こんな優しい日に
小鳥のさえずり
僕を照らす優しく穏やかな陽射し
ゆりかごのような温もりの中、ゆっくりと目を開けるとベッドの横にある窓から綺麗な日が差し込んでいた
隣でくっついている彼に少し気を使いながら起き上がり、カーテンを開ける。すると、まだ寝ぼけていた僕の世界は一瞬にして変化した
澄み渡る雲ひとつない青空、世界を照らし出す温かい大きな太陽、そして窓の近くには綺麗に咲き誇った桜の木がさわさわと揺れていた。青空と太陽の光、そこに桜の美しいピンク色がなんとも言えないバランスで映り込んでいる
「……へへ、まるで夢みたいだなぁ」
すっかり目と頭は冴えてしまったが、まるで夢のような綺麗な光景にうっとりと呟く。まだ夢の世界を楽しんでいる彼には悪いが、こんなにいい春日和。窓を開けたって構わないよね
ゆっくりと景色を楽しみながら朝の用意をする。なんとなくでおにぎりを作ってしまった。花見をする訳でもないのにな
コーヒーを最後に淹れようとしていると、ふわりと優しい風が吹いて部屋にやってくる。その風と一緒に桜の花びらもいくつかふわりと舞うように部屋の中にやってきた
「ふふ、春だなぁ」
その景色につい微笑むと、花びらが彼の顔に落ちた
「…..へっぶし!」
くすぐったかったのか彼がくしゃみをした。その衝撃で彼がぼんやりと目を開けた
「あ〜…..なに?」
「ふふふふ、おはよう」
「…..おはよう」
まだ寝ぼけ眼でぱちぱちと複数回まばたきをした後、キョロキョロと見渡して朝だという事が理解できたようだ
「おー、天気いいな。桜が綺麗だ」
身を起こして窓を見た彼が寝起きの声でそう呟く
綺麗な景色に彼が映り込み、まるで写真のようなずっと見ていたようなそんな景色に変化する
こっちに彼が振り返り、優しく笑う
「君が窓を開けてくれたんだよね。ありがとう、よく見えるよ」
「….うん。どういたしまして。こんなに素敵な春日和だからね」
「お、朝ごはんも用意してくれてたんだ」
「うん。なんとなく今日はおにぎりになっちゃった」
「いいんじゃね?部屋でお花見しよう」
「え〜、花見はせっかくなら外でやりたいよ」
「じゃあそれはまた今度な。今は俺と君だけでこっそりと」
そうやって穏やかに笑う彼の顔も、そういう言い方にしてくるのもズルいと思う。そんなの断れないじゃないか
朝ごはんも食べ終わり、何気なく話していると今度はふうっとさっきより強い風が吹いてきた。部屋のカーテンが少しバサバサと音を立てる
「お!気持ちいい風」
それでも決して風は冷たくなく、溢れる陽射しのように温かい。ゆっくりと窓に近づくと、もう一度風が吹いてくる
先程よりも窓に近いせいか、少し目を細めてしまう。すると、さわさわと揺れていた桜の木からたくさんの花びらが部屋に入ってきた
「わあ!」
何枚かが僕の顔に張りついてくる。びっくりしてベッドに倒れ込む
「ははは、花びらいっぱいだな」
「こんなにはいらないよ〜」
「ほら、髪にも付いてるよ」
彼が微笑みながら近づいてきて、そっと髪に触る
「可愛い」
「桜のせいだもん」
「ふふふ、桜のおかげだな」
そうして二人で笑い合う。この心地よい春のように、僕達も優しく穏やかな春になっていく
春に誘われて
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