オカベ カフカ
自費出版しようとして諦めた本の中身。
目が覚めてSNSを覗いたら昨日何気なく投稿した内容がバズっていた。通知欄は知らないアカウントからの反応で埋め尽くされていて、おかしなことが起きていると思った。「いいんですか、こんなのがバズっても」という自分からすれば中身も無いようなものだったので「ちょっと、落ち着いてください皆さん」という他人事のような気持ちになった。 今日も労働。ロッカールームで作業服に着替えている最中もSNSの通知を知らせるバイブ音が30秒感覚くらいで鳴った。大丈夫なのだろうか。労働前にバッグからフリスク
晴れた日のドトールにて。 ○小説執筆は執筆過程を楽しまなきゃ損だ。一気に書く手が止まらなくなった時が一番面白い。俺はジグソーパズルに似ていると思っている。作り終わったら暫く眺めて、飾って、少し経ったらパズルを崩す。俺も小説が出来上がったら読み直して、推敲して、noteにアップして少し経ったら消す。少し経って消すという行為はおかしな行動かもしれないが、あれだ、書き終わって皆様に読んでもらおうと思ってアップして、一通り満足感に浸ったので消す、という言い方が正しい。消してもデータは
BFC6落選作品です。 「間違った!」とテーブルの上に倒れたビールジョッキを見つめた後に丸田は言った。ビールジョッキからは、半分ほど入っていたビールが全てテーブルを濡らすように零れ、テーブルから水滴が垂れて床まで濡れた。 1杯600円するビールが入ってたジョッキを手に取って「飲み放題でよかったな」と俺が言った。中華料理屋には俺と丸田の他にいかにも会社帰りというサラリーマン連中と、酒の飲み方もろくにまだ知らなそうな大学生のグループがいた。俺たちは餃子と酢豚ならぬ酢鶏と麻婆
8 9 「本能」 寒すぎて目が覚めた。タオルケット1枚で寝たのが間違いだった。秋は体温調節が1番難しい。俺は今暖かくなりたい。だが押し入れから毛布を引っ張り出すのはめんどくさいし、また明日から暑くなるみたいな事を昨夜テレビで言ってたので、エアコンの「暖房」のボタンを押した。自分の欲求には逆らえない。 午後だけ休日出勤した。当番だから仕方ないが休みの日に仕事に出ても殆どする事がないのでTVerで見逃し配信を観たりした。別に家に帰ってからでも観れるし、業務中だし観ないと
7 「TABOO」 新しい総理大臣が決まったと思ったら解散総選挙が行われる我が国。ロクに達成もできないマニフェストを掲げ、働いていても選挙カーの声が聞こえてくる。野党は政権交代に躍起になっているが、仮に政権取ったその後のビジョンみたいなのが全く聞こえてこない。とりあえず与党の一連の政治とカネの問題の批判ばかりをしているイメージ。 政治家というだけでも金は沢山貰っているはずなのに、何故裏金とか金に汚い事件が絶えないのだろうか。そんな政治についてニュース番組とかで政治評論家
6 「ヘヴィーなB.I.G.」 高校生の頃。ショッピングモールの中のドトールで母親からもらった小銭を握りしめてようやく飲めるようになったコーヒーを注文して適当に席に着いて飲んでた。母親は洋服を見に行ってて30分くらいは戻ってこない気配。俺が座ってた席の隣に40代くらいの男性が2人向かい合いながら座り、2人とも同じカフェオレを飲み、ミルクレープをフォークで突っつきながら終始イライラしている感じだった。 「俺はなあ、許せねえんだよお、こうやってなあ、突き刺したくなる気持ちに
5 俺の直属の上司は苗字が「猿田」で「猿」と入っているため、仲の良い同僚からは「サル」と呼ばれている。ただ上司の見た目は「サル」からは遠く、高校時代からラグビーをやっており現在も社会人クラブチームに所属しており、身体が非常にゴツくて特に腕なんかめちゃくちゃ太いので、上司の上の課長とか部長には「ゴリラ」とか、スラムダンクのノリで「ゴリ」とか呼ばれていた。部下の我々みたいなもんは勿論「猿田さん」と呼んでいた。 猿田と他何人かで飲みに行った時、酔っ払った猿田が「俺の事サルって
4 「Pinfu」 普段から全身ユニクロのコーディネートの俺は今日も平凡に生きる。赤や黄色の服を着ている人を街で見るたびに「目立ちたがり屋なのかな」と感じてしまうくらい俺は黒とかの服が多くて目立つような服は一切着ないし着ようと思ったこともない。 俺の知り合いに「忍」という奴がいて、彼のコーディネートはもうフォーマルなんてのは程遠く、ド派手な柄シャツを着ていたりして、背も高く筋肉質なのでカタギとは思えない。そんな奴の名前が「忍」っていうから「お前、忍ぶ気が全然無いじゃんか
3 「ポストにマヨネーズ」 かつて同棲していた女とは「食の好みの不一致」で別れた。何も無い休日。その日の昼は家にストックしてあったカップ焼きそばの「一平ちゃん」を食べた。3分経って湯切りをして、液体ソースをかけて食べようとしたら横になりながら撮り溜めていた「アメトーーク」を観ていた彼女が「からしマヨはかけないの?」と聞いてきた。俺は「別に要らないかな」と言ったら彼女は「それが美味しいのに、勿体ないな」と呟いた。居酒屋へ飲みに行った時に唐揚げを注文した。出てきた唐揚げに彼女
2 「棺桶ロック」 ステージ上でスポットライトを浴び、坊主頭の男はギターを弾きながら叫んでいた。その姿はイースタン・ユースの吉野寿をリスペクトしているようだった。坊主頭の男は実家が新潟県にある寺の息子で、通っていた駒澤大学でも仏教を専攻していた。大学を卒業した後は都内の寺で修行僧として勤める一方で、大学の同級生とバンドを組んで週に1回程度ライブハウスで歌っていた。坊主頭の男は人間椅子の和嶋慎治が大学の大先輩にあたり、それがきっかけで大学在学中に片っ端から聞き漁った。ハード
1 こんにちは。オカベカフカって言います。普段は働きながら趣味で小説書いたり、エッセイ書いたりしてます。この度、自費で「11月の犬とドレスを着た象」という本を出版しようと夏前から企んでいたのですが、プライベートで予想外の事が色々と立て続けに起こって、それがモロに私の根っからのやる気の無さに響いてしまい、自費で出版しようなどという考えは頓挫してしまいました。全て自分が悪いのです。ただ毎日のようにiPhoneのちゃっちいメモ帳にどこにも発表しない普段生活していて感じた事だとか愚
さっきまであれだけ青く晴れていた空が、今は黒く分厚い雲が覆っている。今にも雨が降ってきそうで、傘を持ってくるのを忘れた俺は急いでコンビニへと駆け込み、傘を1本買った。全く無駄な出費だ。コンビニの前で自撮りをしている女子高生がいた。コンビニをバックに撮って何が目的なのだろうか。SNSを見るとこれから来るであろうゲリラ豪雨についての投稿が多く目立った。取引先がある大井町までは電車で向かう。その前に新宿の喫茶店「らんぶる」で軽めの昼食をとる。いつも階段に列ができているが、今日は列が
メンバーが3人脱退した時はシンプルにショックだった。その1ヶ月前に行われた日比谷野音でのライブが最高だったからだ。そしてオリジナルドレスコーズの活動が毛皮のマリーズが解散して2年半という短期間であった事もあって毛皮のマリーズが復活するのかどうか自分の中で淡い期待がある反面、なかなか事実を受け止められず暫く志磨遼平の音楽を楽しむことが難しかった。志磨遼平がスタッフアカウントを自然と乗っ取るような形でTwitterを始め、アルバム「1」の制作過程が毎日のようにアップされるようにな
「新年度早々、嘘をつく気分はどうだい?」俺が彼女にそう言ったのは別に皮肉ではない。俺は普段嘘ばかりついている。そんな奴ほどエイプリルフールという今日くらいは嘘つかないでおこうと思うのだ。彼女に最後に送った一文は「嘘を隠すな」だった。喧嘩をした訳ではない。ただ彼女が嘘をつくたびに、彼女の中に「空白」ができていた気がしたので、止めようという意味で伝えた。 彼女は今日とうとう帰って来なかった。帰ってくる事を祈って、玄関を開けたままにして彼女が好きなアクアパッツァを作った。味見をした
職場の先輩と渋谷のクラブクアトロでライブを観た帰りに、居酒屋に行って今日のライブが最高だったって話で盛り上がりすぎて、気づいたらあっという間に2時間が経っていた。話し足りないし飲み足りないしって感じなので次の店を探しに外へ出た。ビルが真っ暗な空に向かって伸びていて、周りを見ても同じようなビルがいくつもあって、田舎出身の私はこの光景にいつも圧倒されてしまう。私の地元がどれくらい田舎なのかというと家から車で15分くらいかけて走らないとコンビニとかスーパーが無い、それくらいのレベル