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大学数学

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大学で学ぶ数学について書いた記事をまとめます
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記事一覧

楕円について

楕円について

本記事はアドベントカレンダーの18日目です。

複素平面における楕円$${z=re^{i\theta}}$$で$${r}$$が一定、$${0\le\theta\le2\pi}$$のとき、すなわち複素平面$${\mathbb{C}}$$上の原点を中心とする半径$${r}$$の円周を動く$${z}$$に対して、$${w=z+\dfrac{1}{z}}$$は楕円を描きます。なぜなら、$${w=x+iy}

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ブール代数のスペクトル: 真理値表たちを開基とする直積空間!!

ブール代数のスペクトル: 真理値表たちを開基とする直積空間!!

この記事はMath Advent Calender 2022の1日目の記事として作成しました。
内容のレベルは大学数学で、ジャンルは束論、位相空間論、少し圏論です。
全体的に『位相と論理』という教科書を参考にしています(末尾の参考文献1)。

0.はじめにこの記事では、「ブール代数のスペクトル」と呼ばれるものを定義することをゴールとします。そこへ至る過程で位相空間論のよい復習になり、学びがあると思

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複素関数論を使って定積分の値を求める

複素関数論を使って定積分の値を求める

この記事は上のアドベントカレンダーの10日目です。

はじめに解析学の教科書によく載っている冒頭画像の定積分を求めてみます。
いろいろな方法があるようですが、本記事では複素関数論の知識を活用して計算してみます。
教科書にも載っているような解法ではあるのですが、複素関数論のちょっとした復習にはなると思います。
※本記事を読むには大学2年(3年?)の複素関数論の知識が必要です。

考えるべき積分$${

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整数のつくり方〜自然数に順序対を添えて〜

整数のつくり方〜自然数に順序対を添えて〜



この記事は次のアドベントカレンダーの2日目です。
Math Advent Calendar 2024

整数をつくろう!! ただし使っていいのは自然数の加法と乗法の性質だけ!! という内容です。本記事を読むには、大学数学における集合論の同値関係やwell-definedという概念に関する知識が要求されます。

整数は中学校で既習であるため、わざわざ再定義する意義はさほどないようにも思われますが

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群のn個の元の結合と数学のセンスについて

群のn個の元の結合と数学のセンスについて

表現論に関する書籍を読んだら、しっかり記録をとるようにしたいと思います。さっそくですが、『線形代数と群の表現 I』(平井武 著)のp.14にある問題1.3について解答案を作成しました。群における$${n}$$個の元の演算結果は、結合律により括弧の付け方に依存しないという、ほぼ自明なものです。なぜか平井先生の本では「やや難」とされていました。

それほど難しい問題なのか、その辺は私には分かりませんが

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韓・伊理のp97のジョルダン標準形

韓・伊理のp97のジョルダン標準形

今日も今日とてジョルダン標準形。今日は韓・伊理のp97の行列。我が家にある手計算でジョルダン標準形にできるものはこれで最後となります。

固有多項式は普通に計算すればよいようでした(出だしも途中も迷いまくった)。

A+2Eのランクは2。これでジョルダン標準形と最小多項式は分かりました。

(A+2E)(A-2E)を計算すると、1列目が0でなく固有値-2の固有ベクトル。これをu_1とします。A-2

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西山先生のSGCのジョルダン標準形

西山先生のSGCのジョルダン標準形

今日も今日とてジョルダン標準形!
今日は西山享先生のSGCのp54の行列で!

今日の行列は固有多項式が難しい。愚直に計算しました。

A-Eのランクは2。これでジョルダン標準形と最小多項式が分かりました。

(A-E)(A+E)を計算したら1列目が0でないので、A+Eの1列目をu_1する。u_2:=(A-E)u_1とすればこれが固有値1の固有ベクトル。

次に(A-E)^2の0でない列を探せば1

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高橋線型のジョルダン標準形

高橋線型のジョルダン標準形

今日も今日とてジョルダン標準形。今日は高橋礼司のp202から。

まずは固有多項式の計算。これは簡単だった。

A-2Eのランクを見ると2。ジョルダン標準形と最小多項式が判明する。

(A-2E)^2を計算して、ゼロにならない列ベクトルに注目すれば、
(A-2E)e_2=:v
(A-2E)v=:u
として、[u v e_2]によってジョルダン標準形にできる。
おしまい。

笠原p253のジョルダン標準形

笠原p253のジョルダン標準形

今日も今日とてジョルダン標準形。笠原線型から。

まずは固有多項式。今回は簡単でした。

rank(A-2E)=1からジョルダン標準形と最小多項式が決まります。

(A-2E)=0をじっと見るとv:=[-1 1 -1]^tが固有ベクトル。(A-2E)e_2=vもすぐ分かる。e_1が固有ベクトルなのもすぐ分かる。

[e_1 v e_2]と並べればAをジョルダン標準形にできることが分かった。

(お

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ある偏微分方程式のオイラーによる解き方がやばい件

ある偏微分方程式のオイラーによる解き方がやばい件

どうしてこの記事を書いたか※この記事は微分方程式アドベントカレンダーの1日目のために書きました。

高瀬正仁先生による『オイラーの難問に学ぶ微分方程式』という本を読みました。この本はオイラーが1768年から刊行を開始した『積分計算教程』に収められた微分方程式のいくつかを解説したものです。おかげでオイラーによる微分方程式の解法をいろいろ学ぶことができました。線形微分方程式、完全微分方程式、積分因子(

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3次以下の正方行列のジョルダン標準形への変形を徹底的にやってみた話

3次以下の正方行列のジョルダン標準形への変形を徹底的にやってみた話

※盛大に間違っている可能性に気付いたので現在修正を検討中です。
←$${3}$$次の場合の固有値が$${1}$$個で$${\mathrm{rank}}$$が$${1}$$のとき、間違ったことを書いていたので訂正しました(2024/1/14)。

我ながら暇人過ぎるだろって記事を書きました。本記事を読むには理系学部程度の知識を要します。

この記事の目的最初に、この記事の目的について少し書きます。

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行列のジョルダン標準形について勘違いしていた件(筧先生のテキストから例をとって)

行列のジョルダン標準形について勘違いしていた件(筧先生のテキストから例をとって)


行列のジョルダン標準形を求めていたら、線形代数の初歩的なことについて自分が勘違いをしていることに気づきました。それについて私が実際に行った計算の画像を貼って説明します。

問題の行列先日、私は以下の行列$${A_1}$$のジョルダン標準形を求めようとしていました。

以前のnoteの方法を使いました。なお、$${A_1}$$は筧 三郎 著『工科系 線形代数[新訂版]』(数理工学社、2014)のp

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