何処に吹く何処へ吹いてく風だろと小首傾げて笑っていたい 方角が違ってなけりゃ少々の蛇行寄り道休憩ありと 繰り返すありがと頼むねごめんねも重さとなってしまうこんな日 ******** 他人さんには笑えるのにな。 聞き流せるのにな。 余裕のなさが原因
ささやかな予定を今日も蹴散らしてごめんな攻撃またも発動 ************ 言われないよりはマシかもしれないけど、ごめんなと言われても…。二択じゃないんだよ。こちらは、いいよと言うしか。
苛立ちを真綿に包み吐き出せば我の心に掻き傷ひとつ
痛みてふ抗へぬもの盾として秋の日和を阻む母あり ************ 色々落ち着いたと思った途端、新しい何かを訴えてくる。探すんじゃない!と叫びそうになる。が、高齢者には早め早めの手当てをしないと大事になる。匙加減が難しい。
通院をお出掛けと訓む女(ひと)の背に白き手が添う翼のごとく
粘りつく甘くて柔き綿飴を何故に今更我に欲すか ************ 現実逃避のためだけの言葉を吐けるようには育っていない
摩耗した歯車の数を誤魔化すか如く素早くギアチェンジし ******** 傾聴という言葉があるのは知っている でも無理だ 部が悪いと思うと沈黙後に話題をすり替えてくるあたりにまた腹が立つ 正しいか正しくないかではないこともわかってはいるけど
ゆらゆらと揺れる振り子の羨まし宙ぶらりんでも踏ん張らねば日々 ************ 共に感じているだけじゃ何も進まない 痛いよねー 辛いよねー だけでは済まない 終わらない まだまだ先があるのだから
紅葉が見たいと今年はごねぬ母楽しみひとつもしめせずに今
褒めらるは嬉しきこととあらためて八十路の君の眦に思ふ
難去りてまた難来たるを繰り返すこが常なりと老ひたる母の
眼裏の三十路の姿色濃くて手放せずいる我は君の子
丸き母の背 重ねゆく秒の積もりしその先を老ひと呼ぶやら病と呼ぶやら 今日明日を難なく過ぐすことのみで良かれと決むるは我の仕事か 拘りをひとつふたつと手放さむちさく纏まる母の日常 ふるといふ言葉の意味を今更に飲み込みゆける母の丸き背
出来ぬこと思案するなと人は言ふ 配るも砕くも身には限りが
待合室 横並び静寂空調読書部屋母のつぶやきBGMに
幼児を連れ歩くよな荷を抱え修行の時間母通院日
耳タコのセリフ呟く担当に知らぬ間我が就任しており
溜息を吐き出す場所すら見つからず鳩尾辺りに渦巻きこごる
振り返り振り返りして運ぶ足丸き石にも躓きかねず
体質が変わっただけよ 空っぽの言葉をかけた八十路の母に
抗へど佇む浜は遠浅か寄せくる老ひの波絶え間なき
聞く耳とやらかい言葉が主成分 特効薬を主治医と言います