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霜降り虫食い白菜
畑の横を通っていたら、見覚えのある軽トラックが停まっていた。
畑のおじさんだ!
小道に車を置いて、走って行った。
「おーーい!おじさーん!」両手を振って声をかける。
「おー!Oちゃんママか!」とおじさんも笑顔で応えてくれる。
20年来の顔見知りなのに、私の名前を呼ばない。
私「最近見かけないから心配してたんだよ。どこ行ってたの?」
おじさん「忙しくて来れなかったんだよ」
私「そうだったんだ。何かお野菜ちょうだい」
おじさん「今は全部終わっちゃって何もない。後は家で食べるもんだけ。
……そうだなあ。家で食べようと思ってた白菜持ってく?」
と目の前で白菜を採って新聞紙に包んでくれた。
虫食いだらけの大きな白菜。
土の匂いがふわっと漂う。
私「わー!美味しそう!霜降り白菜だね。これ買うとすごく高いんだよね。
無農薬だから虫さんもムシャムシャ食べてる。
おじさんの野菜は安心だから好き。美味しいし」
おじさん「大セール。100円でいいよ」
私「いいの?これ買ったら1000円はするよ。大事にいただくね。ありがとう」
おじさん「車どこに停めたの?」
私「あそこの小道」
おじさん「今度から家の駐車場に停めていいよ。あそこ邪魔になるかも知れないし」
私「マジで?すごく助かる。ありがとね。また来るね」
いつも泥まみれで畑を耕しているおじさんだが、実は資産家の金持ちだ。
近所に家を数軒所有してて、株もたくさん持っている。
本当の金持ちは素朴で見栄を張らないんだな。
3ヶ月前におじさんと会った時、道路にしゃがみ込んで顔を上げなかった。
両頬下部がボコッと腫れていて、首まで続いているようだ。
リンパ腫?膠原病?と口には出さないが心配していた。
だからおじさんの元気な姿を見られて良かった。
治療は上手くいったんだな。
おじさんは私の両親世代だ。
その世代の人は次々と鬼籍に入っている。
どうかおじさん元気で長生きして、美味しい野菜作ってね。
今日は白菜も嬉しかったけど、おじさんの元気な姿が一番の収穫だったよ。