はるさめ
僕と俺が描くbl恋愛系小説
残暑が厳しい時期も過ぎ、だんだんと寒さが際立つようになってきた秋の暮れ。それを知らせるように緑の木々も枯れてきて、遠くに見える山には赤と黄色の色が目立ち始めた 彼と付き合い始めてから初めての秋だ。そろそろ、彼と紅葉を見に行ってみたい。そんな気持ちが湧いてきた だが、最近彼の様子が少しおかしい 朝、一緒に学校に向かう時は眠そうにしていたり、授業もたまに寝ている。帰りはHRが終わったらすぐに出ていく。帰宅部の彼は早く帰る理由は特にないはずなのに 「なんか無理してるのかな」
深夜の2時 雲が空を覆い、いつもに比べて闇の密度が濃い夜だ 10月になり、この時間は冷え込むようになった 外で鳴く鈴虫の声が静かな部屋の中にかすかに響いていた 「ねれねぇ」 そんな中、俺はなぜか目が冴えて寝れなくなっていた。眠いはずなのに目を閉じても眠れないのだ。俺の腕の中にいる温かい彼はとっくにすやすやと眠っている こうなってしまっては起きていようかと思い始めてきた。幸いな事に明日は休みだ。たまには夜更かししてしまっても構わないだろう そう勝手に決めつけると、ベッ
赤、橙、黄 小さな光に照らされるその顔は 儚げで、優しくて、色気を感じた ゴクリと、喉がやたらと大きな音をたててしまう 噛みついてしまいたい 8月も終わりを迎え、9月になったというのに残暑が厳しくまるでまだ夏真っ盛りのようだった。それでも、朝と夜は涼しい風が吹き、どこか過ごしやすい気温へと変化してきていた そんな事を考えながらも、涼しい部屋から出る気の一切ない俺は、のんびりと仕事疲れを癒そうと彼に抱きつきながらテレビを見ていた 「テレビ見にくくない?」 「別に
昔によく考えていた事がある 大きくなったら、素敵な人と一緒に綺麗な未来を、輝かしい毎日を送るんだと。きっとその世界は幸せで満ちていて、僕も相手も笑顔で楽しそうにしてるんだ。時には苦しい事やつらい事もあるけど、二人でそれを乗り越えて笑い合うんだ、と そんなおとぎ話のような事を考えては未来に期待を馳せていたのに、そんな事を考えるのすらやめたのはいつからだったのだろう 高校三年生の夏、僕と彼は大学の受験勉強に追われている日々を過ごしていた 夏休みだというのに、家でも勉強、た
*このお話は前回あげた海のひと時 前編の続きとなっています。まだ読まれてない方は、先にそちらを読む事を推奨いたします それからあっという間に夜になった。夕方まで彼と一緒に海ではしゃぎ、旅館に戻って美味しい料理に舌鼓を打ち、気持ちのいい温泉で疲れを癒した 今は夜中の午前3時。部屋は暗く、疲れているはずなのになぜか眠れない俺は、布団の上で少し今日の事を振り返っていた 久しぶりの海でたくさん泳いだり、景色を見て楽しんだり、クルーザーにも乗って少し遠くまで行ってみたり。旅館でも
見上げると雲ひとつない澄み渡る青空 広がる先には太陽で輝く青すぎる海 ゴミや汚れなどない白と見間違うほどの砂浜 俺達は今、旅行で沖縄の海にやってきた 「きれーい!!凄い、凄い!海が透き通ってるよ!」 沖縄のとある島。旅館の窓から見える海は宿泊者専用ビーチとなっており、この旅館の売りでもあった 「お客様用の水着も様々なものを用意いたしております。ぜひ海で素敵なひと時を楽しんできてください」 フロントにいる人にそう言われて俺も少しウキウキしてきた 「よし、どうせならは
「あっぢぃ…..溶ける…..」 憎たらしいほどの晴天が広がる青空を眺め、じっとりと肌にまとわりつく暑さに嫌気を感じながら、俺は静かに呟いた 大学生活一年目にして、いきなり部屋のエアコンが壊れてしまった。修理を大家に依頼するも1週間はこのままとの事。最悪だ ゴオオっと音をたてている扇風機も、片手で力なく扇ぐうちわも涼しい爽やかな風ではなく、蒸し暑いまとわりつく風を放っている。これでは意味がない どうやら今日は最高気温が36度らしい。そりゃあ暑くてたまらないな、脱力感を強
*今回はいつもの小説ではございません。自分の少し不思議な体験談のお話となっています 2019年、6月も半ばの頃 この時は一人暮らしを始めて数年が経過していました。大学にも慣れ、その日は講義もお休み。あいにくの雨でしたが、雨がそんなに嫌いではない僕は散歩をしようと紺の傘を差して外に出ていました まさかこれが不思議な経験をする始まりだったなんて思ってもいませんでした 散歩が趣味だった僕は決まったコースがあったのですが、雨と風が少し強く海沿いであったそのコースは危険だからや
恋文の日、大切な人へ手紙を出してみませんか 「……へ〜」 夕食を食べながら適当に見ていたテレビでそんなキャッチコピーが現れて、俺の目と関心を奪う。23日、2(ふ)3(み)と読んで恋文の日、らしい 明日がそんな日である事を知らず、よく面白いこじつけをするよなと思う 「大切な人…..か」 そう言われて脳裏に浮かぶのは少し前に恋人となった彼の顔だ。そんな事をぼんやりと考えていると 「兄ちゃん、大切な人でもいんの?」 隣でご飯を一緒に食べていた弟が面白そうな顔をして話し
春の風が吹く。穏やかで暖かく、包み込むような優しい風だ。陽気な季節がやってきた事を祝うような、まるで夏の季節の始まりすら感じさせるような暖かい春の風が吹く そんな天気に恵まれた日が続く中、僕は家の中でゴロゴロと何かをするわけでもなくベッドに横たわっていた 「あー….暇だなー」 そんなぼんやりとした発言も一人では少し広い空間に消えていく。彼はお仕事に行っていた。それもどうやらかなり忙しいようだ こんないい天気の日が続いているのに仕事なのは可哀想だが、こればかりは諦めるし
*このお話は単品でも楽しめますが、「一歩 後編」の友達のその後になっております。友達についてより詳しく知りたい方はそちらもお読みください。また、「友人」でも登場しております コバルトブルーの海 どこまでも広がる雲ひとつない青空 見渡す限りの蒼い花 優しい風に乗って花びらが、淡い青の服が、少し伸びた友達の髪の毛がゆらゆらと舞う この景色を黙って見つめる瞳もゆらゆらと揺れていた 始まりは突然訪れた 仕事休みの日に彼と家でゆっくりしていると、僕の携帯に久しぶりに友達か
小鳥のさえずり 僕を照らす優しく穏やかな陽射し ゆりかごのような温もりの中、ゆっくりと目を開けるとベッドの横にある窓から綺麗な日が差し込んでいた 隣でくっついている彼に少し気を使いながら起き上がり、カーテンを開ける。すると、まだ寝ぼけていた僕の世界は一瞬にして変化した 澄み渡る雲ひとつない青空、世界を照らし出す温かい大きな太陽、そして窓の近くには綺麗に咲き誇った桜の木がさわさわと揺れていた。青空と太陽の光、そこに桜の美しいピンク色がなんとも言えないバランスで映り込んで
3月14日。つまり、ホワイトデー。2月14日のバレンタインデーと対をなす日。愛を受け取った人が愛をお返しするのだ 先月、愛しの彼から俺にとってこの世で一番美味しいガトーショコラを貰った。思い返す度に何度でも食べたくなるが、彼はしばらくはもう作らないそうだ。残念でならない それは置いておいて、あんな素敵な愛を貰っておいて彼氏である俺が返さないのはおかしい。だが、あのレベルのお返しとなると少し荷が重い。俺も手作りにしようかと思ったが 「….彼、比べそうだよな」 普段から料
*今回はいつもの小説ではございません。自分の実体験でのお話です 2010/10/7 午後13時過ぎ 小学生の自分はこの時、東京にある病院に行こうと生まれて初めて一人で東京駅まで行きました。自分で切符を買い、何時間も新幹線に揺られて辿り着いた大きく広すぎる東京駅。案の定迷ってしまい、どうしようかと少し泣きそうになりながらウロウロしていると、そこに一人のお兄さんが声をかけてくれました 「君、迷子?」 年齢は(勝手な見た目だけで判断してます)30代ほどでしょうか。自分より大
卒業式。今日で高校生活も最後となる日。ある者は泣きじゃくり、ある者は再会の約束を語り合う。卒業アルバムに思いを連ねる者やお祭りのように騒ぐ者など人様々だ 「…..」 校門のある道に等間隔で並ぶ桜並木を僕は一人で眺めていた。3年前、ここを歩いて新しい世界に踏み込んだあの日を思いおこす 初めての通学路、初めてのブレザー、初めての高校。何もかもが初めてで、ドキドキとワクワクが心の全てを占めていたあの日 「彼と出会ったんだよね」 優しく吹く風の中に桜の花びらが踊るように舞っ
*このお話は以前上げた名も知らぬ貴方に静かな想いの続編となっています。こちらだけでも楽しめますが、以前のも読まれるとより詳しく楽しめます ここは何処にでもある小さなカフェ。私はここでマスターのおじさんと二人で働いている 高校を卒業して大学生になった今もアルバイトとしてずっと続けていた。このままここで働きたいと思うほどには私はここが気に入ったのだ もう数年もいれば慣れたもので常連さんからも顔を覚えてもらっている。あれから様々な技術をマスターから教わり、今ではもうすっかり一