階段からの追っ手を警戒してた賊に、先制する勇者一行。 「この呪力、覚えがあるわ!」 マリカが盗賊一味の首領と思しき、最奥の老婆を指差す。 「アッシュ、目の前の金髪ババアがあんたを呪った犯人よ」 「おのれ小娘、ものどもやっておしまい」 塔の最上階で、乱闘が始まった。
「ラ・ショーモンの都が復興したら、小さな店を持ちたいねぇ」 みんなが集まり、語り合うサロンの主はおばば。 「おばば、届け物だ」 ゲニンは郵便の配達夫だろうか。 「あんたも、自分のやりたいことをやればいいんだよ」 「オレなんかが夢を持つ…許されるなら、探してみてぇな」
ロバニエミに戻ると、二つのポータルは消えていた。 「危なかったわ。あいつら誰?」 「後で話す。それより一休みして、エルフの里へ行くのが先だ」 クワンダの提案に、頷くソルフィン。 気になるが、夜明けも近いのでマリカの魂もカラカラへ。 眠れぬシャルロッテには、おばばが付き添った。
「おぬしら、どちらでもないのじゃろ?」 「わしらが留守を預かるゆえ、行ってくるがいい」 アントニオとおばば、いつ仲良くなったのか。 「外交に行くなら、エウロパのお土産が要るでち」 「フリウリのワインに、ヴェニスのガラス細工とかどうかしら」 後日、ヴェニスから了解も取れた。
「大変です!お城の晩餐会に出すワインが全部盗まれました」 喧騒の酒場に、予期せぬ知らせ。クワンダの脳裏に、嫌な予感。 「まさか、俺たちが運んできた?」 「申し訳ないです。賊は恐らく、北のラ・ショーモンかと」 すると、我らの騎士殿が張り切って。 「取り返しに行くのじゃろ?」
大浴場の入口広場には、よく手入れされたチューリップの庭園が。 手入れしているのは、おばばとゲニン。 「あ、ゆるしてくれの人ぉ!」 「眠り姫の嬢ちゃんか」 一応、夢の中で面識はあったエルルとゲニン。 「どうだい、この花は二人で咲かせたんだよ」 「おばばさぁん、素敵ですぅ♪」
喜びに沸く市内。酒場はどこも、お祭り騒ぎ。 「領主様の大盤振舞いだ。宿と酒場の無償提供が数日伸びるぞ!」 ルイージの酒場では、主人が威勢良く声をあげ。厨房では深鍋で備蓄の豆や雑穀、豚の腸詰や鴨肉が煮込まれる。ゲニンが鍋を混ぜ、おばばは隣で味見。 郷土料理「カスレ」の由来だ。
骨の鳥が城壁を飛び越え、街へ侵入。冒険者たちは数に押される。 そこへ、ゲニンとおばばが駆けつける。 「あれは!?」 宝物庫から飛来し、ゲニンの手に収まる剣。 「ロゼバルタ!」 おばばの頭にも、王妃のカツラが。 呪文で伸びた金髪は薔薇の蔦と化して、骨鳥の群れを叩き落とした。
「あの剣が呼んでるだって!?」 「おお、王妃様の声が」 アッシュに呼ばれたゲニンが首を傾げる。おばばは様子が変だ。 「どうしたの?」 「わしのカツラは、断頭台から落ちた王妃様の首から抜いた髪で作った」 聞いたマリカが驚く。 「お二人に、カルカスへの加勢をお願いします」
「オーブの気配は、ヨミコと一体だったわ」 「奪還は無理かい」 ヤスケの屋敷、屋根の上で話すマリカとおばば。 「ヨミコは、古の女王で黄泉の巫女。不死者ね」 「暗殺から蘇ったピサロもじゃな」 実体の無い魂では制約も多いが、まだ有益な情報はあるはず。 二人は見聞を続けた。
「おばばが代わりに行くとするよ」 「あんたも、ベナンダンティか?」 呪いを解く放浪の者。ソルフィンは噂を聞いてフリウリを訪ね、マリエから娘を紹介された。でも今、マリカはアッシュの側にいるべき。 「腕は確かよ。信頼できるわ」 かつての呪い屋おばばに、マリカも太鼓判を押した。
あたしの勇者様。 アッシュをそう呼び、慕い続けたことが彼の重荷になっていたのか。 マリカは、自分を責めた。 「バカだよ、お前は」 おばばは決然と言った。 「あの子は、ここにいるみんなの勇者様だよ」 アッシュは必ず目を覚ます、その時そばにいておやり。
波止場から、船上のやりとりを見るゲニンとおばば。 二人とも、すっかり街に馴染んでいる。 「あの花の印は何だ? 見たことないぞ」 「お宝の匂いがするねぇ」 高値で取引される黒胡椒。 マリカの祖母が新大陸から持ち帰った、じゃがいもやトマト。 新種の植物は、常に貴重だ。
お城の地下牢。晩餐会の演奏が遠く聞こえる。 「許してくれよ、おばば」 「わしに言ってどうする」 オーブもカツラも没収された二人。 「セヌ川は革命前の清き流れを取り戻した。それで十分じゃ」 つぶやくおばば。そこへ意外な来客。 「貴方たち。取引に応じるなら、罪は問いません」
一方その頃、荒れ果てた都で。 「ゲニン、ちょっと手伝っとくれよ」 「何だ?」 金髪のウィッグを手にした老婆と、筋骨逞しい覆面の男。 手にした宝剣は柄頭に赤い宝珠がはめられ、明らかに身分不相応だ。 「頼まれて、ガキを呪ってるんだけど手応えが無いのさ」 「その夢に入れと?」