遠い日の花火
目の前にいる会社勤めの友達は、組織にいかに無駄が多くて先輩社員にITリテラシーがなく、商売のセンスがないかを話して、自分の会社の資本金だとか事業の大きさを誇らしげに話していた。遅れてきた市役所の友だちも言い方こそ違うけど、自分の立場について安定を誇っている。
独り身で今や何もなく不安定な状況にある自分のことをすごく心配しているようだった。
「人生が夏休みだから・・・」
なんでココに来たのか後悔した。青く髪を染めた店員がチューハイのジョッキを置いていく。2人は 「景気が良くなってきた」とか 「おまえも仕事さえ選ばなければそれなりに稼げるんじゃないか」と言って枝豆をつまんでいる。
どうかなあ。まあ。体の調子もボチボチだし。もうちょっと色々考えようかな。と言おうとして喉に押し込んだ。
それから二人は、これから何を買うか、株だったり腕時計だったり子供の学校の話しだったり、そのどれもに興味が持てなかった。ぼんやりと彼らのやりとりを聞きながら千と千尋のカオナシを思い出す。
すべてに興味がなくなってしまった。あの日死にそこねて、頭の上から天まで伸びた青白い光が出たときから。
後生大事に、おおまかな定年と、それに至る処世術を選んで、家庭も大事にする。そんな器用に歩くことができない自分の心境を説明するには難しすぎた。一般的に言えば、燃え尽きてしまったとでも言うのだろうか。違うんだけど。
テレビの花火大会のニュースが聞こえてきた。2人はまだ昔話をしている。僕は曖昧にうなずいて焼酎のロックを注文した。
ドーンと花火の音が大きく響いた。
おわり