口語俳句 自選句集100句 〜しゃべり言葉の作品集〜
俳句にご興味のあるnoteのみなさまに俳句の様々なことについてご紹介していく記事です
口語俳句 自選句集100句
はじめに
ふだんのしゃべり言葉(会話体)を基本にして詠んだ口語句集です。
2024年に公開した『花見』『天の川』の作品集のなかから100句を選んで集めました。
ふだんしゃべるような言葉で俳句を詠むこと、また川柳との違いについて次のことを意識して取り組みました。
・季語、切れの活用
・四季折々の自然とその暮らしを詠む
・風情、格調、俳句理念など
・俗に片寄りすぎない
・詠嘆をして余情、余韻を生む、等々
こうした作品については、先人、先輩、若手の方々など一部の俳人のみなさんがすでに取り組みをすすめておられるようです。
そちらもご覧になってみてください。
今回は自分なりの作品をまとめました。
どう詠めば俳句で、どう詠めば川柳なのか、またその2つが融合した形はあり得るのかなど、
創作を楽しみながら、試験的に行った取り組みをまとめたものです。
ジャンルをこえた季節の詩としても楽しんでいただければ幸いです。
*作品はすべて既発表句です
*文語・口語の図を記事末に記しています
口語俳句 自選句集
〜しゃべり言葉の作品集〜
花見して平和をしんじきっていた
じぶんまでふぶきだしたか花見酒
ちる桜真向かうほかにありません
しめ縄か十歩はなれておおざくら
そらをゆく春雲として立っていた
五重の塔鳩もすずめものどかです
来る傘はあなたでしたか春しぐれ
春炬燵ひとをおもえということか
朝はみなだまっていますしじみ汁
うみからのかぜにふぶくか島花見
また来いよそらいちめんを帰る雁
春満月そうつぶやいてしまうほど
ひこうき雲夏の行方を見るような
蛍の夜だれもさびしいひとでした
遠く鳴く山そのもののかっこうが
ただあおぐ生きかただった百日紅
沿いあるく波打ちぎわは秋でした
季節またかわりゆきます赤とんぼ
なみおとが暮れのこったか秋の浜
ただうみを見る八月となりました
伝統がすすみ行きます阿波おどり
盆の月この地もわるくありません
いつか又出かけましょうか遠花火
じんせいの旅大すすきはらでした
自転車がちりんと秋日暮れました
息子ひとりゆるされに来た秋の墓
出会うひとみらいにいます星月夜
吸いつくよひとさしゆびに露の玉
すずめ来て突つきのこすな大刈田
コーヒーでふりかえります美術展
星と都市ともりだしたか秋のくれ
秋の蝶しの字のかぜに舞いあがれ
草絮吹く海がゆうばえだしたから
瀬戸大橋海を照らすかほしづき夜
あきのくもつまり人生ではないか
戦争もにぎりこぶしも身にしみた
さいがいのまっただなかの朝顔だ
ちんもくのはじまり秋の傘さした
葉落ちますぱちんぱちんと松手入
だまるほどおおきい月を旅に見た
ちんもくのながさです野の天の川
流れ星きっといつかのじぶんです
露の原ゆめからさめたようでした
秋の暮日がさびしくてなりません
かみさまを揺りおこします秋神輿
かしわ手が千も万もよはつもうで
かえりますかたくむすんで初御籤
わたしもかかたいつぼみの福寿草
冬の虹ゆるされたかのようでした
かおりますおなじ日なたの寒紅梅
◇
見るうみがはためかせます秋日傘
草絮吹く旅はいっぽんみちでした
生さびし死さびし月がさしていた
鳴きだしてすずむしいろの星空だ
ただむねを撞かれています鐘の秋
天の川しんととどろきやみません
案山子です今日も明日も明後日も
方言のように案山子は立っていた
ただそらを欲しているか曼珠沙華
ゆうばえの果ての色です焼秋刀魚
朝顔一輪じぶんはなにを努力した
蜻蛉まで赤いきせつとなりました
はずみますかぜのたかさを秋神輿
秋の蟻もうかげでしかありません
手のひらにえだ伸ばしくる白萩だ
あきの鳶見上げつづけています風
葛の花ひとの暮らしが咲いていた
天の川いまだ詩でしかありません
葡萄狩だれも日ざしを摘んでいた
鳶翔ってひゅるると高くなる秋だ
わたりどり田越えゆきます筑波山
ほしぞらがきいていました残る虫
野菊摘むうつむき癖のあるひとだ
ゆうひへとゆれやみません吾亦紅
掃くおとが濡れはじめたか露の寺
陽になるか孤影になるか秋のくれ
秋の蚊をぱんとたたけば白でした
灯の駅のひとりのこらず霧だった
雁の列たびにかたちはありません
野良ねこが伸びをしました秋日和
釣りびともちいさな秋の暮でした
橋あるく夜明けとともに霧が来た
けものらも水を飲みますもみじ川
秋神輿うなばらはかがやいていた
壜に陽がささっていますあきの浜
のこるのはえだまめでした送別会
赤い羽根誰はばたかすのだろうか
冬支度なが生きしたくなりました
これですかおとこもかがむ思い草
せかいまた燃えはじめたか秋の暮
渡り鳥こころなかなか老いません
みな暮れにゆきつく秋の野遊びだ
木洩日が散るのでしょうか銀杏坂
わたつけて芒なかなか暮れません
目がなれていきます千々の星月夜
秋の酒世のありさまのなかに居た
並み木みち暮れるまでです文化祭
包丁音ひとりぐらしが身にしみた
林檎噛む冬がちかいということだ
ものがたりまんてんにです流れ星
〜終〜
◇俳句と川柳それぞれの特徴
川柳は平句。季語、切れ字、切れは常用せず、人情や滑稽さ、機知、風刺などをより突き詰めて「吐く」傾向があるそうです。
俳句は発句。季語、切れ字、切れを常用して、四季折々の自然とその暮らし、風雅さ、余情、詠嘆などをより突き詰めて「詠む」傾向があるそうです。
どちらも俳諧連歌から派生したものだそうですが、祖となる人やたどってきた歴史はそれぞれに異なるようです。
◇俳句と一行詩それぞれの特徴
一行詩は575の型、季語を用いる場合でも詩的な側面が重視され、自己性、社会性、思想性、比喩性など、また感性や繊細さがよりあらわれやすい特徴があるそうです。
俳句は575の定型とそのリズム、季語、切れ字を基礎に、風雅さ、間、機知、余情などをふくみ、四季折々の自然とその暮らしを詠いあげることを特徴とするそうです。
◇文語・口語の大まかな図
下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です
◇文語=文語体=古典語=古い時代の文体
◇口語=口語体=現代語=話し言葉
∟==話し言葉
◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い
◇口語俳句の基礎基本・つくり方について
下記に簡潔にまとめました
◇俳句の目標
いま心にとめているもの取り組んでいるものを挙げておきます
「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」
「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」
「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」
「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」
いつも
ご覧いただき
ありがとうございます
句集内作品
改訂日
2024年12月01日
*作品はnoteに投稿したものです
*試験的な取り組みとその作品をまとめた記事です
*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください
*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります
◇ 関連記事 ◇