氷山や頂掬う夏祭り
製品は無事か肩濡らす夏雨霏霏
もつ鍋と冷酒と独りゐる博多
沈む麺探る箸先油照
小正月 背に隙間風 肩うずき
集う半ズボン作戦会議の日
風を漕ぐぶらんこを漕ぐ子の瞳
氷華の夢 銀世界彩る 謎深し
花が舞う 桜の宇宙 地に土筆
呼び名決めほころぶ君は杏のごと
取り込みて洗濯物と亀虫と
婚姻届筆致逞しき初夏
冷房の「冷」が届かぬ朝ラッシュ
チャイム後や生徒らの汗跳ねる朝
迎え梅雨行列よける娘らの足
鬼灯(ほおずき)や 朱色になりて 取る娘
知らぬ間に かりがね寒き 寮の窓
梶の葉へ 和歌を書きたり 月を見る
面接し 火照る頭で 寝待ち月
芍薬の 根を労わりて 土をかけ
ふるさとが最上の町戻り鷸
雪しまき この世の白さ 舞う光
悶々と 白玉星の 花を見て
薄曇り 秋蒔き大根 栃の花
寒空の 真夜中の月 傘かかり
母持たす新茶飲み干しよーいドン
稲と蘆 山の黒影 虫送り
高き夢 星の貸物 縫て織り
邯鄲(かんたん)へ 始皇帝の地 水写し
萱刈る(かやかるる) 地に残りては 枯れ色に
山椒の 丸き実を煮る 底冷えに
森抜けて ガードレールに 田村草
鶉合(うずらのす) 地のくぼみから 口広げ