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【読書感想文】五木寛之「青い鳥のゆくえ」

こんばんは!
人間は生きていかなければなりません。小栗義樹です。

本日は、読書感想文を書かせて頂きます。僕が読んだ本、好きな本を題材にして、好きなことを自由に書いていく試みです。

本日の題材はコチラです。

五木寛之「青い鳥のゆくえ」

です。

五木寛之さんが書いたエッセイ本です。日常の何気ないキッカケから、様々な事を調べていき、最終的には現代をうまく捉え、そんな現代をどのように生きていくべきなのかをまとめています。

読み応えのあるエッセイのお手本のような文章です。

僕が大好きな五木寛之さんの作品「雨の日には車をみがいて」でも思う事ですが、五木寛之さんは、時代毎の象徴から日常までを捉えて形にする作品が、本当に魅力的です。

内容とか設定以前に、文章そのものが魅力にあふれているからだと思います。淀みのない美しい文章で、かっこいい表現です。今回の青い鳥のゆくえも、タイトルからずっと綺麗な表現ばかりでした。

内容以前に、文章が人生を肯定しているような感じがしました。

この本は、青い鳥という戯曲を調べるキッカケがあったという所から始まります。青い鳥を幸せの象徴としている銀行のポスターのキャッチコピーを見かけて、そもそも青い鳥というのがどのような内容なのかを調べてみるのです。

すると、原作である青い鳥は、兄妹が幸せの青い鳥を見つけてハッピーエンドという物語ではなく、青い鳥が飛び立ってしまい、兄妹に「青い鳥を探してください」とお願いされる部分で物語が終わるということが判明します。

五木さんは、物語の真相とポスターで見た青い鳥預金のキャッチコピーを総合して、時代を捉え、現代の生き方を美しい文章で表現します。

文庫本の初版が平成11年ですから、令和である現代とは、少しだけ価値観が違うのかもしれません。しかし、読んでいると非常に感心してしまうような言葉が沢山散りばめられています。

幸せの青い鳥預金って、ちょっと浮かれている言葉に感じますよね。幸せとか希望とか、そういうものを漠然としたファンタジーのように捉えているなと感じます。

本来、幸せや希望というものは能動的なものだと僕は思います。誰かに委ねて得られるものではないということです。預金だって、選択肢に含まれてもいいものだと思います。でも、選択するのは自分ですから、納得いく解答を出した上での選択でなければ、幸せになることも、希望に浸ることもできないと思うのです。

青い鳥という戯曲を描いたメーテルリンクは、この物語の中で「幸せを他人や何かに委ねてもつかみ取ることは出来ないよ」というメッセージを込めたのではないかと感じます。それはこの本の中で、ものすごく虚無的ななにかという言葉で表現されています。虚無という言葉を読んだとき、大きなドームのような建物を思い浮かべました。周囲のハリボテばかりが立派に見えるて、肝心の中身は真っ暗で何もない。そんな大きな建物です。

社会も個人も、ほとんどがそんな感じではないでしょうか?

青い鳥のゆくえが出版された当初は、これからそういう風になっていくかもしれないという予兆や可能性にフォーカスされていますが、ここ最近は、ずっとそんなような状態が続いているように思います。

人とのつながりはほとんど切れましたし、知識の積み上げばかりを評価しようとしますし、考察しようとしたり主体的であろうとすれば、周囲からは違う人種を見るような目で見られてしまいます。誰もが自尊心を防衛するために、見えない敵を口撃し、ついには過去をほじくり返してまで、正義の名のもとに功名心を高めるようになってしまいました。

行動せずに半端な評論をする。汗をかかずに達成感を得ようとする。それはまさに、ものすごく虚無的ななにかなのではないかと思うのです。

この本を読んで、青い鳥は飛び立ってから、何年も見つからないどころか、その存在すらも忘れ去られて、より遠い存在になってしまったように感じました。

この本が出たときに子どもだった僕のような世代も、今は大人になりました。僕は、ふと青い鳥という戯曲や青い鳥のゆくえが託した希望に向かう一歩を踏み出してほしいというメッセージを体現出来ているのかを考える事があります。

出来るだけ中身が空っぽの豪華な財布にならないようにしたいと考えてはいるものの、そういう仲間を増やすための活動をしているのか?自分はそれを伝えているのか?と考えて、疑問に思うことがあります。

青い鳥のゆくえが全然わかりません。もっと年齢を重ねたら、姿を拝むことは出来ずとも、影くらいは見ることが出来るのでしょうか?

青い鳥が近寄りやすくなるような社会を、せめて自分の周りだけでも構築していきたいなと思っています。大切なのは1歩を踏み出すことだと思うからです。

少しネガティブな印象を与えてしまう文章になってしまったかもしれませんが、本自体は本当に読みやすくて美しいです。優しくて安心する世界に満ちていると思います。

気分転換にも最適ですし、価値観を変えたい人にもうってつけの一冊です。

興味があれば読んでみてほしいなと思います。

ということで、本日はこの辺で失礼いたします。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
また明日の記事でお会いしましょう!


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