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街とその不確かな壁 

本日西暦2023(令和5)年4月13日は村上春樹の新作長編『街とその不確かな壁』の発売日だ。彼の長編作品は『騎士団長殺し』以来6年ぶりとなる。 このアニバーサリーな日に合わせて、私も何かやってみようかしら。

    • (終)【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (7)果たして神は存在しうるのだろうか?

       以上が僕がこの事件を通して感じた、考えたとても個人的なものごと(でもなるべくパブリックにも考えたつもりではある)だが、以下は今の僕が事件とはまた別に(あるいはどこかで繋がるのかもしれない。それはこの文を書いている今はわからない)考えていることであるから、ただの蛇足である。どうぞ読み捨ててもらって構わない。BOOK-OFFに売ればいくらかお金になるのかもしれない(売るなら早いほうがいい)。これで鼻をかむには硬すぎるし、お尻でも拭くようなら大量出血間違いなしである。  それ

      • 【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (6)「別の世界」の創造。あるいは「労働」について

         既にお気づきの方もいるのかもしれないが、僕はこの文章を書いている時、「とても個人的」という表現を、自らへの戒めも込めて、意識的に多用することにしていた。  僕は自他ともに認める「とても個人的にものごとを考える人間」であり、そのコンテストが開催されれば上位入選待ったなしの男である(全国津々浦々に生息する個人的にものごとを考える人間たちが一堂に会するとは到底思えないのだが)。  僕は生まれてこのかた、自分自身のことを手の施しようが無いほどの「社会不適合者」であると思って生き

        • 【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (5)とても個人的な話

           先程の質問に対して非常にざっくばらんに答えてしまうと、僕は「別の世界」を創り、そこで生きることにしたのだ。  これから、僕のこれまで生きて来た軌跡のようなものを、飽くまでも簡単にではあるが、書いて行くことにする。いくらか長く、そして蛇足的なものになってしまうかもしれないので、読み飛ばしたい方は読み飛ばしてもらっても構わない。  僕はある両親のもとに生まれた。僕はとても個人的にものごとを考える人間なのだが、あるいはそれは僕に兄妹の一人もいなかったということがその原因とし

        • 街とその不確かな壁 

        • (終)【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (7)果たして神は存在しうるのだろうか?

        • 【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (6)「別の世界」の創造。あるいは「労働」について

        • 【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (5)とても個人的な話

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (4)"economic animal"になれない人間たち。つまりは「社会不適合者」

           人間というのは日本の都市のようにのっぺりとした金太郎飴としてつくられているわけでは無い。もし仮に神様が自分の似姿として人間をお造りになられたとしても、彼も完璧な存在では無いため(そんなものはあり得ない)、僕たち人間を造るときにちょっとしたミスくらいはするだろう。  彼は人間の多くを"economic animal"になれるように造るのだが、中には何らかの手違いで、そのための成分を入れ忘れてしまうことがある。いわゆる「社会不適合者」が、それに当たるだろう。  彼らにとって

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (4)"economic animal"になれない人間たち。つまりは「社会不適合者」

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (3)今更の"economic animal"

           まず、彼を殺した「ブラック企業」について考えてみる。「ブラック企業」。辞書で引いてみると、「労働条件や就業環境が劣悪で、従業員に過重な負担を強いる企業や法人。長時間労働や過剰なノルマの常体化、セクハラやパワハラの放置、法令に抵触する営利行為の強要といった反社会的な実態がある。ブラック会社。」(デジタル大辞泉)とある。何を基準としてそれを「劣悪」とするのだろう。「労働基準法」だろうか。僕という人間は日本とっては異邦人といっても過言ではなく、日本の社会については全くの無知なので

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (3)今更の"economic animal"

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (2)事件について僕がとても個人的に調べたこと

          (このパートは事件のことを知る人にとっては蛇足以外の何ものでも無いのかもしれない。しかし僕はとても個人的にものごとを考える人間なので、飽くまでも自分の頭の中を整理するために文章を書いているし、それはこのパートも例外では無い。)  僕は近くの図書館に行き、その当時のことについて書かれた新聞を何社かレファレンスしてもらって、改めて事件について調べ始めた。  被害者(という表現が正しいのかは分からない)の名は「ワタナベ・シンジ」。彼は明治大学の理工学部建築学科を卒業後、「連(むら

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (2)事件について僕がとても個人的に調べたこと

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (1)事件発生当時についてのとても個人的な所感

          第Ⅲ章 「"別の世界"の創造」 ―私たちはどこに向かおうとしているのだろう? 村上夏樹 「ああここにおれの進むべき道があった!ようやく掘り当てた!こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは始めて心を安ずることが出来るのでしょう。」 (夏目漱石 「私の個人主義」 講談社学術文庫)  その事件が発覚した当日、僕は大磯にある自宅にいた。その頃の僕はアメリカでの二年間の留学を終え、珍しく日本に自分の腰をすえていたのだった。職業的な作家となり、四作目の長編小説である

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (1)事件発生当時についてのとても個人的な所感

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年4月1日 

          四月一日。水曜日。大雨。  今日から二〇二一年度だ。  ぼくはぎりぎり進級できたようだ。秋学期はほぼ全滅だったけれど春学期は一応全部取れていたから助かった。  現時点の大学の発表によると二〇二一年度は基本的に対面授業になるらしい。ほんとうだろうか?どうせまたコロナが流行すればオンラインに変更するに違いない。新年度を迎えたぼくたち学生を一安心させるための単なるキレイゴトに過ぎないのだ。  そんななか東京オリンピックはほんとうに開催されてしまうのだろうか?競技場に観客を

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年4月1日 

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年3月18日 

          三月十八日。水曜日。晴れ。  一匹のお利口さんな社畜のように矢継ぎ早にシフトを入れておいたおかげで比較的早く研修期間が終わり今日からベテランの人と二人一組でお店を回すことになった。  今日のペアの人はぼくの二個上の男子大学生の方でいわゆる「にわかおしゃれ風眼鏡」を着けているせっかくの生まれながらの黒いストレート髪に何を血迷ったかぐるぐるパーマをかけておまけにそれをノロウイルスにかかった時の下痢のような茶色に染めてしまっている背が低くて弱々しい人だった。「科学的に証明され

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年3月18日 

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年2月24日 

          二月二十四日。火曜日。晴れ。  この前ダメ元で近所の百円ローソンのアルバイトの面接に行ったのだが今日その採用通知の電話が来た。こんな純粋な「社会不適合者」でしかないぼくを接客業がメインのアルバイトに採用してくれるところがあるとは!世も末か?  そうなるとAmazonフルフィルメントセンターを辞めなければならない。心機一転のためにアルバイト先を変えようと思っていたのだがそれでもいざ変えるとなるとまあ 寂しくなるなあ

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年2月24日 

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年1月31日 

          一月三十一日。土曜日。晴れ時々曇り。  最近のぼくは机の上の積読本の山には目もくれずひたすらに聖書を読んでいる。聖書を読んでいるとなんだか自分のこころが綺麗な水で洗われているような感覚を覚える。まるで自分が本来あるべきすがたへと還ることが出来ているようだ。やはりうんと小さいときからおばあちゃんに聖書の読み聞かせをしてもらっていたし幼稚園もキリスト系のものだったしぼくはほんとうは根っからのクリスチャンだったのだ。  ぼくはいろいろな本を読んだり映画を観たりして自分という一

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年1月31日 

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年1月1日 

          二〇二一年。一月一日。木曜日。快晴。  今日から二〇二一年だ。  ぼくはすごく久しぶりに日記を書くことになる。おそらくは新しい年が始まったからすっきりした気持ちになれたのだろう。 いったいいつぶりだろう?おそらくはぼくのあの差別的大量虐殺が予定されていた日の前日が最後だったな。  いい機会だ。ここにあの事件のことのすべてをまるまる書いてしまうことにしよう。そしてあの事件のことについてはきれいさっぱり忘れてしまうのだ。 二〇二〇年。十月三十一日。金曜日。  当

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2021年1月1日 

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2020年10月31日 

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2020年10月31日 

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2020年10月30日 

          十月三十日。木曜日。曇りのち晴れ。 ① 4:30 ② ○ ③ ○ ④ ○ ⑤ 22:00  ついに明日が決行日だ。  ぼくは神様から与えられた義務を果たさなければならない。 『世界を変貌させるのは行為なんだ。それだけしかない』 (三島由紀夫 「金閣寺」)

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2020年10月30日 

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2020年10月29日 

          十月二十九日。水曜日。快晴。 ① 4:30 ② ○ ③ ○ ④ ○ ⑤ 22:00

          【連載小説】ある青年の手記 第Ⅱ章 2020年10月29日