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喜びに沸く市内。酒場はどこも、お祭り騒ぎ。 「領主様の大盤振舞いだ。宿と酒場の無償提供が数日伸びるぞ!」 ルイージの酒場では、主人が威勢良く声をあげ。厨房では深鍋で備蓄の豆や雑穀、豚の腸詰や鴨肉が煮込まれる。ゲニンが鍋を混ぜ、おばばは隣で味見。 郷土料理「カスレ」の由来だ。

「ラ・ショーモンの都が復興したら、小さな店を持ちたいねぇ」 みんなが集まり、語り合うサロンの主はおばば。 「おばば、届け物だ」 ゲニンは郵便の配達夫だろうか。 「あんたも、自分のやりたいことをやればいいんだよ」 「オレなんかが夢を持つ…許されるなら、探してみてぇな」

「大変です!お城の晩餐会に出すワインが全部盗まれました」 喧騒の酒場に、予期せぬ知らせ。クワンダの脳裏に、嫌な予感。 「まさか、俺たちが運んできた?」 「申し訳ないです。賊は恐らく、北のラ・ショーモンかと」 すると、我らの騎士殿が張り切って。 「取り返しに行くのじゃろ?」

「喜ぶのは早いよ」 落ちた骨が集まり、ドラゴンの形に。尻尾の一振りで吹き飛ぶ家屋。 「ゲニン、その剣は何だったかねぇ?」 「おばば…オレが竜退治とか、許してくれよ!な!」 やけくその一撃は、今度こそ止めを刺した。 「竜殺しゲニンだ!」 冒険者たちから、歓声があがった。

波止場から、船上のやりとりを見るゲニンとおばば。 二人とも、すっかり街に馴染んでいる。 「あの花の印は何だ? 見たことないぞ」 「お宝の匂いがするねぇ」 高値で取引される黒胡椒。 マリカの祖母が新大陸から持ち帰った、じゃがいもやトマト。 新種の植物は、常に貴重だ。

お城の地下牢。晩餐会の演奏が遠く聞こえる。 「許してくれよ、おばば」 「わしに言ってどうする」 オーブもカツラも没収された二人。 「セヌ川は革命前の清き流れを取り戻した。それで十分じゃ」 つぶやくおばば。そこへ意外な来客。 「貴方たち。取引に応じるなら、罪は問いません」

筋骨隆々の盗賊ゲニンと対峙する、歴戦の傭兵クワンダ。 ゲニンが赤い宝珠付きの剣を振るうが、クワンダは余裕で回避。 「その剣は、お前を拒むか」 (畜生!振るたび重くなりやがる) 「あれは、ノートル大聖堂から盗まれたものじゃ」 「赤誠のオーブ…間違いありません」

「勘弁してくれよ、な?」 「誰の差し金だ」 ゲニンの逃げた先にも、クワンダが先回り。 「そいつ、カルカスの街で手配書を見たよ」 宝玉のはまった剣を指差し、マリカが指摘する。 「オレは蜘蛛だ。殺したら、地獄で助けてやらないぜ?」 やはり夢の中。姿を変え逃げられた。

「この村、どうなってやがる」 物陰に潜みつつ、首を傾げるゲニン。 少年の心的外傷を増幅するはずの、悪夢の呪いなのに。 「何をやってるんだい」 「おばば、もう勘付かれてる。手が出せん」 マリエをはじめ、村人たちも松明をかざして警戒中で。 「ええい、子分たち。やっておしまい」

一方その頃、荒れ果てた都で。 「ゲニン、ちょっと手伝っとくれよ」 「何だ?」 金髪のウィッグを手にした老婆と、筋骨逞しい覆面の男。 手にした宝剣は柄頭に赤い宝珠がはめられ、明らかに身分不相応だ。 「頼まれて、ガキを呪ってるんだけど手応えが無いのさ」 「その夢に入れと?」