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最近の記事

近未来の生活に焦点が当たってしまった『本心』

わたしは平野啓一郎の小説が好きだ。活字で読むときに淡々と紡がれる文章が好きで、それなのにこちらの感情が持っていかれてしまう瞬間、いわゆる行間というものが世界を作ってくれる。とはいえ結局のところ、激情型の文章も好きなんだけれども。平野先生の本は結構好きなほうだと思う。 『ある男』のときも思ったのだけれど、平野先生の本を映像化するのはとても難しい。映画として見たら面白いんだろうし、小説とは別物だということも理解しているのだけれど、先に小説を読んでしまう以上、どうしても比べてしま

    • 信念を貫き続ける音楽家の姿『スパークス・ブラザーズ』

      わたしはスパークスが好きだ。きっかけは着物を着た女性のジャケットだったけれど、アメリカらしからぬ個性的なサウンドに、アルバムごとに変わることを恐れない姿勢、何事にも惑わされることのない信念、なんだかかわいい個性的な兄弟、というかロン兄さん。フジロックで初めて観たときに、一気に好きになってしまったのだった。 実はライブも結構見ているのだけれど、2022年のソニック・マニアで見ていたら、友人に「好きだよね〜。フランス人だっけ?」と言われ「アメリカ人だよ」と言ったら「マジで?」と

      • まるでドキュメンタリーかのような緊張感『対峙』

        わたしはドキュメンタリーが好きだ。真実を知るためというわけではなくて、結局のところ、ドキュメンタリーも作り手の意図が反映されているのだから、ただ、フィクションの創造力から得るものとは別の、自分想像力が働くような気がして悪くないと思うからだ。 この映画はドキュメンタリーではないのだけれど、あまりにもリアルな役者たちの演技に途中、あれ?ドキュメンタリーを観ているんだっけ?と思ってしまうような作品だった。わたしは家族を殺されたことも、殺人を犯した家族がいるわけでもないので、両者の

        • 全く理解できない気持ちと存在しない答え『月』

          わたしは事件について調べることが好きだ。それは地下鉄サリン事件から始まっているのだけれど、きっかけは単純で、ニュースを見ていて「え?ちょっと全然わからない」と子どもながらに思ったからだった。それまで起きた事件は「へえ、大変だね」と言っていただけだったのにも関わらず、あの時、新興宗教の信者たちに「全く理解できない。どういうこと?」と思った経験は、言葉にすると「衝撃」というのかもしれない。 どういうことなんだろう、なんでなんだろう、から始まって色々調べてみると知らないことを知っ

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        記事

          他人のことも自分のこともわからないままでいい『アンダーカレント』

          わたしは銭湯が好きだ。そしてサウナが大好きだ。「銭湯が舞台だって?」と、それだけで見てしまうものだし、銭湯が映るだけで癒されてしまうものだ。お風呂って人を幸せにするから幸せな映画かと思いきや、全然違ってとても深い内容で、まさに人をわかるとはどういうことなのかというテーマで話は進んでいく。 わたしは人を理解しようともしないし、理解してもらおうともしないタイプだけれども、それは人を信用しないということとは違って、信用している人は数人いる。人に助けてもらうこともあれば、人を助ける

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          人生には思い切りってやつが大事『白鍵と黒鍵の間に』

          わたしはジャズバーが好きだ。大学生の頃、チェーン店の飲食店やコンビニのバイトにことごとく馴染めず、ふらっと入ったジャズバーでバイトを始めたところ、卒業まで続けることができた思い出もあって、感慨深い。もちろん価格も高いし、敷居も高いし、でも音楽が好きならたまらない最高の空間だ。 この映画は南博さんのエッセイが原作ではあるのだけれど、映画化するにあたってだいぶ脚色されていて、非常に難しい作品だったような気がした。原作を知らないひとが観てわかるのだろうか、どういう意味?って思わな

          人生には思い切りってやつが大事『白鍵と黒鍵の間に』

          今いちばん好きな日本の音楽『乱反射』ペトロールズ

          ◾️今日の音楽『乱反射』ペトロールズ(2023) わたしはペトロールズが好きだ。今のところ、日本でいちばん好きなアーティストで、音楽はよく聴くほうだけれど、ライブに行ってまで楽しみたいと思う日本人アーティストは彼らしかいないといっても過言ではない。長岡亮介ももちろん好きだけども、だからといって椎名林檎や星野源も、ソロも見に行くことはなくて、ボブとジャンボと3人のペトロールズしか、わたしの足は動かないのだった。 長年、ペトの曲を聴くには会場でCDを買うしかなかったし、ライブ

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          プロレスという知らない世界の感動『極悪女王』

          わたしはインドアライフが好きだ。外に出かけることも好きじゃないし、スポーツはするのも見るのもほとんどしないし、健康のためにオンラインでピラティスやヨガはするけれど、できるだけダラダラと映画やドラマを見ていたい。それは仕事が外を飛び回る種類のものだからということも影響しているのかもしれないけれど。 女子プロレスなんてまったく知らない世界だし、ネトフリシリーズが好きだからと言って、見るのか見ないのか、どうなんだ!という感じもあったんだけれども、結局見ずにはいられなかった。プロレ

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          他人のわたしたちが無力すぎることを知る絶望『ミッシング』

          わたしは一人暮らしが好きだ。好きだ、というと少し語弊があるかもしれない。一人暮らししかできない。同棲やルームシェアなどを試してみたこともあるわけだけれど、どれもうまくいかなくて、そのときに感じた誰かと同じ空間にいることの苦痛さはどうやら尋常ではないらしく、友人たちは「ひとりの時間がほしい、のレベルをはるかに超えている」と言う。 そうは言ってもかつては実家で家族と過ごしていたわけだから、母親に「いつからひとり好きなんだろうか」と聞いてみたところ、「4歳のころに突然ひとりで寝た

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          自分がメンタル崩壊した頃を思い返した『夜明けのすべて』

          わたしはゆるやかな働き方が好きだ。側から見るとバリバリ働くキャリアウーマンなんだろうし、仕事が嫌いなわけでもないけれど、実際のところは効率が良いから残業はほとんどしないし、有休は好き放題取るし、仕事場を一歩出たら一瞬で仕事のことを忘れることができるという特技がある。昇進試験のオファーはつい先日も何度目かの断りを入れたし、そこそこ成果を出して安定した給与をもらい、どこに行くでもない普通の生活を維持できればいいというモチベーションだ。 悩んだり、眠れなかったりしないのは、欲がな

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          豚とか犬とか人とか種類なんてどうだっていい『オクジャ okja』

          わたしはThe Smithが好きだ。昨年、モリッシーの来日公演を見に行き、久しぶりに興奮して涙するライブだったし、ライブ会場に"Meat is Murder"の類が大々的に展示されていても、「本当に肉食べなくてもその筋肉体型になるの?」という疑問を払拭できなくても、全然気にしない。音楽が好きなのと、そのミュージシャンの思想が自分と合わないことは関係ない。わたしは肉を食べるし、スミスも聴くのだ。 人に勧められて見ようと思っていたポン・ジュノ監督のちょっと前の作品をようやく見た

          豚とか犬とか人とか種類なんてどうだっていい『オクジャ okja』

          ダメなバディのゆるゆる刑事ドラマ『NO ACTIVITY』

          わたしは刑事ドラマが好きだ。刑事ドラマというのは犯人が誰かという謎解きよりも、バディの物語という意味で好きなのであって、そのバディがどれだけ魅力的かというところが重要だ。このドラマのバディはとても素敵だ。すごくダメなふたりがお互いに褒め合って、やる気を見せないまま、なんか解決に向かっちゃうのである。 『地面師たち』であんなに怖くてたまらなかったトヨエツが、やる気もなければ実力もない、だけど余裕さえ感じる時田を演じているのも見どころだし、season1で拳銃を失くすというとて

          ダメなバディのゆるゆる刑事ドラマ『NO ACTIVITY』

          女性の生き方と強さを見せる『スオミの話をしよう』

          わたしは長澤まさみが好きだ(2回目)。主演の最新作で三谷幸喜作品と聞いて楽しみにしていたので、映画館に行ってきた。予告で見ていたときに既に舞台っぽいワンカメ長めのやつなんだろうなとか、話の流れとか、結構わかるような感じだったし、ネタバレというほどでもなく、大体みんな結末はわかっているのではないだろうかと思うけれど、予想通り想定外のことは起きない。 一室での元夫たちの会話がメインだから、思い浮かぶのは誰しもが『12人の優しい日本人』だろうし、実際それに近い。正直、ちょっと途中

          女性の生き方と強さを見せる『スオミの話をしよう』

          争いは何も生まないというよくあるメッセージ『リボルバー・リリー』

          わたしは平和ボケしているこの国が好きだ。かつて戦争による悲しい歴史を持ち、いまだにその傷跡がたくさん残る土地に行くたびに、平和ボケできている今の幸せを感じては、そんな愛国心のなさがボーダーレスな世界を作るような気がして、この平和ボケという現実をあまり批判したくないといつも思う。 平和ボケしてはダメだ!国力が大事だ!軍隊を持つべきだ!という意見を批判するつもりもないけれど、そういうふうな考え方のほうが戦争から引き返せなくなったときと似ているような気がしてこわい気もする。この映

          争いは何も生まないというよくあるメッセージ『リボルバー・リリー』

          キャストの怪演が光る『初恋』

          わたしは内野聖陽さんが好きだ(2回目)。なんの役をやっても違和感がないのだけれど、このヤクザの役はマッチしすぎていて、こういう人いそうだよねって思っちゃうぐらい狂気じみていた。失うものは何もない無敵のひと。 正直なところ、この映画のタイトルが『初恋』なのもよくわからないし、話もそう目新しくないので、感想はというと、さほど面白くはなかったというのが本音だけれども、何がすごいって役者。ベッキーがすごい。怖すぎる。狂気の極み。俳優になったほうが良いのではないか。 ガッチガチの殺

          キャストの怪演が光る『初恋』

          自分を重ねて時間の流れを感じる『SUNNY 強い気持ち・強い愛』

          わたしは90sカルチャーが好きだ。ちょうど学生だったから、いわゆる「世代」だというのもあるし、どうだろう、振り返ってみると音楽シーンなんかはいちばん盛り上がっていたと思うし、金はないけど文化は豊かみたいな世代だったようにも思う。大根仁監督作品といえば『モテキ』とか電気や民生の音楽にまつわる映画が多いけれど、タイトルからして今回はオザケンである。 90sのジャパニーズカルチャーといえば、代表的なのはコムロ、アムロ、みたいな感じで、ギャルが強いとか、JKこわい、みたいな感じで、

          自分を重ねて時間の流れを感じる『SUNNY 強い気持ち・強い愛』