はじめに
ここまで、手紙を託されて運んだことで、幸福になったり不幸になったりするお話を見てきました。
こうした話型の原因を追究します。
初回↓
08.なぜ祖先はこの話を信じたか
第7段の内容は、出典を挙げて説明するのではなく、これまでの内容について、少し整理したものになっています。
文字が読めない人にとっては、何が書いてあっても、凄いものに見える。畏怖の対象になる。と言うのです。(本文20,21)
確かに、09『遠野物語』では、六部に手紙の内容を見てもらっています。
手紙を託されたのはいいけれど、その内容を読んで理解する学はないわけです。もしかしたら、聞かれた六部もあんまりわかっていなかったかもしれません。
それはまるで、落語の「平林」みたいに……。
さて、特に脱線することもないので、次へ行きましょう。
文字が読めないということの前に、片づけておくべき事項です。
09.産女について(前篇)
23.産女
國玉の橋姫で通行人に乳呑兒を抱かせるというのは、07「甲斐口碑傳説」のことを指しています。
産女は鳥の形か婦人の形をしており、乳呑児は石地蔵になると言います。
24.『今昔物語集』
今昔物語集については前に一度取り上げています(13『今昔物語集』)。
卷廿七 賴光郎等平季武値産女語第卌三
『新訂増補國史大系』第十七卷 p863
兵どもが肝試しをするお話ですね。肝が座っている平季武と産女のやり取りは、勢いがあって面白いです。
お化けが出ると噂の場所に、肝試しに行ってみたら、本当に出た。なんて、こんな時代から既にある形式なんですね。
このお話では、産女は狐だとか、霊だとかと言われています。
偽物の赤子が木の葉だったというのも、今でもみられる狐や狸の騙し方ですね。
25.障る
妖怪は怖く、喰われぬまでも畏れられていました。
振り返ってみますと、
07「甲斐口碑傳説」に「びつくりして一目散に飛んで歸り、我が家の玄關に上るや否や氣絶した云々。」
12『趣味の傳説』では「馬子は大きに驚き、命あつての物語と宙を飛んで馳せ歸りましたが、其のまゝ發熱して五六日は頭があがらなかつたと申します。」
13『今昔物語集』27-22「其ノ後遠助心地不レ例ズト云テ臥シヌ。妻ニ云ク。然許不開マジト云シ箱ヲ。由旡ク開キ見テトテ。程旡ク死ニケリ。」
とありました。
気絶、発熱、死と、畏れるには十分な結果が出ています。
おわりに
今回は長くなるので、途中ですがここで切ります。
手紙を託されて運ぶという話には、教育が関係していると言います。
文字が読めない書けない人には、「手紙」という存在が既に霊物であり、良いものにも悪いものにも捉えられるというのです。
そして、最初に確認した、橋姫が乳呑児を抱かせてくる物語は、日本では産女と呼んでいたことから、産女の話を確認します。
今昔物語集は、ツワモノが肝試しをするという、ちょっと面白い話でした。他の産女はどんな内容なのでしょうか。
また次回~