【連載小説】ある青年の手記 第Ⅲ章 (4)"economic animal"になれない人間たち。つまりは「社会不適合者」


 人間というのは日本の都市のようにのっぺりとした金太郎飴としてつくられているわけでは無い。もし仮に神様が自分の似姿として人間をお造りになられたとしても、彼も完璧な存在では無いため(そんなものはあり得ない)、僕たち人間を造るときにちょっとしたミスくらいはするだろう。
 彼は人間の多くを"economic animal"になれるように造るのだが、中には何らかの手違いで、そのための成分を入れ忘れてしまうことがある。いわゆる「社会不適合者」が、それに当たるだろう。
 彼らにとってこの現行の経済システムは地獄以外のなにものでもない。彼らはどうしようもなく「個性」を他人に発揮しようとする。「私はここにいるよ」と彼らは叫ばずにはいられない。そして、飽くまでも「人間」であろうとする。しかし"economic animal"たちはそれを許容しない。彼らは情け容赦なくその小さな命を蹂躙していく。中にはそれを「肉」だと判断し食い殺すものもいる。だから「社会不適合者」たちはこの世界では息をすることが出来ない。
 何を隠そう、この僕も「社会不適合者」なのだ。僕も「あの世界」では息をすることが出来なかった。でも僕は今生きている。なぜ生きることが出来ているのか?ここからこの文章のメイン・テーマへと話を進めて行く。