色々、面倒だなあ
休日。
女性二人。
「なんかさあ…
最近どうかと思うことがあるの」
「急に何?」
「世の中、便利じゃない?
昔の人の話からすれば、
ものスゴく便利らしいでしょ?」
「そうなの?」
「だってスマホのない世界って、
終わりじゃない?」
「終わりではないし。
それに私…
そんなにスマホに依存してないよ」
「あなた、終わってるね」
「終わってないし!
23才はこれからだし!」
「そう?」
「あんたもでしょ?!
同級生なんだから!
それで…
便利がどうしたの?」
「そうそう。
何でも便利になったけど、
それでも面倒だなって、
思うこと多くない?」
「どういうこと?」
「よく考えれば簡単なことなのに、
その場では面倒だって思っちゃうこと」
「ん?
よく分かんない。
例えば?」
「そうね…
私の部屋って2階じゃん」
「そうだね」
「でもたまに、
お母さんに1階に呼ばれんの。
下りてきて~って。
階段下りるの面倒じゃない?」
「ああ~それはちょっと分かる。
ドラマのいいところで呼ばれたりすると、
動きたくないよね」
「でしょ?
でもよく考えて。
たかが20mくらいでしょ?
2階から1階って」
「そうね。
大体それくらいかな?」
「不思議じゃない?
うちら一駅とか歩くよね?」
「するね。
でも、それは状況が違わない?」
「そう?
恵比寿から渋谷まで、
平気で歩くのに、
家の中の移動を面倒だと思うんだよ。
おかしくない?」
「いや、それは気分の問題でしょ?
気分が良ければ行くんじゃないの?」
「私は断固、1階に下りたくない」
「それはあなたのさじ加減じゃあ…」
「だってお母さんの愚痴、
つまらないんだも」
「そういうこと!?
じゃあ…LINEにすれば?」
「お母さん…
顔見て話したいって」
「面倒な親子関係」
「でも聞いてあげると…
私の晩ご飯だけ、
グレードアップするの」
「完全な餌付け」
「でもやっぱり下りるの面倒だし…
でもお母さんの愚痴も聞いてあげたいし…
でも行きたくない気持ちは強いし…
でもおかずが一品増えるのは嬉しいし…」
「三角関係時の乙女の心理」
「でもいつまでも、
このままじゃいけない!
はっきりさせなきゃって!」
「三角関係にのっかってきた」
「そしてついに…
解決方法を見つけたの!」
「どんな?」
「私の部屋から下の階に、
ポールをつけてみたの」
「ポール!?
ポールってあれ?!
消防署にあるすべり棒ってやつ?!」
「そう、それ!
それつけてからは、
全然、呼ばれても、
1階に下りるの苦にならなくなったの。
滑るの楽しいから!」
「そうなの…
まあ本人がいいと言うなら、
それでいいけど…。
それって…
床に穴空いてんだよね?
その穴越しに直接話しても、
いいと思うんだけど」
「何言ってんのよ!
首が疲れちゃうでしょ?!」
「そうなんだ…。
もう下りること前提なのね」
「それでお母さんの愚痴を、
無事に聞き終わったら、
またポールを登って自分の部屋に戻るの」
「登らなくていいよね?!
そこは階段使おうよ!」
「あとね…
朝起きるのも面倒だよね」
「話し終わり?!
さっきのは解決済みなのね」
「朝…起きたくないよね~?」
「まあ朝は確かに、
布団は温かいし、
だるくて起きたくない…かな?」
「起きて身支度して、
会社に行くのも面倒だよね」
「そうね。
着替えてメイクして髪セットして…
そこからの通勤ラッシュは疲れるね。
それに結構、歩くから」
「でも起きるってさ…
たかが…
体を90度、起こすだけだよね?」
「まあ…そうだね」
「だってジムやヨガでは、
あんなに体をガンガン動かしたり、
捻ったりするじゃない?」
「それは…
意気込みが…
違うんじゃないかな?」
「でも会社帰りで疲れてるし、
そのままお家に帰って、
ビール飲んだ方がいいのに、
体を動かしに行くじゃん?
朝の90度を渋るのに?」
「そう言っちゃうと…そうだけど」
「会社も駅まで着けば、
電車が運んでくれるんだよ。
よく考えたら便利だし楽じゃない?
競歩で出社ってわけじゃないんだから」
「それやるのは、
選手の人ぐらいだね」
「だから私…
またまた、解決方法見つけたの」
「どんな?」
「在宅ワークにしてもらったの」
「それいいじゃない!
それはいい方法!
それなら朝もゆっくりできるし、
起きるの面倒ってこともなく、
自分のペースで起きれるじゃない!」
「でしょ?
なかなかいいアイデアでしょ?
でもちょっと問題もあるの」
「問題?」
「たまに…
早く出社する人がいて困ってるの。
もうちょっと、ゆっくり寝たいのに…」
「??」
「課長とか係長は、
いつも10時ぐらいに、
家に来てくれるんだけどね」
「それ在宅ワークって、
言わないから!!
そっちの方が面倒くさいわ!!」