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【読書感想文】マーク・ベニオフ「トレイルブレイザー」

こんばんは!
恒例の読書感想文ですが、そろそろ海の向こうへ飛び出そうと思っています、小栗義樹です!

さぁ、今日は人気企画の「読書感想文」です!
今まで、夏目漱石→芥川龍之介→梶井基次郎→太宰治とやってきましたが、そろそろ海外の本を取り扱いたいと考えていました。

ということで今回は、
マーク・ベニオフさんの「トレイルブレイザー」でいきます!

題材はいつものごとくめちゃめちゃ悩みました。初の海外作家ですから、僕がすごく好きな、ドストエフスキーの「罪と罰」か、フィッジェラルドの「グレート・ギャツビー」にしようかななどと考えました。

そんな中、パンと思いついたのがこのトレイルブレイザーです。これも、とても印象に残っている作品です。抱いた感想も明確ですし、考え方に大きな影響をもたらしてくれたので、1発目はこの本にしようと思いました。

トレイルブレイザーは、本屋さんに行くと「ビジネス書」の欄に置かれています。著者であるマーク・ベニオフさんは、生粋の作家というわけではありません。彼は、超有名な会社の経営者です。

セールスフォースドットコムってご存じですか?

セールスフォースは、アメリカのカルフォルニア州に本社を置く、スーパーメガテック企業です。主に、顧客管理関係ソリューションを中心としたクラウドコンピューティングサービスの提供企業で、米フォーブス誌の「世界で最も革新的な企業ランキング」で、2014年まで4年連続1位に選出されるような、華々しい実績を誇っています。マーク・ベニオフさんは、そんなセールスフォースのCEOであり、創業者です。

そんな彼がセールスフォースという会社で体験した内容をまとめた本、それが「トレイルブレイザー」なのです。

トレイルブレイザーとは、日本語で「開拓者」という意味を持っています。これからの時代を生き抜くためには、社会貢献と利益追求を同一に考えられるリーダーが必要だという持論のもと、そういう者をトレイルブレイザーと呼び、そうなるための方法を、自身の失敗談などを織り交ぜながら綴っていく。そんな感じの本です。

成功するための本ではなく、成功者が痛感した成功を維持するための苦悩と葛藤が、かなり生々しく描写された本になっていて、日常にて普通の生活を送っている僕のような人間には、少しファンタジーのようにも思える本です。

今、ファンタジーという言葉を使いましたが、僕はこの本を、ビジネス書ではなく小説であり思想書として読んでいます。もちろん、ビジネス的にも勉強になる部分が沢山あるし、確実に影響を受けているのですが、僕の中では、思想とその物語性に大きなインパクトを受け、面食らいました。

はやい話が面白いのです。何度でも読めます!

僕、ビジネス書や自己啓発系の本もめちゃくちゃ好きで、沢山買って、沢山読みます。ただ、多くのビジネス書は1回~2回読んで終わりです。小説やエッセイ集のように、何度も読み返そうとはなりません。ビジネス書は、通しで読み返すというよりも、部分的に思い出すために、いわゆる辞書的な引き出し方で反復することが多いです。ビジネス書や自己啓発本の多くって、そこに物語性はないし、気持ちも考えも入ってないじゃないですか?あるのは戦略や便利なツール、人の気持ちの読み取り方と時代の予測です。問題解決に特化しているビジネス書は、多面構造である必要がないし、表現を必要としません。教えるため・促すために書いているのだから、それが正解なのです。

だから、物語や裏読みなど、考察や想像が好きな僕からすると、読み返す意味はあんまり無いんです。もちろん、反復することで気づきを得られることはありますから、各章を局所的に引き出すことはありますけど、1度通しで読んだなら、それ以上読み返すことは、ほとんどの場合ありません。

そんな僕ですが、このトレイルブレイザーは、すでに4回くらい読み返しています。本屋に行けば、ビジネス書の棚に置かれているトレイルブレイザーですが、僕はもう4回は読み返しているのです。

その理由は単純で、シンプルに物語が面白いから。そう、マーク・ベニオフさんの実体験が綴られたこの本は、ある意味小説的であり、そこにはマーク・ベニオフさんの思想が詰まっている。だから、すごく面白いし、色々な感想を得る事が出来ます。

大まかなストーリーは、

自分は一企業の社長というポジションを担っているだけだと思っていたが、人種差別やマイノリティー差別など、現在大きく取り上げられている社会問題に対して、セールスフォースという大企業の社長として声をあげるべきだという社員の訴えを受け、自分には大きな影響力が、大きな責任が伴っているという事を自覚した。そこから社内で社会貢献や社会課題に関する様々な問題に対し、文化と仕組みを導入して立ち向かっていく。これからの時代を生きていくためには、社会貢献に目を向け、人々が平等に生きられる社会のために、全力を尽くせるリーダーが必要だ。利益だけを追い求め、便利さだけを追求し、人の気持ちや目の前の問題を置きざりにするリーダーは、間違いなく生き残れないだろう。トレイルブレイザーを育てていくこと、そういう意識をチームに根付かせ、浸透させていくことが重要になるだろう。

こんな感じです。

この本を読むと、マーク・ベニオフさんのことを好きになると思います。主人公であるマーク・ベニオフさんは、一貫して色々な問題・課題に取り組むのですが、とにかく失敗ばかりします。ビジネスに失敗するわけではありません。トレイルブレイザーとして失敗するのです。

この本には、人間が今までずっと抱えてきた、そして今も抱えて続けている問題の、根深さと解決の難しさが生々しく書かれています。女性・マイノリティー・人種などの差別に対し、大きな企業がどのような取り組みをしているか。アメリカでは、国だけでなく、企業の対応も重要なのです。国民は、企業の動きさえちゃんと見ています。こうしたデリケートな問題に対し、今までのアメリカ大企業は、恐らくずっと無頓着だったのでしょう。マーク・ベニオフさんはその感覚のまま、夢だけをを持ってセールスフォースを起ち上げたと書いてあります。だからこそ、社員から「この法案が可決されたことについて、あなたはどうお考えですか?」と聞かれた時、とにかく面食らったと書いてあります。一企業の社長が、政治の問題に首を突っ込み、意見を言わないといけない。それはとても怖い事だが、自分はいつの間にか、そういう大きな影響力を持っていたのだ。そんな事が書いてあります。それから彼は自分なりに、こうした問題に対して必死に取り組みます。コア・バリューを社員に普及していくことを念頭に置いていた彼は、社員からの声・期待に全力で応えようとするのです。

そのひたむきな姿にとにかく感動します。そして、失敗ばかりするマーク・ベニオフさんに、ファンタジーの中の人間らしさを感じることになり、とてもいとおしく思えるのです。問題は細部に宿る。常に意識しなければ、こうした問題の改善にはつながらない。そういう思いから、セールスフォースには社会貢献や平等に関する、企業独自の文化や仕組みが沢山作られていきます。読み進めているうちに、セールスフォースで働いてみたいという気持ちに駆られていきました。

この本は、いわゆるビジネス的な戦略よりも、文化の醸成に重きが置かれていると思います。僕が思想書みたいだなぁと感じる部分はそこです。人類が少しでも良い方向へ進んでいくように、今ある問題を見極め、出来る範囲で解決しようとする。そういうマインドを持ち、トレイルブレイザーが増えていけば、この世界はもっと良くなっていく。そんな思想に満ちていると思います。

思想書入門としては、文章も非常に読みやすいし、とてもオススメだなと思いました。アメリカが抱えているリアルタイムな問題にも触れられていて、非常に勉強になります。

この本を読んで思ったのですが、アメリカ人は政治への関心が強いと思いました。大統領制・国民投票のため、選挙自体が盛り上がるからでしょうか? 国民それぞれのイデオロギーがはっきりしている感じがします。もちろん、全員がそうじゃないのでしょうけど、多くの人が、とにかく国を思っていて、よくない事はよくないと言っている。そんな感じがするのです。

僕はこの状況をこの本から感じ取った時に、これはとても素敵な事で、ある意味羨ましいと思いました。というのは、僕の目から見てですが、日本ではあんまり見られない光景だなって思ってしまったからです。

日本の政治家、ここ最近好き放題やっているじゃないですか?

あれって、国民の監視の目が弱いからですよね。政治的な調整とか、政治的な配慮も、政治家にとっては大事なことだし、民主主義においては必要な事なのかもしれないですけど、ちょっといたずらが過ぎるような気がします。これって、政治に対する知識・関心の無さ、それから国民の監視不足が要因になっている気がするんです。もちろん、それだけが原因ではないと思うのですけど、要因であることは間違いないですよね。報道が断片的なのと、コンテンツが溢れてしまったことも作用しているのかもしれません。

トレイルブレイザーを通して、社会貢献や国の動きに関心を持つことの大切さを学びました。こういう部分から意識改革していけば、日本でも大きなイノベーションが生まれるのかもしれない。そんな期待を感じずにはいられません。

トレイルブレイザー、学ぶことの多い本だと思います。今から3年前の本ですが、小説、あるいは思想書として読めば全然古くありません。ここには政治の向き合い方、世界を良くするために必要なもの、企業としてイノベーションを起こすことの重要性が散りばめられています。何より、マーク・ベニオフさんの人柄に感情移入できて、お話そのものがすごく面白いです。

すごくオススメですので、読んでみてほしいです。アマゾンでポチればすぐに購入できると思います。

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