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生命の魂をのせた風 〜 「いつか風になる日」 元ちとせ
初春の頃。
思い出すのは、あの頃のこと。
まだ肌寒い北海道の海岸沿いに吹いていた風のこと。
北海道の日本海側沿岸は荒波に耐えた岸壁が連なっていて、遮るものがない絶景。
舗装道路も整備されているので、気軽に足を向ける事ができる場所。
高校時代。
春休みの部活の後、膨大に広がる午後という時間を、どんな風に過ごすかが贅沢な悩み。
自転車を駆って、いろんな場所へ。
その一つが、この海岸沿いの道。
学校から自転車で数十分も行けば、車もまばらな、、、つまりは、自然の音しかしない場所にたどり着く。
波の音と、吹き付ける風の音、、、そんな、「自然の音しかしない世界」。そこに柔らかな春の日差しが降り注ぐ。。そして、眼前には、ただただ青い海が広がっている。。そんな景色のただなかに佇む。
一人で行くこともあったし、何人かで行くこともあったけど、岸壁から、はるかかなたまで続く大海原を望み、吹き付ける風を浴びながら、あの時の僕たちは何を想っていたか。。
倫理や社会、世界史の授業で、哲学的な物に触れる機会があったせいでしょうか。考えていたのは、今考えると少し大きなテーマ。
それは生命のこと。
生命の誕生を想う
遥かな古代、生物は海から陸へ上がってきた。
いわば、海は人類の故郷。
海は全ての生命を包み込む、母親のような存在。
海の青は故郷を象徴する色彩。
神秘的な青い色を前にするとき。
どこか厳粛な気分になり、同時に、懐かしさをも感じてしまうというのは、きっと遥かな古代の記憶の名残なのだろう。
空と海の間には、今日も暖かな風が吹く
見上げれば空の青。
見渡せば海の青。
まるで周囲の景色が、青一色にを包まれるような雄大な景色。
その景色の中で、吹き付ける風に巻かれながら、そんなことを想っていたあの頃。時間は永久にぼくたちの味方だった。
人は海から生まれ、海に還る。
海は生命の誕生の場所。
そして、生命が最後に帰り着く場所。
春の日差しに、ゆらめく陽炎の只中で、その場所には今日も、あの時と変わらぬ風が、、、生命の魂を乗せた風が吹いている。
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