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stellina dolce

3月14日。つまり、ホワイトデー。2月14日のバレンタインデーと対をなす日。愛を受け取った人が愛をお返しするのだ

先月、愛しの彼から俺にとってこの世で一番美味しいガトーショコラを貰った。思い返す度に何度でも食べたくなるが、彼はしばらくはもう作らないそうだ。残念でならない

それは置いておいて、あんな素敵な愛を貰っておいて彼氏である俺が返さないのはおかしい。だが、あのレベルのお返しとなると少し荷が重い。俺も手作りにしようかと思ったが

「….彼、比べそうだよな」

普段から料理している俺と普段はあまりしない彼とではやはりレベルが違う。同じガトーショコラと思ったが、彼が比較してしまわないか心配だ(本当なら比較にすらなるわけないのだが)

「かといって店売りなんかじゃ最低だよな」

チラリとカレンダーを見る。今日は3月1日。2週間しか猶予がない。あまり凝ったものを作ろうにも材料やレシピの調達、試しに作ってみる事も踏まえるとあまり時間がない

「う〜ん、どうするか…」

頭を悩ませて何かないかと周りを見渡していると

「!!」

1枚のチラシが目に止まる。そこにはカラフルな可愛らしい文字で金平糖作り体験!と書かれていた

「これだ!!」



2週間後

「やっと届いた」

体験で作った金平糖がようやく俺の手元にやってきた。今日は3月14日当日。彼の為に作った金平糖だ

「でもまさかこんな大変だったとはな。職人さんって凄いや」

何度も乾かす作業が大変だったのを思い出す。軽い気持ちで始めてみたが、想定より大変で驚いたな。だが、それだけ気持ちを込められたはずだ

綺麗なガラス瓶の中に小さなカラフルの甘い星が詰まっている。それをそっと眺めて微笑ましくなる

どこか彼みたいだなと思ってしまうのだ

小さくて、可愛くて、甘くて、幸せになれて、俺にたくさんの色を魅せてくれる

この後これを渡した後の彼の反応が楽しみで仕方ない。どんな喜び方をしてくれるだろうか、驚くだろうな、笑ってくれるだろうな、一口食べて美味しいって言ってくれるだろうな

頭の中でいろんな彼の表情を思い浮かべる。どんな彼の表情もたまらなく愛おしい。早く彼に会って渡したい

そう思っていると、俺の携帯に連絡がやってきた。今日は学校はおやすみのため、河川敷にある公園で待ち合わせをしているのだ

どうやらもう少しで着くみたいだ。よし、俺もそろそろ出ないとな

コートや財布などを持って、しっかり金平糖の入った瓶も忘れずに

彼を想ってワクワクした気持ちが体をはやらせる。一歩一歩が軽い、早く彼に会いたい



そんな気持ちだったせいか、予想よりも早く公園に着いた。入口にあったベンチに座ると

「え、早い!!」

後ろから彼の声がした。今にもにやけてしまいそうな口をなんとか押さえつけて振り返る。変な顔にならないでくれよ?

「今来た所だよ、おいで」

「それならよかった〜。僕が先に待っていたかったけど」

彼が少し早歩きでやってくる。そのまま俺の隣に座った

「残念だったね。俺もこれ、君に渡したくて早く来ちゃった」

「え?」

そう言って持ってきた金平糖の瓶を出す

「はい、ハッピーホワイトデー。バレンタインのガトーショコラのお返しだ」

「…..」

彼は俺の出した瓶を見つめて固まってしまった

「ど、どうした?」

「….わぁ、すごく綺麗」

彼が零したような声でそう呟いた

「だよな。金平糖ってこんな綺麗になるもんなんだな。これ、俺が作ったんだ」

「作った!?え、金平糖って作れるの!?」

「はは、驚くよな。でも、体験する場所があったんだ。それで体験してきた」

「へ〜。じゃあこれ!君が僕のために!」

「うん、そういう事。食べてみてよ」

彼からの感想がどれも嬉しくて微笑んでしまうのが隠せない。君を想って作ったものが、こんなにも君に褒められたら嬉しくならないわけがない

「でも….なんだか勿体ないよ。こんなに綺麗なのに」

彼が瓶を空にかざす。陽気な日差しと綺麗な空が瓶と金平糖の中で反射してキラキラと輝いている

「味の感想も聞きたいじゃん。ね?1粒だけでも」

「まあ….そうだよね。食べないのもおかしいし」

そう言って彼が蓋に手を当てる。すると

「あれ?この蓋に文字が彫られてる」

金色の蓋の上に書かれた文字に彼が気付いた

「うん。オーダーしたんだ。君のバレンタインの手紙への返事だよ」

「….ふふふ。え〜、こんなんもう余計に開けられなくなっちゃうよ。見る度に思い出すね」

「瓶ごと大切にしてくれよな」

「もちろんだよ。すっごく嬉しい」

彼が俺の大好きな幸せそうに笑った顔で俺に抱きついてきた

「ありがとう」

「….俺の方こそいつもありがとう」

「よし!じゃあ1つ貰うね!あ〜」

ガリッ

彼が瓶の中から黄緑の金平糖を1粒取り出して口の中に入れて噛んだ。砂糖菓子特有の音がした後、シャリシャリと聞こえてきた

「どう?美味い?」

「….ふふふ、うん。もちろん。あのね、君の味がする」

「俺の味?」

「うん。幸せと優しさがいっぱいの味」

「…..へへへ、そっか。よかった」

彼の笑顔に俺も同じ顔をする。二人で優しく笑い合えるこの瞬間、俺はとても幸せを感じた

「金平糖もだけど、この瓶はずっと使うね!大切にする!」

「ああ、ぜひそうしてくれ」

「ふふふ、偶にこの蓋見て励ましてもらうんだ!」

「励ましの効果はないぞ?」

「あーるーのー。こーんなに幸せなんだって思い直せるもの」

彼がそう言って元気に笑うと同時にキラリと金色の蓋が太陽の光に反射した




I’ve got a crush on you

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