あの頃のボクは25歳だった。雲の上の存在とはいえ第一印象は特別なものでは無かった。少々気難しそうなオッさんだと思ったよ。偉大なレーサーに失礼かと思うけど。 「独りはいいよ。気楽で」 ニヤって笑ってたね。レーサーを引退してから漁師になって、家に月一回くらいしか戻らないってさ。まるで浮き草のような船上生活は自由に見えたよ。そして、ビールとタバコを愛する「漁師姿」も似合っていた。 その頃のボクは会社員で、いつも「何か」の板挟みになっていた。クライアントと社内スタッフだったり、
人生に「わかりやすい答え」なんてあるだろうか? なのに、たった1秒の「わかりやすさ」を求められている 親指が止まるか それともスクロールし続けるか その一瞬の判断に振り回されている 「わかりやすさ」は もはやクリエイティブにおける必須の呪文だ シンプルで直感的な表現 読者の心に瞬時に響く言葉選び 「続きが気になる」という要求 何を言ったか?より 誰が言ったか でも多くの人が本当に知りたいのは 人生の複雑さそのもの 愛の深さも、憎しみの闇も、喜びの輝きも、悲しみの重
1. プロローグ「溶けゆく夏の日」 どこまでも続く砂浜 甘く溶けるソフトクリームのように 恋も、仕事も、煌めいていた 目覚めれば その記憶も静かに溶けていく これは、いつかのあなたへの手紙 2. 「あの日の道」 浜松を降りて 名古屋へ向かうトラックの列に揺られる 養豚場の匂いが 二日酔いの身体を刺す 彼女が笑う その瞬間すべてが軽くなった気がした 3. 「リゾートの嫌いな彼女」 都会的なリゾートが嫌いだから 誰も知らない秘密の道を進む 一本道の先に青い海が広がる 彼
むかしむかし、「円」が世界で一番強かった頃があった。東京はまるでソフトクリームの街。バブル経済の頂点は過ぎたけれど、その余韻はまだ街を覆っていた。贅沢の中でソフトクリームがじわりと溶けるように、東京の街もじわりとその輝きを失いつつあったけど、それでも塩をかけるとソフトクリームはもっと甘くなる。これはあなたへの手紙かもしれない。 「ねぇ、アッコ。なんでここにいるの?」 「会いたくなったの。だって世界が終わったら会えないし」 「まだ世界は終わらないって」 「わかんないよ。
どこまでも続く砂浜。みんなが甘く溶けてしまうソフトクリームのような恋も仕事も煌めいていた時間があった。ふと現実に引き戻された孤独な目覚めとともにその思い出はゆっくり溶けていく。これはあなたへの手紙かもしれない。 「バブルはソフトクリームのように」プロローグ「溶けゆく夏の日」 あなたはあの日を覚えているだろうか。 高速道路を「浜松」で降りて、もう1時間以上走っていた。 バイパスには、名古屋方面へ向かう大型トラックがつらなって走っている。 長距離トラックのドライバーが休憩す
お元気ですか。 わざわざメッセージするほどでもないのですが、なんと申しましょうか。あなたにどうしても伝えたいココロに残る出来事だったのでお手紙しました。 クリスマスを超えた師走の日。どんよりした雪空で登山バックにつけたミニ温度計はマイナス2度でした。厳冬期の登山用ハードシェルの下はダウン。口までネックウォーマーでガッツリ着込んでいたんだけど、吹きすさぶ風で体感温度はマイナス5度超えでした。バス停はただ寒い。ひたすら寒い。 バス停のQRコードは頼りないほど小さくて、スマホ
あの2020年クリスマス金曜トワイライトが帰ってきました。 この恋愛小説はクリスマス金曜トワイライト2020をリメイクしたものです。 こころから愛しているひとよ。 こころから愛しいひとよ。 平日と週末の境い目。マジックアワーはどんな空でしょう。あなたと一緒に過ごしたい。ずっと一緒に。 ※一緒に音楽を聴きながらどうぞ。 永久(とわ)の星よ。愛しい星よ。 教会の天井まで伸びるステンドグラスにパイプオルガンが響いている。綺麗な聖歌が遠くから聞こえてきた。これは夢の中なのか
あの2020年クリスマス金曜トワイライトが帰ってきました。 この恋愛小説はクリスマス金曜トワイライト2020をリメイクしたものです。 平日と週末の境い目。あなたのトワイライトはどんな空でしょうか。 望むならどこだってついて行くのに、気持ちが折れてしまいそうです。何もかもわからない、確かなものなど何もない暗闇のなかを走っています。 信じるチカラをください。きっと幸せになれるから。 #クリスマス金曜トワイライト2023 ※音楽を聴きながらどうぞ。 警備員室の横から外に出
あの2020年クリスマス金曜トワイライトが帰ってきました。 この恋愛小説はクリスマス金曜トワイライト2020をリメイクしたものです。 1秒が永遠になるような恋を書きたくなりました。じんわり溢れる魔法みたいに。 僕たちは何を失くして、何を得たのだろう。 平日と週末の境い目。マジックアワーはどんな空でしょう。あなたと一緒に過ごしたい。 #クリスマス金曜トワイライト2023 ※音楽を聴きながらどうぞ。 息はすでに切れていた。地下鉄の階段を駆け上がるとJRの改札が見えてくる
(本アカ・2019年10月31日より再掲) どうしても書きたかった。理屈ではない。地平線の彼方へ沈みゆく太陽はまた昇ってくるのだろうか。 まだ東日本大震災の前だった。あの日「徳島阿波踊り空港」から「青森港」まで4トントラックを運んでいた。乗り捨てられたレンタカーを運ぶために。 この仕事を、運輸業界では「回送業」という。乗り捨てたレンタカーは、専門の回収業者が受託して、委託ドライバーへケータイで指示を飛ばす。その実情は、漆黒のブラックに限りなく近いグレーな産業である。
目の前にいる会社勤めの友達は、組織にいかに無駄が多くて先輩社員にITリテラシーがなく、商売のセンスがないかを話して、自分の会社の資本金だとか事業の大きさを誇らしげに話していた。遅れてきた市役所の友だちも言い方こそ違うけど、自分の立場について安定を誇っている。 独り身で今や何もなく不安定な状況にある自分のことをすごく心配しているようだった。 「人生が夏休みだから・・・」 なんでココに来たのか後悔した。青く髪を染めた店員がチューハイのジョッキを置いていく。2人は 「景気が良
これは2022年12月8日「私の学び直し・日本経済新聞」に投稿したものを再掲載したものです。 もうずいぶん前から「何をやってるか解からないオジサン」の存在を大企業で見かけなくなりました。若い方は想像もつかないでしょうけど平成の前半まで(リーマンショック以前)は映画・釣りバカ日誌のハマちゃん(西田敏行さん)のような人が大きな会社の部門には一人くらい居たのです。いまでは信じられないだろうけど、どんな大企業にも「昼行燈(ひるあんどん)」と呼ばれるオジサンがいました。 その「昼行
ガシャーン!ふざけんなテメェ! 怒号が聞こえて、しばらくするとザワザワと何人もロビーへ走っていく様子がわかった。 その少し前にドンドンとドアを叩く酔っ払いおっさんがいて、それは間違いなく宴会からひっそりと抜け出した僕たちに「オレの酒が飲めないのか?」と迫ってきた危機があったのだ。もちろんドアを開けるわけがない。シカトして僕たち新人は小さな飲み会をしていた。暫くしてシゴトに疲れて果ててた僕たち下っぱはそれぞれ布団に潜り込んだ。しかし事件は起きていたのだ。旅館を巻き込む大事件と
このアカウントをはじめるので、ちょっと話しておこうかなと思います。 僕は十数年前に病気をして離婚もして全てを失って放浪の旅に出ました。旅は帰る場所があるから旅であって、帰る場所が無いのは「放浪」と言います。 すべてを失ったとき人間は自由になるのでしょうか。ちがいます。喪失の先にあるものは放浪です。だから誰にも会いたくなかったので、乗り捨てられたレンタカーを運ぶシゴトを1年近くしていました。 これを回送業と言うのですが、運転している時間より歩く時間の方が長いシゴトでした。