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私の彼は優しすぎる。33-醒。

それは戦慄の体験だった。

大学時代のちょっとした同窓会みたいなものがあった。

相変わらずグルメな先生がお店を選び

元女子大生の仲間がわらわらと集まる

先生が選んだのは

私は知らなかったが

雑誌等のメディアにもよく登場している

人気シェフのお店だった

女性ばかりでかしましく

先生も上機嫌でワインをあけた。

デザートのタイミングになっても

私たちのテンションは下がらず

スマホできゃっきゃっと騒ぎながら

綺麗なデザートを撮ったり自撮りしたりしていた

「お久しぶりです、今日はたくさんでありがとうございます」

シェフが現れにこやかに先生に御礼を言った

40歳くらいの、でも若く見える、

色が白くて肌艶の良く涼しげな目元

黒髪はツーブロックで洗練された雰囲気のイケメンシェフだった

「騒々しくてごめんなさいね!」

先生はそう返した

シェフは忙しそうに去って行った

「シェフいけめーん」

仲間はまたはしゃいだ

「イケメンでこんな料理が作れるなんて最強じゃない?」

先生は急に囁こうとし、私たちは顔を寄せた

「実はほとんど奥様が作っているのよ。

メニューを考えているのも奥様。

シェフはお店の顔、広報みたいなものね」

えーそうなんですかあ、と小声で驚く私たち。

「奥様はセンス抜群なの。でも彼のがお話が上手いから…必然的にね」

なるほどーと言いつつ食べることをやめない

食べて喋って満足した私たちがお店を出るとき

シェフと小柄な女性が見送ってくれた

あれが奥様?

小柄で少し小太りでさえない雰囲気の女性だった

まだまだ仲間は盛り上がっていたが

私は酔いがさめた

まるで

未来の彼と自分を見ているようで。

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夏色 陣
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