ハード・ロックシーンを辿る旅 ver.1 / ハードロックとロックの違い / 70年代の礎を築いたバンド、KISS、AEROSMITH
70年代ハードロック「Kiss」「Aerosmith」
ヘヴィメタル編が終わったので、次はハードロック編を書いてみます。
70年代、ブルーズ系譜のレッドツェッペリンと、クラシック系譜のディープパープルが、英国から飛び出し米国でも成果を収めていきます。
その歴史の中で、新たなグループが胎動を始めていました。
奇しくもデビュー作の発表が同じ1973年の2組の対照的なハードロックバンドが、70年代のアメリカロックシーンを引っ張っていきます。そして、それが70年代末のヴァン・ヘイレン、80年代初頭のボンジョヴィへと繋がっていく流れになります。
その2組のバンドとは、、、、
アメリカンブルーズの系譜にあるエアロスミス
英国式ハードロックの米国式解釈のキッス
この2組について、まとめてみますが、その前にハードロックについて、その特色をおさらいしてみます。
ハードロックとは
イーグルス、ビーチボーイズ、レーナードスキナードやチープトリック、クイーンやエリッククラプトン、オールマンブラザーズバンド、ニールヤングなどはハードロックというカテゴライズはされていません。
また80年代のブルーズの盟主、スティーヴィ・レイ・ヴォーンもそうですね。
では、ヴァンヘイレン、ボンジョヴィ、エアロスミス、キッスといったハードロックバンドたちとの差異は何なのか。
これは明確なものはありませんが、比較して考えるに以下が区別ポイントかと思います。
1、楽曲のリズム感
適度なノリといいますか、読んで字のごとし、ハードなロックですから、適度なノリですね。これがあるか否か。
エアロスミス – Mama Kin
Kiss - C’Mon’ and Love Me
2、音の質がソリッドか否か
硬派な音、、といいますか、いわゆるダレないかっこよさがあるか否か。
エアロスミス- Back in The Saddle
Kiss - Detroit Rock City
3、ドラマチックで美しいバラードがあるか否か
例えばエリッククラプトンにもバラードはありますがそのまんまブルーズだったりしますし、ニール・ヤングも美しさよりは素朴さが勝るようなアコースティック主体が多かった。
エアロスミス- Dream On
Kiss - Beth
他のハードロックにカテゴライズされないロックバンドの代表曲を見てみると、
Eagles - Take It Easy
Lynyrd Skynyrd - Sweet Home Alabama
Eric Clapton - All Your Love
Neil Young - Heart of Gold
無論、明確な区別ではありませんし、楽曲によっては雰囲気が重なる部分もありますが、、何となく違いが分かりますでしょうか。
あえて言うならば、ドラマチックでソリッドでかつ、適度なノリのある楽曲が流れていくのがハードロックと言えると思います。
1973年鮮烈なデビュー。エアロスミスは早々と成功
両者ともファーストアルバムは1973年発表。エアロスミスはファーストにのちの代表曲が含まれるなど、スタートから割と順風満帆でした。
Dream On 、Mama Kinなど。
セカンドアルバムもSome Old Sond and Danceなどがあり、3枚目のアルバム「Toys in the Attic」でワールドクラスへ
Toy in the Attic
You See Me Crying
3枚目には他にも、Walk This Way やSweet Emotionなども収録されていて初期の代表作です。
このバンドの特色としては、セカンドアルバムにブルーズの名曲Train Kept a Rollin’ があるなどアメリカ土着のブルーズが体に染み付いていて、その音のムード満載であることですね。
単なるブルーズオンリーのバンドだったら、スティーヴィー・レイ・ヴォーンや、レーナードスキナードっぽくなったはずですが、ここに前述の3要素があったことが、彼らを独自の世界に導いたのではないかと考えます。
KISSはライブで
翻ってKISSは、メイクのインパクトが強すぎたのか、あまり初動はよくありませんでした。
初期のアルバムでも楽曲は悪くないのですが、いかんせん70年代の録音技術から聞こえてくる音は、厚みが無く、メイクのインパクトを覆すには至らなかったのでしょう。
では、何が彼らの凄み、強みになったのか。
それが、ライブでした。
ライブでの圧倒的な、、その音とは裏腹の暴虐的なイメージとインパクト。なんせ炎を吹いたり、ドッカンドッカン爆発してたりしてますので。。。血のような赤い液体を吐いてみたり、、ファッションもオールメタリックで、怪獣ブーツだったり、、
もともと楽曲は悪くないわけですから、このインパクトがライブで広まって行ったわけですね。
そして、そのライブの雰囲気を真空パックしたのが、彼らがスターダムにのし上がるきっかけとなった「ALIVE!」という2枚組ライブアルバムでした
God of Thunder
Rock Bottom
Cold Gin
彼らの音は、ブルーズよりも英国ハードロック臭がしますね。Black Diamondの構成や、Bethの美しさなどに顕著かなと。
1973年から数年という時代
世界的には、ベトナム戦争の終わりが見えて、➡︎1975年に終わる。、、スペインでは独裁者フランコが死去し共和制へ移行するなど、第二次世界大戦の名残が消え、世界的な戦乱も落ち着き、ようやく明るい兆しが見えつつあった時期。
反面、イギリスは不況であり、サッチャーとレーガンの登場で経済の立て直しが図られ、80年代の発展、プラザ合意と進んでいきます。
合わせて、テクノロジーの進歩からシンセサイザーが登場、時代に合わせるかのように、次第に音も軽くゴージャスなものに変わっていきます。➡︎ニューウェーブの登場
翻って日本はアメリカ文化が遅れて入ってきていた時代。昭和40年後半-50年ですね。巨人がV9したり、まだロックは流行せず、渡哲也のくちなしの花、小坂明子のあなた、などが流行った時代。
ここから、YMCAのヤングマン、ピンクレディなどが出てきて明るいポップが70年代末にやっと定着。ロックの定着は1980年の雨上がりの夜空にを待たざるを得なかったわけですね。
70年代の絶頂期
70年代初頭、スターダムにのし上がった彼らはさいしょの全盛期を迎えていきます。
この時期の楽曲の遺伝子が80年代のアメリカンハードロックへ残した影響はとても濃かったと思います。
その時期の名曲の数々を。
Black Diamond
構成が素晴らしい、様式美に近い。
Rats in the Celler
Deuce
Walk This Way
100000Years
Last Child
どれもこれも強烈なインパクトですね。ここに世界において。ハードなロックが完全にステータスを掴み取ったと言えます。つまりは、お茶の間に流れる音になったということですね。一家に一曲状態と言いますか。
このままこの時代が続くかと思いきや。。
1970年代後半の暗雲
しかし、70年代後半にはあのニューウェーブの波がやってきます。彼らもその影響を受けずにはいられませんでした。
そのあたりはこちらに
両者に共通するのは、1970年代後半、ニューウェイブが流行りつつある時期に内紛や薬物問題で活動が極端に鈍化し、約10年弱、メインストリームから遠ざかっていったことです。
エアロスミスはギタリストのジョー・ペリーが脱退!!!その流れでアルバムの質が落ち、キッスはメイクを落とし、メンバーも変わり、さらに楽曲の質も落ちていった。
↓この時期のアルバムたち。今聴くとそんなに悪くないのですが。
そんな彼らをどん底から救い出す結果になったもの、きっかけは、なんだったのでしょうか?
無論彼らの底力もあったでしょう。でも、ここに歴史の面白さをみるのです。
そう、1980年、あのメタルムーブメントが英国から飛び火してきたんです。
NWOBHMのアメリカへの影響
英国から飛来したニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタルの波が米国にもたらした影響は大きなものでした。
これにより、ヴァンヘイレンも一気に全米トップクラスになり、ボンジョヴィもニュージャージーの片隅からハードロックシーンに躍り出てくることに。
VanHalen - Jump
そして、英国メタルの影響をうけたLAでは、その名もLAメタルブームが発生。モトリークルーや、ドッケン、RATTらが活躍。
Motley Crue - Live Wire
ポイズン、ウォレント、ナイトレンジャーなど後続のハードロックバンドも人気を博し、80年代はハードロックが全米を支配するまでになります。
Night Ranger - (You Can Still) Rock in America
その影響をキッスやエアロスミスも十二分に受けていたわけです。
そして、彼らにとって第2の全盛期を迎えるのでした。
このくだりは、次回、次次回に分けて時系列でご紹介していきますので、その際に詳述いたします。
今回の記事のラストソングを2つ
それでは、70年代の彼らの魂の楽曲をご紹介してハードロック編第1回を終えようとおもいます。
次回もご期待ください。
エアロスミス- Sweet Emotion
Kiss- Rock And Roll All Nite
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