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私の彼は優しすぎる。23-紅潮。

仕事終わりに地下鉄に乗って美容院に向かった

『彼と同じカラーにしてください』

と言えばいいだけ

レセプションで名前を言って席に案内された

「どうも、はじめまして」

マスクをしていてもめいっぱい笑顔の男性が現れた

「まっちゃんの彼女さんですよねーお世話になってます!」

まっちゃん?

マツイくんのこと?

「今日はどうされますかー、カラーしたいって聞いてますけど」

私は鏡越しに少し視線を感じた

しまった

意識してなかった

美容師の人たちに

「まっちゃん」の彼女として見られている

品定めされてる

そしてまた「なんでこの子が?」と思われている

今日の服装やメイクは大丈夫だっただろうか

特に気をつけていなかった

どうしよう

『彼と同じカラーにしてください』

と言うのがすごく恥ずかしくなった

言えない、言葉がでない

「はい、カラーで…」

紅潮するのを感じながら絞り出した

マスクをしていても恥ずかしい

「まっちゃんと同じ色味ですねー?」

「そうですね」(助かった)

「わかりましたー」

美容師さんは終始オーバーなくらいの笑顔だった

「見ました?彼にカットモデルやってもらったときの」

とタブレットをすっすっと指でスワイプする

カットモデル?

初耳なんですけど

「これっすー」

・・・知らない人を見るような気持だった

彼はちゃんとモデルをしていた

なんかちょっと表情を作っていた

遠くを見て。

「あ・・・ありがとうございます。いつもお世話になって・・・」

お母さんみたい

「こちらこそ!まっちゃん超イケメンなんで映えるんです!」

早く立ち去りたかった

カラーって何時間かかるの?


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夏色 陣
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