本能

8

9

「本能」
寒すぎて目が覚めた。タオルケット1枚で寝たのが間違いだった。秋は体温調節が1番難しい。俺は今暖かくなりたい。だが押し入れから毛布を引っ張り出すのはめんどくさいし、また明日から暑くなるみたいな事を昨夜テレビで言ってたので、エアコンの「暖房」のボタンを押した。自分の欲求には逆らえない。

午後だけ休日出勤した。当番だから仕方ないが休みの日に仕事に出ても殆どする事がないのでTVerで見逃し配信を観たりした。別に家に帰ってからでも観れるし、業務中だし観ないというのが当然良い。ただ1時間に1回荷物が運ばれてきて、それを荷受すればいい。あとはまた1時間後に来る。その時間椅子に座り、ぼーっと一点を見つめながら過ごすという事が俺にはできない。家で1人でいる時も何もせず、ぼーっとする行為をしない。それだったら寝る。余暇時間は本を読むか、ラジオを聴くか、サブスクで映画とかドラマを観るか、物書きするかという大体4択だ。これは仕事を始めてから余暇時間という物に対する重要度が上がったからだ。俺は仕事以外の時間は余暇時間と考える。車に乗って家に帰るまでの時間、何も音楽など流さずにただ家まで帰るという事すら勿体ないと感じる。そうなると脳から信号が送られる。
「仕事じゃないぞ。あのバンドの新譜まだ聞いてないだろ。はよ聴け。」
「もうすぐラジコのタイムフリーが終わるから、こっち先に聴けよな。」
霜降り明星のオールナイトニッポンを聴きながら「ウォッチドッグス2」をプレイしている。これが究極の時間の使い方だと思っている。寝る前に気になっていた海外ドラマを1話だけ観たが集中力がなく、バックグラウンド再生してSNSとか観たりした。2つの事を同時にやるという事は本能が生み出した異質な行為だ。

カルアミルクみたいな甘い酒は飲まない。ブラッド・ピットの映画で観たボイラーメーカーとかいう名前の難しい酒も飲まないし、日本酒とかテキーラのショットとか如何にも危険そうな酒も飲んだことは無い。俺はレモンサワーとかハイボールとかどこで飲んでも平均点くらいの分かりやすい酒ばかりで良い。酔っぱらいは敵だ。酔って帰り道しっかり歩けないと警察の世話になるかもしれないし奇怪な事をする可能性だってある。それでも飲酒という行為をしてしまう。リスクなど承知。