リーダーが身につけたい習慣
リーダーシップについて勉強しているのに、実際の仕事の場では成果が出せないと感じたことはありませんか?
それはリーダーシップはスキルだけでは成立しないことを理解できていないのが原因ではないかと思います。
ネットでリーダーシップに関する情報を拾い読みしても、新刊書を買ってみても、それらで紹介されているようなものを自分の習慣として身につけないと、その時だけリーダーシップが「わかったような気になる」だけで終わりです。
リーダーシップを構成するのは、スキルと人間力の両輪です。
人間力を定義するなら、人としての魅力や信頼を生む力のことで、自己管理、共感力、倫理観、コミュニケーション力、忍耐力、謙虚さなどが挙げられ、仕事や人間関係を円滑にし、困難を乗り越える力の源となるものです。
では人間力はどうやって高めればいいのでしょうか。
普段から人間力を高めるためにできることはたくさんありますが、重要なのは「継続して習慣化すること」と「具体的な行動に落とし込むこと」です。
リーダーとして成長するうえで大事なのは行動としての習慣の積み重ねです。以下は、私も長らくしている習慣の一部ですが、参考になれば幸いです。
1.自分を知る
●日記をつける
毎日、自分の行動や感情、周りへの影響について振り返る。うまくいったこと、改善したいことを記録すると自己理解が深まる。なにも立派な日記帳である必要もありませんし、スマホのメモ機能に書き込むのでも良いでしょう。
●フィードバックを求める
信頼できる人に自分の行動や態度について率直な意見を聞く。周囲の視点を取り入れることで盲点に気づける。自分が固執してしまっている価値観がないかを定期的に見直すためにも他人からのフィードバックは大切。
2. 他人を理解する
●傾聴を意識する
会話の中で相手の話を最後まで聞き、途中で遮らない。相手の立場に立って考える練習になる。年下や部下だからといって軽んじたりすると、自分にはない視点や考えを得る機会を喪失するし、何よりも相手との信頼関係が築けなくなる。
●違う価値観を受け入れる
読書や異業種の方々に接する機会を増やして、異なる考え方に触れる。視野を広げることで偏見を減らすことができる。食わず嫌いで、常に自分のコンフォートゾーンにしかいないと、偏見や先入観が知らず知らずのうちに強化され、柔軟性や発想力に欠けることになる。
3. 人格を磨く
●小さな親切を習慣にする
困っている人を見かけたら声をかける。自分が親切にされたり、手を貸してもらったら、ありがとうをきちんと伝えるなど、日常の中で他人を思いやる行動を取る。電車でお年寄りを見かけたら席を譲るなどやろうと思えば誰でもできるし、相手が喜んでくれたら小さな満足感を得られる。
●約束を守る
信頼の基盤は約束を守ることにある。人との時間を守ったり、小さな約束でも確実に守ることで信用が積み重なる。忙しいからと言い訳をして、相手を軽く見て、少しくらいならまあいいかと自分を甘やかして日々を過ごしていると誰からも信頼されなくなる。小さな約束も守れないのに大事な約束はもっと守れないと思われる。
4. 心を整える
●好きなことに時間を使う
日常のストレスや焦りを落ち着ける習慣を持つ。冷静さを保つことができる。ストイック過ぎると常に精神が緊張状態となり、良い判断ができなくなる。漫画を読む、音楽を聴く、お酒を飲む、動画を観る、人それぞれリラックスできる方法はあるでしょうから、自分を必要以上に追い込まない。
●読書をする
特に哲学や古典文学、歴史書など、深い洞察を与える本を読むことで心を豊かにできる。ハウツーものはスキルアップのために有用かもしれないが、物事には必ず真理や原理原則がある。基本なくして応用はない。意識して、洞察力を磨く習慣をつける。
5. 目標を持って行動する
●学び続ける
新しいスキルや知識を身につけることで、自分の成長を実感できる。成長が自信につながる。なりたい自分になるためには学び続けることが必要。必ずしも仕事に関することだけなく、趣味でもいい。目標を持って行動し続けることで、忍耐力や達成感、自分を成長させる有形無形の副産物が生まれる。
●行動を振り返る
日々の目標とその達成度をチェックし、改善点を考える。小さな成功を積み重ねることが大切。日記はこれを助けるツールとなる。自分にダメ出しばかりしていると自分と向き合いたくなくなるから、出来たことは正当に評価して、自分を褒めることも大事。
6. 周りの人を大切にする
●感謝を言葉にする
普段から「ありがとう」と伝える習慣を持つ。感謝の気持ちは自分も相手も気持ちよくする。時機が大切なので直ぐに伝える。家族、友人など大切に思っている人がいるなら面倒くさがらずに伝える。当たり前のことなどこの世にない。誰かが自分を気遣ってくれていることに感謝をする。
●相手の立場に立って考える
「もし自分が相手だったらどう感じるだろう?」と常に意識する。どこかで自分が正しいと思い込んで行動していれば、必ず軋轢が生じる。自分が発する言葉の選び方、態度、タイミング、相手の反応に注意を払う。一歩引いて対人関係を俯瞰するとストレスは圧倒的に減る。
7. 自分に厳しく、他人に優しくある
●自分の弱さを正しく認める
完璧である必要はない。失敗を受け入れ、学びに変える姿勢が大切。弱みを自覚することは大事だが、不必要に自分を卑下したり、自己肯定感を下げる必要はない。困ったら助けてくれる人がいれば大概のことはどうにかなる。そのためにも多くの行動を習慣にする。
●他人のミスを許す
他人に寛容であることで、良い人間関係が築ける。他人の粗探しばかりしていると他人を正当に評価できないばかりか、自身も鬱陶しい存在と思われ、周囲から疎まれる。自分も完璧でないのに、他人のことは批評するのは愚かな人間のやること。
まとめ
人間力とは一般的には抽象的な精神論に聞こえてしまうものかもしれません。○○ができるといった具体性がないため、大事なことだと理解できていても、では具体的にはどんな力を指すのかと言われると、人それぞれに捉え方も異なるかもしれません。
冒頭に私なりの人間力の定義として、「仕事や人間関係を円滑にし、困難を乗り越える力の源となるもの」と書きましたが、表現の差はあれ、本質的なことは対人関係能力のことを指していると理解しています。
私個人は人間力を培う、高めるための指針として中国古典に傾倒していますが、三国志や史記、論語や孫子などを読んでも、いついかなる時代、状況においてもこの人間力の有無が結果に大きな影響を及ぼしているように感じます。
歴史は模擬人生であり、追体験ですから、自分ならどうする?という観点で古典を読んでいると多くの実りをもたらしてくれるように思います。そして、そこで学んだ知恵をいかに実生活で活かすかが本当に大事だと日々気づかされます。
人間力を高める習慣というテーマで本稿を綴ってみましたが、その多くは中国古典から得た学びということも書き添えておきます。
中国古典の根源的テーマは修己治人(しゅうこちじん)です。
念のため書くと、修己治人とは、「己を修め、人を治める」という意味で、自分自身を磨き、人格や徳を高めることを指し、自分の内面を整え、正しい行動をすることが重要とされます。修己によって得た徳や知恵をもとに、リーダーとして他者に良い影響を与え、秩序や成長を実現します。
この考えは方は「自分を正さなければ他者を導くことはできない」という古代中国のリーダーシップ哲学の基本を示していて、リーダーに求められる自己修養と他者への影響力を両立する重要性を教える言葉です。もし、初めて聞いたという方がいらしたら一生胸の中に大事にしまっておいて欲しいなと思います。
リーダーとしてのスキルを磨く一方で、自らの内面を磨くことも怠らない。これがリーダーシップの本質であり、真の人間力を高める道だと私は思っています。
仕事や組織での成功だけでなく、周囲の人々との良好な関係を築き、人生そのものを豊かにするために、今日から始められる習慣をぜひ取り入れてみてください。些細なことから始めるのでも構いません。日々の積み重ねが、やがて大きな成果となり、自身のリーダーシップスタイルに深みを与えてくれるはずです。
この道は決して一朝一夕に成し遂げられるものではありませんが、その歩み自体が大きな学びと喜びをもたらしてくれると思います。人間力を高め、リーダーシップを発揮する過程で、皆さんがさらなる成長と充実を手にされることを心より願っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。