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ひろばの家・那須3へ

この記事を書き始めたのは、2022年の秋。それからもう二年経ってしまい、状況も少し変わってきたのだが、書き始めたものをとりあえず終わらせておこうと思い、投稿することにした。

私の母は92歳、東京・杉並区の自宅で独居だったが、これが二階に寝室とバスルーム、一階にキッチンとリビングがある広い家。
母はリウマチがあり、圧迫骨折で腰を痛めていて、階段の上り下りは年々辛そうだった。
大規模なリフォームをしない限り、この家に住み続けることは難しい。
身体的なフレイルさに加えて、認知症予備軍とでも言うべき日常生活の危うさがある。
なんとかしなければ、と2年前くらいから住み替え先を探していたが、これがなかなか見つからなかった。

2021年秋、私の住む那須町の小学校跡地を利用したコミュニティスペース「那須まちづくり広場」内に、賃貸のバリアフリー住宅が作られると聞き、さっそく担当の方に話を聞きに行った。
https://nasuhiroba.com/

ひろばの家・那須3とは

図面を見ると…
小学校だった鉄筋コンクリートの建物の構造はそのままに、教室一つを二分割したものが一戸分のスペース。約8畳のワンフロアに、キッチン・バス・トイレが付いている。
https://nasuhiroba.com/house03/

玄関には段差がなく、車椅子でも出入りがスムーズにできる。
トイレ・洗面・脱衣所・洗濯機置き場がひとつの空間になっていて、慣れれば合理的かつ快適そう。浴室はコンパクトだが一人暮らしには充分な広さ。
これらの水回りスペースとキッチンの間、キッチンと居室の間は引き戸で仕切られていて、車椅子でも生活しやすそう。

母は自宅ではまだ車椅子ではないけれど、先々のことを考えると、段差のない生活が必須だと思われる。

この「バリアフリー住宅」13戸は、小学校だった建物の2階右翼部分にあり、エレベーターで階下へ降りられる。
そして、何よりも良いことが、階下部分に食料品の買い物ができるマルシェとカフェがあり、何か足りなければすぐ買いに行けるし、食事もできること。
また、この「まちづくり広場」には元屋内プールを改修して作られた介護型の住戸と、デイサービスの施設も作られていて、それらの利用も考えられる。
「まちづくり広場」全体のコンセプトとして、「百歳になっても自分らしく暮らせる場所」を目指しているとお聞きした。よくある老人ホームのように、入居者が管理されることなく主体的に生活できる。そこには自律性と協調性も必要になってくるけれど、でも、それこそ「社会」というものの姿ではないか。
いろいろと自分のやり方にこだわる母でも、ここならいいと思ってくれるだろう。

那須まちづくり広場にある、3つの異なるタイプの住居

もっとも、この「広場」のメインとなる部分「ひろばの家・那須1」は、これから校庭に建設される予定の自立向けサ高住49戸で、そちらはお家賃約7万円×15年分を先払いするシステム。92歳の母には、選択肢に入らない。

ちなみに、母の入居を検討している校舎部分のバリアフリー住宅は「ひろばの家・那須3」で、お家賃37,000円から(プラス共益費5500円)。
また元屋内プールを改修した介護型住戸「ひろばの家・那須2」は、介護事業所ワンランド(株)が運営する施設なのだが、「那須3」に入居しても要介護1以上なら、同事業所の24時間巡回サービスを受けられる。
また、食事も予約しておけば、「那須2」と同じものを配達してもらえる。朝食550円、昼食・夕食770円とリーズナブル。

そして、この食事やカフェメニューを作っているセントラルキッチン(と仮に呼んでおく)は、ワーカーズコレクティブで運営されているのだが、ここには私の知り合いがたくさんいて、皆食いしん坊さんなのだ! 
特に、「那須2」の食事は管理栄養士のSさんが監修していて(実際にキッチンに入って料理もしている)、お料理は美味しいし、使う調味料などもビオのものを選択され、基本に忠実で厳しい。隣のマルシェは基本的にビオの食品を販売している。
Sさん監修のもの以外も、ここのカフェのメニューは美味しくてリーズナブル。
食いしん坊の母も満足するだろう。

引っ越しまで

母は元建築家(現役時代ははるか昔だが)なので、設計やプランについては厳しい。
ひろばの家の資料、まちづくり広場全体のコンセプトについての資料などを母に見せて説明したところ、
「面白そうね。ちょっと見にいってみたいわ」
と前向きな言葉を引き出せた。
2022年の春、妹にも協力してもらって、まだリフォーム途中のひろばの家見学に、那須に連れてきた。
小学校の教室だったために天井が高く、広々として明るい住居が、母はことのほか気に入ったようだった。担当の方から契約についての説明を受け、エレベーターから近い位置の部屋を仮契約までして帰ってきた。

コロナの影響で生産が遅れているとかで、エレベーターの設置が6月以降になるという話だったので、実際の引っ越しは秋頃になりそうだった。

引っ越しまでに私がしたことは、
①ケアマネ(杉並区の地域包括支援センター)に相談して、介護区分変更を申請
②病院(リウマチでかかっている総合病院と、近くのかかりつけ医)それぞれに紹介状を書いてもらう。引っ越し後、かかることになる病院を選定して、治療(管理)内容をスムーズに引き継いでもらえるようにする
③母の銀行口座をゆうちょとUFJの2口座にまとめ、年金受け取り口座をゆうちょに変更
④母の引っ越し後、甥が住んでくれることになったので、家の中をできるかぎり片付ける

①については介護認定をし直してもらって、「要介護1」が取れた(しかし、これは那須に引っ越して一年後、要支援に戻ってしまった)

②母はお医者さんと話をするのが好きなタイプ。たぶん、月イチで先生に話を聞いてもらうと、高めの血圧や腰の痛いのも気にならなくなるのだろう。なので、ひろばの家のできるだけ近くで、年寄りの話を聞いてくれる個人の病院を探さなくてはならない。
那須の知人に聞き込みをして、たぶんこの先生なら…と目星をつけて偵察に行く。幸い、車で7分のところにいい感じの個人病院が見つかった。

③については、銀行口座の解約などは本人が行かないとできないので、銀行2か所に予約して連れていくのが大変だった。銀行のバリアフリー化が、まったく進んでいない。駐車場から店舗入り口までに段差がいくつもあり、駐車場は有料。年寄りに来いと言うのなら、それなりの設備を整えてほしい。

④父の蔵書など書籍が大量にあり、ネットで買取りしてもらえるところに20箱くらい出す。重い段ボール箱の持ち運びで、腰が痛くなる。
また、もう着ない、オシャレな服が大量にあり(たぶん相当お高いブティックのもの)、20キロずつまとめて「古着でワクチン」に出す。
それ以外にも、長年読みもしないのに契約していた新聞二紙を解約したり、冷凍庫が満杯なのに毎週注文してしまう生協の宅配を解約したり。

こまごまとした一連の作業は、古い鉢植えの植物を鉢から出して、根を整理したり枯れた枝を落としたりして、さっぱりとした姿で新しい鉢に植え替えるのに似ていた。


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