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ちがう香よあおぐじぶんと梅の花

むすびたておむすびの湯気春の雪

白魚よそらうつすみず揺らしつつ

アスファルト歩道漆黒黄たんぽぽ

水仙はきかずきこえずしずかさよ

母娘いま未来のはなしほうれん草

さしてくる日を握りしめ春が来る

ほんのうが鳴きあげる夜よ恋の猫

波おとが和をとりもどすはるの浜

季とともにめぐることばよ春一番

ものの芽よ特に庭木のものがたり

ワイヤレスイヤホンの静はるの雪

いちぎょうの俳句ひかれよ軒氷柱

沈黙よときがふくらむさくらの芽

現代俳句集 2 〜梅の花〜

赤はげんじつ白はしんじつ梅の花

このいえよ椿さえ葉にかくれがち

こうさてん吹かれる身さえ春塵よ

意識下にほのあかりさす日向ぼこ

鳥雲に入るあけがたをゆうばえを

またたきよなにかかたって春北斗

早春よすずめあつまるみずたまり

盆梅のはなひとつずつおもたいぞ

棘よりも赤く薔薇の芽吹きやまず

ゆく川よおなじ日なたのふきの薹

あなたでもわたしでもある淡雪よ

三津浜はすでに灯の港冬あけぼの

かおあげて天なつかしむ雪だるま

そのさきは日の光だけ木の芽吹く

うぐいすもち風景として皿のうえ

そのかげにくらんで鯉よ寒つばき

えいがみな暴力ばかりはるのゆき

あっという間に年寄るぞかえり花

無思想よ噛んでもかんでも寒林檎

そのへんにのびのびと咲く薺こそ

しんじつを詠むげんじつの梅の花

毛糸編むミニマリストの淋しさに

口語俳句集『早春』50句 〜口語体の作品集〜

つぼみ日にふくらむ碧梧桐の忌よ

そらに枝くきくきくきようめの花

温厚でいることみかんあまいこと

ひとつほぐれ梅のつぼみよ旧正月

ゆめのなかあるいて行くぞ眠る山

オリオンよきえのこる夜の町灯り

川の瀬々かがやかに冬去りゆくと

もうつぎのきせつのおとよ冬の川

とぶ蝶よ急がすように瀬々のおと

多文体俳句集『春の題詠』60句 〜文語体、口語体、会話体の作品集〜

これ以上ちかづけず野のふゆの虹

ふれる手に猫あまえがち日向ぼこ