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noouchi
おばば
出かける準備を急いでいると、居間のテレビを見ていた夫が「育さん、見て見てー」と呼ぶ。
聞いたことのある歌。
そうだ、民謡「おばば」だ。
小さいころおばあさんが歌ってくれたのを思い出す。
なんでも、岐阜の民謡「おばば」の踊りを後世に伝えようと、結構年季の入ったおじじ様やおばば様が頑張っておられるというニュースだ。
夫が、「育さんにピッタリの歌やん」とニヤニヤしている。
おばば、どこ行きゃるな〜ぁ〜
おばば、どこ行きゃるな〜
三升樽さげて、そうらーばえー
ヒュルヒュルヒュ〜、ヒュルヒュルヒュ〜
適当だけど、こんな感じだったかな。
産まれた初孫を見に、お祝いの三升樽を提げていくという歌らしい。
幼稚園から帰る私を迎えに来てくれたおばあさんと、1キロほどの道を歩いたころを思い出した。
「育ちゃんは、ええ子やな」と褒めてくれたっけ。
「おばば」を歌うおばあさんのことを、すごく年寄りだと思ってたけれど、今の私とさほど変わらない年だったはずだ。
田舎の道を思い浮かべて、自分だけおばあさんとの思い出にワープした。
「もう行くぞ」と言う夫の声に、いかんいかんと早くしなくちゃと、お祝いやお土産をたくさん車に積み込んだ。
そう、今日は私がお婆さんになるんだった。
小さなスマホの中だけで見ていた孫に、ようやく会える。
まるでスターに会いに行くような気分だ。
間違いなく本物が待っている。
昔も今も、おばばの気持ちはきっと同じだ。
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