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イギリスで見つけた「エシカル」なもの 第2弾 【放し飼い 鶏・卵】

イギリスのスーパーで売られている卵の大半には「Free Range(放し飼い)」と表記されています。


この記事では、日本ではあまり目にしたことのないこの表記が、イギリスで多く見られる理由にせまります。


14歳が始めた「にわとり解放運動」


2016年、イギリスの大手スーパーチェーン「Tesco」に一通の手紙が届きました。

手紙の送り主のルーシー (14歳)は、

「Tescoが販売する卵は、狭いケージの中で日光を浴びることなく一生を終える鶏が生んだものだ」

と、その養鶏環境の残酷さを訴えました。

この訴えは、Change.org というキャンペーンサイトで 278,791人の賛同を得、Tescoに「2025年までに、小さな柵に鶏を閉じ込める非倫理的な養鶏をやめる」と約束させるに至りました。

これを受け、Sainsbury’s、Marks and Spencer、Aldi など、その他大手スーパーチェーンも、2025年までに Free Range 卵の販売へ完全に移行させると発表しています。

このように、社会の問題に気付き「声をあげる人」、「賛同する人」、そして「それを聞いて変化できる組織」の三拍子が揃い、イギリスでは「にわとり解放」が進んでいます。



Free Range チキン、違いは?


卵ほど Free Range が定着しているとはまだ言えませんが、イギリスのスーパーには Free Range 鶏肉も売られています。

スーパーで売られている卵の約8割が Free Range なのに対し、Free Range 鶏肉は全体の約2割にとどまっています。

Free Range 鶏肉の値段は £1=160g、そうでない鶏肉は £1=143g、下の写真の2パックの差額は75円ほどです。


イギリスに来たばかりのころ、私は、安価な Free Rangeではない骨付き鶏もも肉を購入し、その異様な柔らかさと骨のもろさに驚きました。

渡英前の2年間、中米グアテマラで、庭を駆けまわっている鶏をさばいて食べる生活をしていたのですが、

イギリスで何気なく買った鶏肉は、グアテマラで食べていた骨太の身の締まった鶏肉とは全く異なるものでした。

手で簡単にちぎれる肉と、力を入れなくとも手の中でバリバリと割れる骨から、その鶏がきちんと運動できる環境にいなかったことが容易に想像できました。

別の日に Free Range 鶏もも肉を買い、違いを検証してみたところ、

Free Range 鶏ももは、グアテマラで食べていた鶏に近い身の締まりと骨の強さでした。

簡単にちぎれることもなく、骨が砕けることもありません。

また、茹でた時に出るアクも、Free Rangeではない鶏ももを茹でた時より少量でした。

育った環境でこんなにも差が出るのかと、驚きました。


ちなみに、Free Range かつオーガニック飼料で育ったものは「オーガニック卵・鶏肉」として売り出されます。

養鶏方法は細かく分けられており、エシカル順に並べるとこのようになります。

Laying Cage (ケージ飼育) < Barn (納屋飼育) < Free Range < Organic


日本の食品は?

日本の鶏の92%はケージで飼育されています。

鶏1羽あたり20×20cmのケージで飼育されており、密集し身動きが取れない状態のため、病気にもかかりやすくなります。

イギリスやEUで既に浸透している「鶏のFree Range (放し飼い)」の日本での認知度は低いと言えます。


日本の食品が、世界で一番信用できる。

私は、小さい頃から、何の根拠もなくそう信じていたような気がします。

でもそれは、大きな思い込みだったようです。


2年前、北海道の農家さんとお話する機会がありました。

「日本の食糧庫」と呼ばれる北海道でさえ、すべての過程をオーガニックで育てている農家はかなり少数で、大部分の農家は農薬に頼っているとのことでした。

また、酪農においては、飼育環境に関係なく成分基準さえ満たしていれば納品できるため、なるべく効率的に多くの乳を採ろうと、放牧せずに搾乳小屋と厩舎の往復をさせる近代施設の導入が進んでいるそうです。


このような北海道で伺ったことや、海外生活を通して、私は「日本の食品がどのように作られているのか意外と知らなかった」ことに気が付きました。


見えないところで何が行われているのか、常に疑問を持って目を光らせ、問題を見つけたら声を上げるということが、よりエシカルな暮らしに近づくためのカギとなりそうです。



※前回の記事はこちら


参照


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