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2020年11月の記事一覧

島本理生/ファーストラヴ

島本理生/ファーストラヴ

なんの予備知識もなく、『ファーストラヴ』を手に取り読み始めて驚いた。

この作品が大衆文学であること

殺人事件というサスペンスが扱われていること

直木賞受賞作であること

これらの事実に。

私が描く島本理生という作家のイメージ、それは、純文学、恋愛小説、芥川賞受賞候補作多数、という文字の羅列だったからだ。

だが、しかし、読み進めていくうちに、紛れもなく島本理生という一人の生身の人間が生み出

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伊坂幸太郎/逆ソクラテス

伊坂幸太郎/逆ソクラテス

各章少年の視点で語られる連作短編集だ。

とても暖かい筆致で描かれている。

この作品は、

【自分の視座をきちんと持つこと】

【見た目や周りの意見に流されず真実や本質を見抜く力】

が、いかに大切か教えてくれる。

これは、大人の世界でも子供の世界でも共通だ。

ビジネスシーンにおいて

SNSの世界において

メディアリテラシーという言葉もあるように、マスメディア、ニュースを観るにあたって

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島本理生/あられもない祈り

島本理生/あられもない祈り

古典にもなり得る。
序文でそんな予感がした。
あまりに美しいものだから咏かなとさえ思った。
見た目は本だがこの作品は"恋”そのものである。私は今"恋"を抱えている。

から始まる最後の数行を読んだとき、予感は確信に変わった。

育った環境から人は逃れられないのか“あなた”と“私”の物語は、三年前の夏の日、二人一緒に岩場の陰で日の入りを待っているところから始まる。

物語の終盤、“あなた”と行きたか

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若林正恭/表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

若林正恭/表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

Go Toトラベルが話題だが、誰かと一緒に行く観光を目的とした旅行には苦手意識と嫌悪感を抱き、一人で行く旅行には興味がない。

誰かと一緒に行く旅行は、行くことが決まったその日から緊張し憂鬱な日々が続く。幼い頃、毎年夏休みに用意されていた家族旅行も苦痛で、時期が近付くと情緒不安定になるほどだった。ちゃんと楽しめるか、心配なのだ。

テンションが高い人たちが苦手だ。例として挙げるならば、ディズニーラ

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江國香織/ぬるい眠り

江國香織/ぬるい眠り

結婚する前は、その行為は[浮気]と名付けられている。

結婚した後は、[不倫]と呼ばれるらしい。

まるで、[にきび]と [ふきでもの]みたいだ。

同じこと、同じものなのに、呼び方が変わる。

しかも厄介なことに、後者は罰則付きなのだ。

私は、不思議で仕方なかった。どうして人の感情の動きに罰が生まれるのだろう。

不思議で不思議で仕方なくて、調べたりもした。

まあ当然、結婚という制度が関係す

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カツセマサヒコ/明け方の若者たち

カツセマサヒコ/明け方の若者たち

「フジロック、IKEAでデート、ヴィレッジヴァンガードで待ち合わせ...同年代の筆者が描く物語、同時代を生きた者なら共感するだろう。」

というお触書を、Twitterのタイムラインで目にした。気になった。

その直後、普段からリプのやり取りをさせていただいているアカウントの方と、たまたま本の話になり、こちらの著書が話題にのぼった。

買うしかないと思った。

直後、『明け方の若者たち』の著者カツ

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