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芙蓉歌句集

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わたくしが詠みました短歌・俳句をこちらでご紹介させて頂きます。
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2019年6月の記事一覧

鳩さへも鳴かずにをりて梅雨の月

鳩さへも鳴かずにをりて梅雨の月

ごきげんよう。
6月29日は作曲家の滝廉太郎さまの忌日ということでぱらぱらと楽譜を捲っていたのですけれども、そうしましたら『鳩ぽっぽ』という項目がありまして驚きましたわ。

あの有名な童謡が滝さまの作曲なのかと思ったのですけれどもよく見ましたらそれとも違うようでして――、謎を見つけました。

よく耳馴染みのあります「ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ――、」というのは小学唱歌の『鳩』という題でして、わたくし最初

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四阿の遠きを眺む菖蒲かな

四阿の遠きを眺む菖蒲かな

ごきげんよう。月日が流れるのは早いもので、今年ももう半分が過ぎてしまいますわね――。
七十二候もお正月から丁度半分。三十六候目「菖蒲華(あやめはなさく)」となりましたわ。花の中心に縞模様のあるのがアヤメの特徴ですわね。
梅雨から盛夏への橋渡しをするようなこの季節の主役のようなお花ですわ。

一年の節目というのは色々とありますけれども、分かりやすいのは4月の新学期でしたり、夏休み明け、社会人の方です

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夕立や仕舞ふ小判のしとどなり

夕立や仕舞ふ小判のしとどなり

ごきげんよう。6月27日は明治4年に新貨条例が制定されまして、「圓」という単位が本邦で初めて採用されることになった記念の日だそうですわ。

御一新後、新たな国造りに向かう中で決まりましたこの制度――、江戸の「一両」を新貨「一円」とすることで分かりやすいものとなりましたわ。

ちなみに昨今の「一円」で何が出来るかと申しますと、わたくしでしたら『少女画報』の半年分の前金にいたしますわ。
月刊の少女雑誌

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鰹にも弱きものありはたゝ神

鰹にも弱きものありはたゝ神

ごきげんよう。本日6月26日は「雷の日」だそうで、その由来は延長8年(西暦930年)に平安京清涼殿に雷が落ちたことだそうですわ。
今ですと自然災害で終わってしまうのでしょうけれども当時は菅原道真公の祟りとして、京の町全体を巻き込んだ大事件になったそうでしてよ。

さてこの京を襲った雷。落ちたのが「清涼殿」と申します天皇の居所でしたので「清涼殿落雷事件」と言われておりますわ。多くの公卿の方が出入りす

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夕立や馬車鉄道の音高き

夕立や馬車鉄道の音高き

6月25日は明治13年に東京馬車鉄道が開業した日だそうですわ。
新橋―日本橋間ですから距離としてはそんなに長くはないですけれども、この日から東京を網の目のように走る市電の歴史が始まりましたのね。

東京馬車鉄道は開業当時お馬さんが200頭ほど居たそうなのですけれども、その後路線が増えるに連れて頭数も増えまして、電車に切り替わる明治30年代頃には2000頭を超える時期もあったそうですわ。
2000頭

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林鐘の慈雨降る四季や小夜曲(アイネクライネ・ナハトムジークで10句乱詠)

林鐘の慈雨降る四季や小夜曲(アイネクライネ・ナハトムジークで10句乱詠)

ごきげんよう。本日6月24日は音樂の音を「ドレミファソラシド」で表すという方法が考案された日だそうでしてよ。
11世紀にイタリアの音樂教師グイードさまが発表された方法が元だそうで、それから今に至るまでずっと利用されているそうですわ。凄いですわね。

それにしましても「ドレミ」というのはイタリア語の由来でしたのね――。

昨今では音樂を習う際には必ず五線譜で「ドレミ」を覚えるのが最初ですけれども、そ

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アイネクライネ・ナハトムジーク10句乱詠

アイネクライネ・ナハトムジーク10句乱詠

前句付7句(アイネクライネ・ナハトムジーク) 俳句のやうなもの3句

林鐘の慈雨降る四季や小夜曲
アイネクライネ・ナハトムジーク

明易や背筋伸びたる蓄音機
アイネクライネ・ナハトムジーク

五線譜の伊独日英サンドレス
アイネクライネ・ナハトムジーク

親戚の集ひて唱ふ夏念仏
アイネクライネ・ナハトムジーク

鶯音入る蓄音機滲みたる
アイネクライネ・ナハトムジーク

サリエリの震へし指や虎が雨

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河骨の影ほど強き黄色かな

河骨の影ほど強き黄色かな

今日パラパラと歳時記を捲っておりましたら、面白い名前の草本に行き当たりました。そのお名前が「河骨」と言うのです。

綺麗な水に咲く黄色くて小さなお花なのですけれども、それに似合わず白くゴツゴツとした根っこを持つそうで、それで「河骨」だそうですわ。
お花は作ったように小さく、黄色くて可愛らしゅうございますわ。

最近よく公園を散策するのですけれども、名前のわからない草木ほど惹かれることがありまして、

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夏至の日や音遠かりし日向雨

夏至の日や音遠かりし日向雨

ごきげんよう。
本日は夏至ということで、お昼が最も長い日でしたけれども梅雨雲りの一日でしたわ。

時折陽光が顔を覗かせかと思いましたら、次の瞬間にはまたぱらぱらと湿った雨が降ってまいりますから、日傘を持っているのか雨傘を持っているのかわからなくなってまいりました。

洋傘は元々、日傘として用いられていたのが最初だそうでして雨傘よりも大分歴史が長いそうですわ。

和傘の場合は室町の頃より雨に用いられ

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明易し炎火を纏ふ本能寺

明易し炎火を纏ふ本能寺

ごきげんよう。
本日6月21日は、1582年に本能寺の変が起きた日だそうですわ。
旧暦ですと天正10年6月2日、最早語るまでもない戦国史に残る大事件が起きた訳ですけれども、このような蒸し暑い季節の出来事でしたのね。

最も夜の短い夏至の時期ですから、ということは本能寺の変も「短い夜」に時代が大きく動いたのですわね――。明け方ほとんど日の出の時間に討ち入りまして朝には終わっていたそうですわ。

なん

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まどろみや背を預けたる夕端居

まどろみや背を預けたる夕端居

ごきげんよう。今宵は端居にて「何もしない」をしてまいりました。
その「何もしない時間」の中でいくつか俳句を拵えてみましたので、こちらに掲載したく存じますわ。

このような訳のわからない趣向にお付き合い頂きました皆さま、まことにありがとう存じました。俳句に向き合うための良い時間になりましたわ。

まどろみや背を預けたる夕端居
麦星やかうかうと照る深き潮
行く傘やひるがほの咲く通学路
緋目高の背中ほど

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茅の輪組む鳥居に夏の服を着せ

茅の輪組む鳥居に夏の服を着せ

ごきげんよう。
今日はわたくし神社に立ち寄りまして「茅の輪潜り」をしてまいりました。
ちょうど今の時期、鳥居の辺りに茅で編みました大きな輪っかがあるのですけれども、これを8の字に通りますと半年間の穢れが落ちるとされておりますわ。

ちなみにこの輪っかになっている茅は「持って帰ったほうが良い」という説と「持って帰ってはいけない」という説がありますのよ。

どちらも験担ぎなのですけれども、わたくしは「

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梅の実の色よりなほ爽やぐ香よ

梅の実の色よりなほ爽やぐ香よ

ごきげんよう。季節が進むのは早いもので気がつけば七十二候「梅子黄(うめのみきばむ)」になっておりました。
梅雨のことを文字通り「梅の雨」と申しますように梅が黄色く熟す季節。これから漬けたり干したりする方もいらっしゃるのではないかしら。わたくしは砂糖漬けが好きですわ。

早速話が脱線する上にもう少し先の季節の話なのですけれども、わたくし同じ砂糖漬けでも「摘果桃」が大好きなのです。

おせち料理で「青

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麦星や鹿鳴館の煌々と

麦星や鹿鳴館の煌々と

ごきげんよう。
本日6月12日は日比谷にあります鹿鳴館にて「バザー」と言うものが本邦で初めて開催された日だそうでしてよ。

明治17年、大山巌大将の奥さま捨松公爵夫人の呼びかけで開かれましたチャリティーバザーはその目新しさに大変話題を呼びまして、この収益金によって後に看護婦のための學校が建てられましたわ。

そもそもなぜ鹿鳴館でバザーが開かれたのか申しますと「鹿鳴館の花」と呼ばれました捨松公爵夫人

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