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海のひと時 前編

見上げると雲ひとつない澄み渡る青空
広がる先には太陽で輝く青すぎる海
ゴミや汚れなどない白と見間違うほどの砂浜

俺達は今、旅行で沖縄の海にやってきた


「きれーい!!凄い、凄い!海が透き通ってるよ!」

沖縄のとある島。旅館の窓から見える海は宿泊者専用ビーチとなっており、この旅館の売りでもあった

「お客様用の水着も様々なものを用意いたしております。ぜひ海で素敵なひと時を楽しんできてください」

フロントにいる人にそう言われて俺も少しウキウキしてきた

「よし、どうせならはしゃぐか」

「うん!!はしゃぎまくろう!!」

荷物を部屋に置いた俺達は部屋の散策もせずに、そのまま水着を借りに売り場へ向かった

黒、グレー、青、緑、黄、様々な色やボクサー、トランクスなどの種類も同じくらい豊富だ

サイズだけ合えばなんでもいい俺は適当に取ろうとすると

「あ、待って!どうせなら、お揃いにしようよ」

彼からの提案にいつもならあしらうのだが、今回は旅行だ。俺も少し変えてみるか

「いいぜ。何色にする?」

「これ!同じ柄で色違いのがあるよ!」

彼が俺に差し出したのは明るめの青に白い波模様が描かれた水着、彼が持っているのは柄が同じで黄色の水着だ。断る理由もない、お揃いにしてしまおう

「よし、それにするか」


着替えて砂浜にやってくると宿泊者専用というだけあって、空港の近くのビーチには溢れんばかりいた人達もまばらとしか見えない

その分より海の鼓動や吹き抜ける風の涼しさ、青の壮大な景色が楽しめる。ここにしてよかったと心から思った

「綺麗だな」

「うん、暑さも忘れちゃいそう」

「この格好で海に入らないのもおかしいしな。よし、一緒に海に飛び込もう」

「お、いいね、それ!君から提案するなんて珍しい!でも嬉しいな、よしせーのでいくよ」

「ああ」

二人揃ってその場で片足を後ろにやる

「「せーの!」」

陽射しが照りつける暖かい砂を勢いよく駆け抜ける。久しぶりの全速力は息がキツいが、なんだかとてもスッキリする。空気に舞う砂、鼻に香る潮の匂い、隣には嬉しそうにする彼の笑顔

夏は最高だな

そう思いながら彼と共に海へと高く飛び上がった

「やっほーーい!!!」

「いえーい!!」

ドッバーーン!!!

スピードをつけて飛び込んだ二人の大きな水しぶきがあたりに飛び散る

飛び込んだ海の中は呆れるほど青が美しく、水面は空からの太陽の光が水を照らして薄い水色を、底は深くどこか緑も含んだ濃い青がグラデーションを創り出す

遠くには泳ぐ魚、岩陰にはイソギンチャクや穴からは小さな魚が顔を覗かせている

ざばぁ

息をしようと海から顔を出すと彼も一緒にあがってきた

「海が綺麗!!魚もよく見える!流石沖縄だね!海も寒くなくて気持ちいい」

「ああ、本当だよ。連休取った甲斐があったな」



「ねえ、日焼け止め塗ってよ」

その後、すぐに海からあがってビーチパラソルを立てて中で景色を楽しんでいると彼からそう言われた

「俺が?」

「君以外に誰がいるのさ」

「い、いや、そうだけど。いいのか?」

「何がダメなの?」

彼はなんでもないかのように日焼け止めが入った容器を渡して横たわった

「よろしく〜」

「……人の気も知らないで」

ボソリとそう呟くが彼には聞こえていない。手に日焼け止めを多めに垂らして胸やお腹に塗っていく

「こんな感じか?」

「そうそう、助かる」

喋ったり息をするだけで胸やお腹が動いて少し邪な考えが浮かんでしまう。わかってやってんのか?いや、わかってないんだろうな

邪な考えを抱きながらも理性で押さえつけて続ける
彼が背中を向けるが、その綺麗な背中にも邪な考えが横切る

なんとか塗り終わるがどこか体が昂ってしまった。そんな俺を気にもとめず

「ありがとう、じゃあまた行ってくる!」

元気に海へと走っていく彼

「……はぁ….おあずけか」

深いため息を零してしばらく昂った熱を冷ましていた


しばらくすると

「ねえ、見てあれー!!」

遠くから彼が走ってきて指さした先には

「マジか、クルーザー!?」

そこにあったのは海を走るクルーザーだった。なんと、お金を払えばこれも貸出してくれるらしい。他にも水上バイクなど様々なものがある。マリンスポーツなども出来るようになっているとは驚きだ

「やってみるか?」

「うん!!やりたい!!」

クルーザーに乗り込んで操縦してくれる人が案内してくれた。ゆっくり海を走って観光したり、水上スキーなどのスポーツにも使えるようだ

「はーい!そのスキーやりたーい!」

「はは、君ならそう言うと思った。じゃあ俺はそれ見てようかな」

ウキウキな様子を隠しもしない彼に俺もつい笑顔になる。その後、クルーザーに彼の乗るスキー板をくくりつけて、発車した

後ろから波に乗ったり横に大きく動いたりしながらそれなりのスピードで海を滑っていく

楽しそうに笑っている彼を見ながら、俺にはこれは難しそうだなと感じた。見ているだけでよかったと少し安心した

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