるようになれたらいいのに

会社に戻る途中

誰もいない通路の低い石垣に腰をかけて

黒いプラスチック容器の

お弁当を食べている人を見かけた

白髪の多い熊みたいに体の大きな人

彼も何か

私みたいに

心に靄を抱えているのかな