たまえちゃんFaraway
『自分がここにいるのは何かおかしい』
昼休み。教室の窓際に立ち、私はそう感じていた。
学校生活が変わったわけじゃない。
”私の内面”が変化しているのは明らかだった。
仲の良い同じクラスのある子ちゃんと遊んでいても楽しくない。つい先日までこんなことなかったのに・・。
突然訪れた違和感。
アタマでいくら考えても、心の中の”たみー”に聞いても答えは出ない。
💔 💔 💔
私は、尾神たまえ。
クラスメイトからは”かみたまほとけたま”なんてアダ名で呼ばれてる。
父の写太郎はカメラが趣味。映すことが大好きで、私の成長記録をタマシックレコードと名付けたメモリーに大切に保存している。料理上手な優しい母。愛されてるはずの家庭環境。けど、今の私は愛ってなによ?という心境の中、やるせなさに打ちひしがれていた。
🏫 🏫 🏫
放課後。
『はぁ・・』
溜息まじりに窓外に広がる景色を眺める。
ふいに男子の魂地が声をかけてきた。
「おーい、かみたまぁ!あっちでコックリさんやろうぜー🎵」
『ごめん・・今日そんな気分じゃないの。なんだか沈んじゃって』
「ズバリ!アノ日でしょう✨」
サル尾君だ。
相変わらずデリカシーがない。
「どんな状況でも楽しむべきさ、ベイビー」
愛仁輪くんは少しズレてる。クラスの中心にいるようで、少し外れたとこから話題を振ってくる。
「同じ日なんてない!一瞬もない!自分におこることをよく観察し、面白がったり考え込んだりすることこそ人生の醍醐味だと思うよ、あたしゃ」
ある子ちゃんはときどき大人も驚くような名言を吐く。
「沈んでるように見えても実は浮かんでるってこともあるよ!クックック・・」
ズバズバと臆することなく発言でき、芯が通ってクールかつミステリアス。我留知さんは私の密かな憧れ。
「ホントのことは言えやしない・・言えやしないよ」
西の魔女ではない。
『ありがとう・・みんなごめん・・』
モヤモヤしたまま私は家路についた。
春めいてはきたけど、夕方はまだ肌寒い。
「おー、たまちゃん。気をつけて帰るんだよ」
陽舞う屋のおじさんの大きな声。桜まつり中止のビラを手にいくつも持ち、どこか寂し気な面持ちで立っていた。
店の前に置かれた睡蓮鉢には馬酔木の花弁が水面に浮かんでいる。美しくレイアウトされた苔や水草の中を泳ぐメダカ。顔をあげると道向こうの公園には、ゆらぐこの気持ちをあざ笑うかのように桜が咲いていた。
町の喧騒など我関せずともいわんばかりに佇む力強い幹。
薄紅色のベールに包まれた静寂の中。
見えないけれど確かにそこに在る何か。
胸が締め付けられるような思いを抱えながら、私はその灯をそっと見逃していた。
😔 😔 😔
『はぁ・・・。なんだろ、この違和感』
その時。
突然、頭頂辺りからコエが!
〈真理そのものの名を授かっておるのに、思い出せぬようじゃな〉
『だ、だれ?』
〈わしか。わしは、アマノ・サンじゃ!✨〉
『ナカノ・・・じゃなくアマノ?』
〈ハゲノでもよいぞ〉
『・・真理そのものって?』
〈ヒトは尾に神を宿す。仙骨。神骨。そこにたまは包まれており、”え”という音は空間を力強く成立させる作用を持つ。つまり、お主の名前だけで宇宙が成立しておる〉
『えーっ⁉・・意味わかんない』
〈本質ではいかなる存在も何一つ変わらぬ全イチがあるのみ。じゃが地球においては、それぞれ魂の次元は異なれど、身体の仕組みはみな同じじゃ。思考だけが分離を作り、あらゆる境界を生んでおる〉
『全イチ?』
〈全イチは何もかもを超越して在る。この世界の本来の姿、自然な状態。全愛。そこに至る前にお主にはまだやるべきことがあるのであろう。大丈夫。その感情が完璧に導いてくれる〉
『感情ってこの違和感のこと?・・。完璧ってどこが💦ずーっとモヤモヤしちゃって、このままじゃ鬱になりそうなのに・・💧』
〈あらゆる感情。それは表すためのエネルギーであり、それらは理性で抑えつけてはイケない。いつまでも隠し通そうとしてはイケない。感情を悪いものと決めつけるなら、宇宙の理はお主から遠く離れる〉
『宇宙の理って💦』
〈はて?ここは宇宙の中にある地球という星であろう?〉
『それはそうだけど・・』
〈順番を勘違いしてはイケない。人間が創り出した世界ではないのじゃから。思考を主に楽しんでおるのなら問題ないが、悩み路頭に迷っておるのならそれは瞑想を間違え、素敵な地球人生から遠ざかるようなもの〉
『素敵な地球人生!✨って悩んでる時間のほうが多い気が・・』
〈うむ。まだまだヒトは自分がやっていると思っていたい。ヒト本来のチカラとは思考を離れたところにあるのじゃが・・。とにかく現実の顔を魅せる幻想に真剣になりすぎるとキケンじゃ。だが、その感情の場合はハートでしっかり感じなければならない。起こることは何であれ起こる。それがお主に起きたのであれば、お主の中の隠れていた闇が輝き始めるチャンスじゃ👍〉
『チャンスなんてとても思えないよ。どうしたらいいの?』
〈恐れず、避けず、否定せず。感じて解き放つ。ただそれだけでいい。実体がないそれはただそれだけで消える。いいかね?もし感情を観ようとせず、避け続ければ、それはその身体に良くない症状として現れる。これをしっかり覚えておくがいい。放つ瞬間を間違うとその命は落ちる〉
『ひぇえええっ💦』
〈恐れることはない。違和感がきたならば、お主が成長するためのチャンスじゃ。それはお主を救うために起きておる。恐れや不安というものは実体がない・・つまり存在しないものだと理解することが重要であり、自分の内にすべては備わっておると理解するために受容されよ〉
『ま、眩しい・・。ア・・アマノさんが眩しいよっ』
〈一番大事なものは決してお主から離れることはない。そこにある。お主が何かから逃げるのではなく、自分自身を信頼することで、お主ではないもの、つまりお主には必要ないものを遠ざけなさい。要らぬものは必ず消える。なぜなら、本当のお主以外のものには実体がないから〉
『消える・・』
〈本当の自分と在りなさい。もう変化しておる。”私が私を食べている”。”私が私を見ている”。そのような感覚が訪れるかもしれない。またはハートからかすかなコエを聴くこともあろう。通りの良い者は全イチと会話までできる者もおる。ただ、それは神秘体験でもなんでもないのだ。お主がお主ではない思考や身体とあまりにも一体化しておるだけなのである。それらは自動で動いている〉
『ハッ!!桜の幹のみえない内側!?💫』
😲 😲 😲
それから数か月後。
私は、感情としっかり向き合うようになっていた。
恐れず、避けず、否定せず。すると不思議とスルリとそれは流れていく。
吹き出物も出ないし、病気にも罹らない。
アノ日も軽やか💜
きっと、自然体ってこのことよね🎵
ある日。
父がどうしても私を撮りたいというので、桜の木の下でありのままの自分を撮ってもらった。感情手放し記念📸✨
でもなぜかそこには、クラスメイトのナガセヤくんが映り込んでいた・・。
せっかくの記念写真。父と私は泣いた😭😭
「泣くなよ。わずらわしいよ。泣かなくても写真は撮り直せるし、泣いたって君らの身体のほとんどは水なんだから。知ってるかい?性質変化してどんな状態であろうと水はラクなほうにしか流れないのさ。”これでいい”って肯定的に受け入れるタモリさん見習えよ」
『あぁぁ...。ただ感じて、観るだけでよかったんだ!💚』
「流れ流れて、気づけばそこは愛の海さ。不治氣くんの卑怯も人間の中芯に気づけば愛だね」
『じつは弟想いの優しき男。ナガセヤあぁぁぁ😭😭😭』
💙 💙 💙
いつもはひねくれ者で毒舌のナガセヤくんから、深イイ生き方の術を教わった気がしたたまえであった。なぜタモリさんが出てきたのかは謎である。