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#海外
君は美しい(最終夜)
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空港の中で30分ほど腰かけていたが、心はざわざわしていた。
なんとなく、背筋をしゃんと伸ばしていないと落ち着かない感じ。
チェックインカウンターがオープンしたので、先にスーツケースを預けに行く。
すぐに元いたイスに戻り、まわりを見渡すが、彼はいない。
出発時間まで、あと1時間半だ。
もう少ししたら、搭乗ゲートに行ったほうがいいだろう。
(来ないんだろうか
君は美しい(第十六夜)
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「そのドレス、とてもきれいだ」
私のワンピースを褒めた彼は、白いシャツにジーンズ姿だった。
初めて出会った日に着ていた服だと、すぐに気づく。
「妹さんの誕生日パーティは、どうだった?」
「よかったよ。ケーキがすごく大きくて、食べきれなかったけど」
そう言ってウインクする顔は、初めて会ったときより打ち解けた、いつもの彼だ。
今日が最後だなんて信じられない。
君は美しい(第十五夜)
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朝になっても、体はまだエネルギーに満ちていた。
頭はハッキリと目覚めているが、ベッドに大の字になったまま天井を見つめる。
もう一度、自分の気持ちを確認したかった。
私は明日、日本へ帰る。
そのあと、彼が私を忘れることだけが心配だった。かといって、ずっとここに残ることもできない。
お金がないからだ。
わずかな貯金をはたいてここへ来た。お金がなくなった私を、
君は美しい(第十四夜)
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「クレジットカードがないの。あなた、知らない?」
私の質問に、ネスティは一瞬沈黙した。
疑っている気持ちはたぶん伝わっただろう。
しかし、もう引くことはできなかった。
今まで目をそらしていたものが、とうとう現れたのだ。
ここを通らなければ、先には進めない気がした。
「カードが、なくなったの?」
顔を上げたネスティの瞳は、いつもと変わらなかった。
そらすこ
君は美しい(第十三夜)
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「僕たちは、結婚できないの?」
ネスティの目の色が、はっきりと変わった。
「どうして?」
みるみると、彼の空気が悲しみに染まっていく。
(しまった)
つまらないウソをついてしまった。
少しだけ彼をいじめたいと思った気持ちが、すぐさま後悔に変わる。
ネスティはこんなにも素直に、私の言葉を聞いてくれるのに。
「ノリコ、もしかして日本に恋人がいるの…?」
君は美しい(第十二夜)
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彼の吐息から、きついラムの匂いがする。
彼の舌から私の舌へ、甘くて苦いピリピリとした感触が伝わってゆく。
それは、私が彼に感じている、焦げるような恋の味そのままだった。
(目を覚まして)
ふいにヒロミのメールが頭をかすめる。だが、すぐに意識の彼方へ消えた。
今の私には、ネスティの存在のほうが圧倒的にリアル。
細い指先が、私の太ももの感触を楽しむように撫で
君は美しい(第十一夜)
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(誰なの?)
ネスティに親しげに話しかけたその女は、体は成熟しているが明らかに若そうだった。まだ10代かもしれない。
信じられないくらいスタイルが良く、目がクリッとして大きい。
どうがんばっても、例え整形したってあんな風にはなれないだろう。人種が違うのだ。
私の視線に気付いたのは、ネスティだった。
「ノリコ」
こちらに顔を向けて微笑む。
「紹介するよ、エ
君は美しい(第十夜)
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(私だけは、彼の気持ちを信じる)
そう決めたら、もう迷いはなかった。
ヒロミのメールはショックだったが、おかげでかえって気持ちが固まった。
インターネットルームを後にし、簡単な朝食を食べて部屋に戻る。
今日の服は、迷った末にピンクのレースがついたキャミソールと、ミニのフレアスカートにした。
スカートは日本だったらぜったいレギンスを履きたい短さだが、この国で
君は美しい(第九夜)
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「......」
カラのサイフを見たときの気持ちを、どう言えばいいのか。
iPhoneのときよりも冷静だったのは、どこかで(やっぱり)という気持ちがあったからかもしれない。
でも、この出来事をどう感じたらいいのか、心が迷っている。
頭が真っ白のまま、ふらふらとベッドに腰かけ、パタンと横になった。
さっきまでネスティの肌を感じながら寝ていたのに。
今はひとり
君は美しい(第八夜)
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「大丈夫。私、持ってる。心配しないで」
お金なんて、どちらが払っても同じことだった。
それより早く二人きりになりたい。
ネスティはそんな私を見つめ、口を開いた。
「ダメだよ、ノリコ。それはできない」
「どうして」
「君に迷惑をかけたくないんだ」
「迷惑だなんて...」
どう言えばいいだろう。なんて言えば、彼のプライドを傷つけずに受け入れてもらえるだろう
君は美しい(第七夜)
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「ゆうべはよく眠れた?」
抱きしめた体をそっと離しながら、ネスティが聞いた。
夢中でうなづいて、彼の顔を見る。
(来てくれた)
よかった。
(信じてた)
その笑顔を見ただけで、全身の細胞がふにゃふにゃになる。
今日のネスティは、黒いTシャツに白いパンツ姿で、それがコーヒー色の肌に似合ってまぶしい。
私の白のショートパンツとペアルックみたいなのが気恥ずか
君は美しい(第六夜)
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薄く目を開けると、窓からのまぶしい光が目を刺した。
「んん…」
昨夜ベッドに倒れ込んだまま、夢も見ないで寝ていたらしい。
両腕をついて、ゆっくり体を起こす。
「いたたたた…」
腰がどっしりと痛重くて、すぐには立てない。よつんばいで少しじっとしてから、そろそろと起き上がった。
「あ~…」
(筋肉痛だ)
ちょっと笑ってしまった。日本にいたときは、自分にこ
君は美しい(第五夜)
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こんなにも体が誰かを求めるのは、生まれて初めてだった。
ネスティの、短いけれど柔らかそうな髪。
美しく伸びたまつげ。
熱い瞳は、月の光を反射してゆれている。
まっすぐ通った鼻すじ。
薄くて甘い、その唇。
たならまく魅惑的な匂いのする、首すじ。
しっとりと汗ばんだ厚い胸板。
ピンと立った乳首。
呼吸に合わせて動く、引き締まったお腹。
おへその下から
君は美しい(第四夜)
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「ノリコのホテルに行ってもいい?」
そう聞かれて、迷わずコクリとうなずいた。
このまま離れるなんて、不可能に思えた。
彼が先に堤防を降り、下から手を差し出す。
しっかりと私の手をつかんで、胸の中に抱き込むように降ろしてくれる。
指を絡ませながらつないで、深夜の海沿いを歩いた。
今すぐホテルに着いてしまいたいような、まだ着かないでほしいような。
不安なのか期