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フォレルスケット・ウィークエンド

しばらく目を閉じて、思いっきり目を開ける。そのとき飛び込んでくる景色はしばらく忘れられない。きっと感情もおなじ。しばらく蓋をしていて、やっと開けて飛び込んだものがあったとして。それはとてつもなく愛おしいものになる、なんて思うのだ。

パラパラと分厚い本をめくる。
「ストップ!」
声が鳴り響いて止めたページの宿題を解く。“今日の宿題”という本をランダムにひらきながら紐解いてゆく過去。たくさんの問題と、答えのない回答をたどりながら重ねていく紙。

夢を追ってここにきた。わたしは自分の道を自分で決めたけれど、それだけじゃ走れない。エンジンをかけて走り出せるのは自分だけ。でも、そのエンジンの持続性はきっとだれかの応援によるものなのだ。その安心をだれよりもくれたひとたちを、わたしは新しい日々のはじまりに添えた。

すべてがこわれてしまったとき、それでも大丈夫だとおしえてくれたひとたち。はじめて出会った日のことを、いまでも鮮明におぼえている。なにかがはじまる瞬間はぜったいにどこか特別で、でもそう思ってもすぐには言語化できない。だからしばらく自分のなかで、居場所をさがしながらふらふらと心地よく存在する。そしてなにかのきっかけでその居場所がきまったときおもうのだ。
“ああ、これが運命か”

暗闇は、消えない。暗闇をかき消す色なんてない。でもそれと同時に分かっているのだ。暗闇に差すひかりはちゃんとあって、そしてそれが少しずつ闇を砕き、ちいさくしてくれるということを。

ひかりをくれたひとたちと、宿題を解いていく時間。あまりにもいとおしく、胸がぎゅっと、心地いい。

宿題を解くために、またあたらしい本を探した。そして偶然がえらんだ先で出会った絵本に書かれてあった言葉で、わたしたちは確信したのだ。最高の週末だったということを。迫るのは甘い鼓動、見えるのはあたたかい肯定。ほら、運命というか、導きってあると思ってしまうのよ。


あなたはまだ経験したことがない?それとも、もう何度も味わった?
どちらにしても、すてきなことです。そして、forelsketは、なんでも思ったことを率直に伝えることから、一番起こりやすくなります。

ノルウェー語/形容詞
FORELSKET : フォレルスケット。語れないほど、幸福な恋におちている。

(引用:翻訳できない世界のことば

#コラム #小説 #エッセイ #物語 #本

読んでくださってありがとうございます。今日もあたらしい物語を探しに行きます。