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魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー13 戦争の話
「山田さん、お風呂に着きましたよ!」
晃司は、お婆さんが乗る車椅子を押して施設の廊下を渡り、脱衣所に到着すると、前に回り込んでフットレストを上げて、お婆さんの両肘に手のひらを添えて屈み、せーの!、、で一緒に立ち上がり、椅子に移乗した。
「ありがとうね。あなた名前は何ていうの?、、えーっと。」胸に付けている【ボランティア 武田】の名札を見つけた。
「武田君ね。これからも頼むね!」孫を見る様に、晃司
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー あらすじ
大学卒業後、自分探しの道中で、内定を貰っていた商社に就職せずに、オートバイレースに没入していった晃司。
飛び込み営業での出会い、経験、巡り合った女性との恋愛、失恋。
導かれる様に出会った特別養護老人ホームでの介護、入居者や職員との心の交流、認知症、人間性の豊かさ、様々な知恵に触れて、次第に大切な物に目覚めていく。
しかし、心の傷を負った晃司は、ある日を境に引きこもってしまう、、、
そ
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー12 神の国
暗闇の蒸し暑い車中に、カエルと虫の鳴き声の大合唱が響いてくる。
その夜、晃司は梨花の送迎を志願して、特別養護老人ホーム「神の国」の職員用駐車場にいた。梨花が特養の勤務日を増やしてから、此処で度々梨花を待つ様になっていた。
視野の角で梨花の姿を一瞥した晃司は、トランスポーターのエンジンをかけ、、ヴォーン!。助手席に乗り込む梨花に自らの焦燥を悟られない様に、営業の話題を話し始めた。
「梨花とペア
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー11 寂しさと孤独
「何してんだよ!風邪引くよ、早く入って!」
、、何故来たのか?と次いで聞きたかったが、風邪をひかない様にするのが先だし、野暮に思えた。
全身ずぶ濡れになった梨花を部屋に招き入れ、梨花の頭にバスタオルをかけた。
「ありがとう」梨花は浴室に入り、濡れた衣類と下着を剥いで洗濯機に入れ、晃司が準備した白い無地のTシャツ、ストライプのリネンシャツを着て、短パンを履いた。寂しさが幾分和らぐ様に感じた。
「
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー10 梨花
ザワザワ、、一体どうやったの?、、分からない?え?、、ウソ!、、信じられない!、、ヤラセじゃないよね?、、引いたり推したりだって?
事務所のドアを開けると、既に出社している梨花が質問攻めされている。
晃司の顔を見ると、皆が一斉に向き直り、質問が攻めが始まる。
トーク上手いんだって?、、私と組まない?、、私が推すから!ねえ!
「私と武田さんしか無理です!」梨花のムキになった声が向こうから聞こ
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー8 コンビ初陣①
「俺が先にトークするから、フォーローを頼む!」
「うん。じゃ次の家は私ね!」小さく頷き合う。
微かに震える指先で、晃司がチャイムを押す。
【ピンポーン】
『は〜い!』
「こんにちは!ミネルビ学院の武田と申します。子供さんの教育、発達の事で少しだけお時間いただけたら、、」
『今、忙しいわぁ』
「お忙しい時にすいません!子供さんの発育、将来に繋がるお話です。数分だけでもお伝えできたらで結構です!決
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー7 コンビ結成
「朝礼、おはようございます!」
「おはようございます‼︎」
ミネルビ学院四日市駅前営業所で、いつにも増してハイテンションな相原ゆう子所長の朝礼が始まった。
「皆さん!夏日にも関わらず肌寒い気温の低さが続きますが、ミネルビは熱い!昨日の新規獲得件数が30件!で、当営業所の最多記録に並びました!」どよめきと拍手が沸く。
「内訳ですが、水谷さん9件、長野さん6件、平野さん5件、森田さん4件、山本さん4
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー6 辞表
人気のない公園で、日傘をさすのを忘れていた水谷の話は、夏日より熱を帯びていた。
「今すぐ営業辞めな!」
「・・・」
『馬鹿』の次に『営業辞めな!』という瑣末な言葉に、晃司は未だ無表情だったが、『あのね、、』と武田を諭すように話し始めた後は、色を失っていった。
「さっきの奥さんに『ミネルビやらなくていい』って言ったの何?どう言う意味で言ってんの?あんた1ヶ月新規ゼロなんでしょ!」
「は
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー4 ロードレース
1992年6月26日 鈴鹿サンデーロードレース
パァァァァァァァーン!カァァァァァァァーン!ブォォォォォォーン!グォーーーーー!
鈴鹿サーキット南コースのストレートをロードレーサーRS 125ccが次々と駆け抜けていく。
晃司もその中に居た。
カァァァァァァァーン!、、 ストレートは伸びている。
グォーーーーー!、、 コーナリングはマシンを上手く曲げられず遅い。
ブォォォォォォーン!
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー3 陽炎の向こう側へ
陽炎の向こう側へ
株式会社エオスの作業場は、小高い丘上にある工業団地の一角にある。
作業場の裏は、約6万人規模の湖南市全体が眺望できる西南向きの場所だ。
晃司は、ブラスト処理を早く済まして時間を作り、作業場の裏でこの街を眺めていた。
生い茂るコナラの向こうには、古い住宅街に隣接して新しく造成された住宅街が広がり、官庁街あたりに5階建位のビル街、大型スーパーマーケットの巨大な屋根、線を引い
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー2 コウノトリ
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発注が次々と舞い込んでくる。
その日、武田晃司は残業せずに作業着と作業靴のまま三菱の赤いミラージュに乗って自宅アパートへ向かった。
片道30分程かかる山道を走行中、人気のない場所に車を停めた。そして、座席に座ったまま目を閉じた。20分も経たずに、自分の本当の居場所に戻ったように感じられ、生気を取り戻す。
晃司にとって、結婚して以来、この山中の誰もいない場所は、職場から避難す
魂に煽られる人たち〜心を揺さぶる人生のストーリー1 洗浄作業
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シュャーーッ シュァーーーーッ
晃司はブラスト機に向かい、黙々と付着物のこびり着いたウェハー表面にノズルを向け続けている。
ノズルから勢いよく出続けるサンドの番数は中粒で、少し細かい200番だ。半導体の製造過程でウェハー表面に付着する汚染物質はかなり強度が高く、中々除去できない。見やすい位置に置いた腕時計を横目で睨んでいたが、次第にイラつき出した晃司は、主任の目を盗んで120番のサン