燈露

古典文学に関するあれこれを散発的に書いています。 https://lit.link/h…

燈露

古典文学に関するあれこれを散発的に書いています。 https://lit.link/hitsuyuCL

マガジン

  • 柳田國男の「橋姫」を脱線する

    「橋姫」内で示された出典を辿って、ひとつひとつ紐解きながら読んでいきます。

最近の記事

  • 固定された記事

【検証】古典籍の全文検索はできるのか【くずし字OCR/#次世代デジタルライブラリー/#NDL全文使ってみた】

本稿では、「次世代デジタルライブラリー」で用いられたNDL古典籍OCRの精度について、検証します。 古典籍20本の可読状況を可読率順に確認し、可読状況について、若干の考察を行います。 はじめに国立国会図書館の実見的な検索サービス、「次世代デジタルライブラリー」に6万点の古典籍資料が追加され、古典籍資料の全文検索が可能となりました。 「次世代デジタルライブラリー」は国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている図書と古典籍資料約35万点を独自のOCRにかけ、全文検索を可

    • 問いの立て方【学問としての古典文学 何を考え何をしているのか】

      はじめに古典文学研究って何をやっているんだろうか、という話を、配信でしました。このnoteでは、その内の一部をテキストで公開するものです。 全体の内容については配信アーカイブか、ファンボックスをご覧ください。 今回の内容は下の画像の部分です。 卒論でも修論でも「問い」なくして研究は出来ませんが、悪い問い、誤った問いというのがあります。問いが悪いと間違った方向へ進み、資料の収集、論証の仕方も誤った方向へ進んでしまいます。 こうした誤りの原因には、そもそも論じるとはどうい

      • 萬葉集の一千年

        はじめに古典は出来たときのものが出来たままに存在しているわけではありません。現代に至るまで、様々な時代と人の手を経て伝えられてきました。 『萬葉集』が成立してからの1000年間について、古典籍の諸本と伝本という視点から辿ってみたいと思います。 このnoteでは鎌倉時代以前までの流れを確認します。 鎌倉時代以降の内容については配信でお話しました(メン限なんですが)。 また、ファンボックスで全体の内容を公開しています。 萬葉集原本『萬葉集』中で最も新しい歌は、一番最後の歌で

        • Vtuberの日本古典活動2024-04

          2024年4月のVtuberにおける日本古典関係の活動について収集しています。 私が観測した分をまとめています。 2023年以前については雑に下の記事にまとめました まだまだ情報不足なので、是非とも古典に関するコンテンツや配信があったら、コメント等に報告をお願いします!  2024年の1月以降についても、順次収集しようと思っていますが、抜けたり忘れていたりすることも多いと思うので、私のを入れろ、あれが入っていないと、報告下さると大変助かります!  4月分についても、ご指摘

        • 固定された記事

        【検証】古典籍の全文検索はできるのか【くずし字OCR/#次世代デジタルライブラリー/#NDL全文使ってみた】

        マガジン

        • 柳田國男の「橋姫」を脱線する
          8本

        記事

          Vtuberの日本古典活動

          Vtuberで日本の古典籍を扱ったコンテンツや、日本の古典関係のコンテンツを収集しています。 見つけたらダブり歓迎なので報告してほしいです。(自薦他薦問わず) とりあえず今回は、過去に遡って、以前収集していたものを共有しておきます。 もとより数が多いものではないので、判定はガバガバです。 しかも、実は去年集めていて、途中で頓挫したやつなので、相当に抜けが多いです。 ●古典籍を扱っているコンテンツ星見まどか(@Madoka_Hoshimi) 重要文化財になった『星学手簡

          Vtuberの日本古典活動

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#8 産女について『和漢三才図会』『新編鎌倉志』『日本宗教風俗志』

          はじめに前回長くなってしまったので、途中で切りました、産女の2回目になります。 前回↓ まず、今回確認する柳田國男「橋姫」の範囲を、改めて挙げます。 10.産女について(後篇) 26.『和漢三才圖會』 『和漢三才図会』は、江戸時代の正徳から享保年間(1711-1736)にかけて、寺島良安が編んだ図入りの百科事典です。明の王圻『三才図会』を模したもので、全105巻81冊あります。 大巧寺に産女の宝塔と言うのがあります。これは、日棟上人のところに産女の幽霊がやってきて、

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#8 産女について『和漢三才図会』『新編鎌倉志』『日本宗教風俗志』

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#7 なぜ祖先はこの話を信じたか、産女について『今昔物語集』

          はじめに ここまで、手紙を託されて運んだことで、幸福になったり不幸になったりするお話を見てきました。  こうした話型の原因を追究します。 初回↓ 08.なぜ祖先はこの話を信じたか 第7段の内容は、出典を挙げて説明するのではなく、これまでの内容について、少し整理したものになっています。  文字が読めない人にとっては、何が書いてあっても、凄いものに見える。畏怖の対象になる。と言うのです。(本文20,21)  確かに、09『遠野物語』では、六部に手紙の内容を見てもらっていま

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#7 なぜ祖先はこの話を信じたか、産女について『今昔物語集』

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#6 神から神へ手紙を送る『宇治拾遺物語』『三国伝記』『酉陽雑俎』

          はじめに 前回は、『今昔物語集』における、橋から橋へ、モノを届ける説話を確認しました。長くなってしまったので、今回はその続きの、後篇です。 初回↓ 前回↓ 07.手紙を託すこと(歴史的側面)後篇15『宇治拾遺物語』  『宇治拾遺物語』は、鎌倉時代初期、13世紀前半頃に成立した説話集で、「今昔物語集」「古本説話集」「古事談」などと共通する話が多いです。  紹介されている話は、巻第15-7(通番192)にあります。 これも長いので、少しづつ読んでみましょう。 卷十五 

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#6 神から神へ手紙を送る『宇治拾遺物語』『三国伝記』『酉陽雑俎』

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#5 橋から橋へ届ける『今昔物語集』

          はじめに 柳田國男の『橋姫』について、7年前に集めていた資料を発掘したので、整理して公開してく5回目になります。  前回まで、婦人が手紙を託す幸福譚と、河童が手紙を渡してくる不気味な話を読んできました。  今回は、こうした話の型が、古くからあるというお話です。長いので前後篇になっています。 初回↓ 前回↓ 06.手紙を託すこと(歴史的側面)前篇 13『今昔物語集』27-22 『今昔物語集』は、平安後期の保安元(1120)年頃に成立した説話集です。全31巻で、天竺(イ

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#5 橋から橋へ届ける『今昔物語集』

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#4 河童が手紙を託す『福山志料』『趣味の伝説』

          はじめに 前回は婦人が手紙を託す幸福譚でした。  今回は幸福な結果には至らない、不思議な体験譚です。 初回↓ 前回↓ 05.手紙を託すこと(不気味譚) 11『福山志料』  『福山志料』は、文化6(1809)年に、吉田豊功・菅茶山らが編纂した備後福島藩(今の広島県東部)の地誌です。  国男の指示通り、服部永谷村、讀坂の項にあります。  今回は男子から手紙を渡されます。手紙の内容は、手紙を持ってきた人の腸を進上するというものでした。これは河童の仕業であるとして、川を避

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#4 河童が手紙を託す『福山志料』『趣味の伝説』

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#3 婦人が手紙を託す『遠野物語』『雪の出羽路』

          はじめに柳田國男「橋姫」の出典をたどりながら読んでいきます。  今回は、前回までに提示された伝承をもとに、要素分解していく一つ目になります。 初回↓ 前回↓ 04.手紙を託すこと(幸福譚)08遠國に分布  「眞似も運搬も出來ぬやうな遠國に、分布してゐる」とありますが、どの時代のことを念頭にしているのでしょうか。  思っている以上に往来はあるもんだと、歩き巫女なんかを知ったときに考えたことがありました。  後に国男さんも『蝸牛考』を著すわけですが、情報の伝播に対する理解

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#3 婦人が手紙を託す『遠野物語』『雪の出羽路』

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#2『山梨県市郡村誌』『甲斐口碑伝説』

          はじめに柳田国男の「橋姫」を、その出典をいちいち辿りながら読んでいます。 前回は、議論の中心となる話として、大橋で猿橋の話をすると怪異があり、猿橋で大橋の話をしても怪異があること。その怪異の内容は、女が出てきて、「もう一方の橋へ手紙を届けてほしい」という、手紙の内容を盗み見ると「この男を殺すべし」と書かれていたので、書き換えて届けたところ、助かったという話でした。 03.その変形05 国男は内容の不整合性こそが、創作ではない証拠だと言います。 「この男を殺すべし」と書

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#2『山梨県市郡村誌』『甲斐口碑伝説』

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#1 中心となる話『甲斐国志』『裏見寒話』

           パソコンの古いデータを整理していたら、7年近く前に、柳田国男の「橋姫」を調べて、資料をセッセと用意していたものが出てきました。  このまま眠らせておくもの勿体ないので、少し整えてここに挙げていこうという所存です。 はじめにどう脱線するのか 「橋姫」の最初の文章に と書かれているように、この國男の「橋姫」には、「~という話が、〇〇という本に書かれている」「◇◇という本にこんな話がある」といった形で、出典が示されています。 この出典をいちいち特定して、その文献も読みたい

          柳田國男の「橋姫」を脱線する#1 中心となる話『甲斐国志』『裏見寒話』

          萬葉集諸本概観

          本稿では、萬葉集の諸本を概観します。 と言っても、込み入った話に立ち入るのは恐れ多いですし、自信はありません。諸本のそれぞれについては、解説が沢山あるので、複数参照すれば十分理解することができます。 そこで、それぞれの諸本のあれこれは横に置いて、萬葉集の諸本全体を概観したいと思います。 各諸本の解説を読んでも、諸本間の関係性までは今一つ分からなかったりするので、全体の流れを知ることで、より立体的に諸本を理解することができます。 万葉集の諸本全体を見渡すと、仙覚校訂本と、非

          萬葉集諸本概観

          『校本萬葉集』の使い方

          本稿では、『校本萬葉集』の使い方を説明します。 萬葉集を学び始めると、いつか『校本萬葉集』と対峙するときが来るでしょう。しかし、使い方がよくわからないと言う人も多いのではないでしょうか。 実際私が行った大学の上代の先生は『校本萬葉集』を全く使わない先生で、個人的に中古文学の先生から「これは古今伝授だ」と言われて教わりました。ところが教えてもらった方法は表面的なことで、細かな事柄については先生も把握していないようでした。 そもそも、使い方を説明してくれている本やサイトを見

          『校本萬葉集』の使い方

          AIはくずし字が読めるのか?古今集十本による可読率ランキング

          これは十本の『古今和歌集』仮名序の冒頭をくずし字OCRにかけて、どの程度読めているのかをランキング形式で確認したものです。 近年はAIの技術も進んでいるので、巷では、くずし字を読む時代が終わるとも言われています。聞くところによると、くずし字AIの可読率は95%とのことで、凄そうですよね。 しかし、実際はどうなのでしょうか。95%とはどのぐらい読めているのでしょうか。AIが人間の代わりにくずし字を読んでくれて、古写本の全文検索ができる日を夢見てみたりするわけですが、数字だけ

          AIはくずし字が読めるのか?古今集十本による可読率ランキング