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Nana
2018年3月1日 15:11
しばらく目を閉じて、思いっきり目を開ける。そのとき飛び込んでくる景色はしばらく忘れられない。きっと感情もおなじ。しばらく蓋をしていて、やっと開けて飛び込んだものがあったとして。それはとてつもなく愛おしいものになる、なんて思うのだ。パラパラと分厚い本をめくる。「ストップ!」声が鳴り響いて止めたページの宿題を解く。“今日の宿題”という本をランダムにひらきながら紐解いてゆく過去。たくさんの問題と
2018年3月7日 11:38
どうしようもないことに、いつまでも浸っていたってなにも生まれない。声をあげて上を向いた瞬間、霧の中に光が差した日。ふと、そんなことを思った。昨日R-1ぐらんぷりで優勝した濱田祐太郎さんは盲目の漫談家。ネタの中には目が見えないことにまつわるエピソードが連ねられて、それがおもしろおかしく語られる。 賞金を意味のないことに使いたいんですよね、例えば3Dテレビとか買って、だまされへんぞ!とか言い
2018年3月4日 20:53
改札をくぐって右、「右側通行にご協力ください」、地上へ出て右へまっすぐ。坂をのぼっていくほど気持ちが高鳴るのは、この坂のせい?それとも、今から行くお気に入りの店が、わたしのすきな“右” をくり返して、やっぱり右側に見えることが分かっているからだろうか。右が好き、というとほとんどのひとが不思議そうな顔をする。右側に好きなひとをみながら歩くのが好き、というとさらに不思議そうな顔をする。理由なんてな
2018年2月15日 11:56
「あの日から、進んだつもりでいた。でも、なにも変わっていなかった」のこりのカクテルを飲み干して、彼女は続けた。どれだけ私が幸せになっても、今私が幸せだとしても、彼のことを完全に忘れる日は来ないかもしれない。むしろ来てほしくない気もする。あんなにひどいことをされて、もう嫌いになってもいいはずなのに。一年も会わないうちに、彼女は私の知らない服をきて、知らない顔を持っていた。綺麗に施されたメ
Hayakawa Books & Magazines(β)
2017年12月15日 15:48
ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞ほか多数の文学賞を受賞したコルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』(谷崎由依訳)がついに発売されました。発売を記念し、本作の第一章「アジャリー」を特別公開いたします。19世紀のアメリカ南部、ジョージア州。奴隷として働く農園から逃げないかと誘われた少女コーラは、一度は断るが……。(書影をクリックするとAmazonページにジャンプ)アジャリ
栃尾江美(とっちー)
2017年10月28日 17:43
あなたにとっては軽い気まぐれのキスだったのかもしれないけれど、私にとってはそうじゃなかった。あの日からずっと私の心は止まったまま。 いつか気持ちが冷めるだろうと思っていたのに、「今日も好きだった」って、毎日、負けたかのように思う。 あの日、電車での帰り道、あなたがバッグから取り出した一冊の本が、今も私の本棚にある。私たちは同じ作家のファンで、あなたは発売したばかりの文庫本をちょうど読み終えた