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【今週の週末郷土ごはん】#43 鯖缶のでんぶを使った京丹波市の「ばら寿司」、京都の美味しい白味噌で里芋と大根の白味噌煮・地蛸ときゅうりの辛子酢味噌、簡単美味しい冬瓜の酢の物

少し前から朝晩は肌寒く感じられるほど俄に秋になった。夏が随分長かったので、服装選びやメイクの色調に戸惑う今日この頃。
秋にはこっくりとした白味噌の味が恋しくなる。思い切ってちょっと良い京都の白味噌を買ってみた。こういう買い物はわくわくして嬉しい。それに、和食はちょっと良い調味料を使うと驚くほどぐんと美味しくなる。

せっかくなので湯葉と薄口醤油も一緒にお取り寄せ

京都の白味噌も手に入れたことだし、少し前からつくりたかった京丹波市の郷土料理を合わせてみることに。この「ばら寿司」が本日のメインである。

◆京丹波風のばら寿司

実に豪華な具沢山の箱寿司タイプのちらし寿司。山口の岩国鮓や長崎の大村寿司など、西日本で時々見かける類のものだ。今回は二段重ねにしたが三段にする家もあるようで、人数や機会に合わせて調整されたのだろう。見るからに華やかで、いかにも西の食べ物という感じがする。

煮た椎茸や干瓢、錦糸玉子に紅生姜とおなじみの具が入る中、特徴的なのは舞鶴湾で揚がる鯖の缶詰で作ったでんぶを使うこと。さすが鯖の産地である。生や干物の鯖ではなく、缶詰を使うという点にいたく興味をひかれた。いったいどんな味になるのだろう?想像できるような、できないような。
しかもこの際使う缶詰は、さばの水煮や味噌煮ではなく醤油味の鯖缶。地元ではばら寿司用の缶詰が売られているそうだが、今回は昨年天橋立へ行った際購入したこちらの缶詰を使う。

京都府立海洋高等学校開発の「京の鯖」。
これも醤油仕立てなのでおあつらえ向きだろう。よく見ると製造は福井県だがほぼ京都。両者は地理的にも食文化的にもとても近い。

味見してみると、かなりあっさりした味で用途が広そう。身の詰まった立派な鯖はふっくらと煮え、やや大きめの缶にぎっしり入っている。醤油の風味もまろやかで、淡口の京都らしい味。茄子と一緒に煮ても美味しそう。
今回つくるばら寿司用のでんぶは醤油味の鯖缶に砂糖を加え、ほぐしながら煮る簡単なもの。二人分に1/2缶強使った。
通販でも買えます。

その他の具は、以下のように準備。
<酢飯に混ぜ込む具>
・ごぼう、にんじん:かやくごはんの要領で小さく角切りにし、薄味に煮含める
<酢飯に散らす、飾る具>
・干し椎茸と干瓢:それぞれ戻して醤油と酒、みりんで甘辛く煮る
・かまぼこ(今回はちくわで代用):横半分の扇形の薄切り
・錦糸玉子
・紅生姜
・グリンピース(冷凍でも缶詰でも)

だし昆布を入れて固めに炊いたごはんに、梅酢に砂糖少々を加えた合わせ酢を混ぜ込み酢飯にし、煮たごぼうとにんじんを混ぜてベースのごはんとする。
四角い容器にこのごはんの半量を詰めて干し椎茸と干瓢、鯖缶でんぶの各半量を散らし、残りのごはんを詰めて椎茸、干瓢、でんぶを散らしたら、その上に錦糸玉子、かまぼこ、グリンピース、紅生姜を彩りよく飾って完成。

少々欲張りすぎて具が多く、見た目がごちゃごちゃしてしまったが、非常に美味しい。
それぞれの具をやや薄味に調整したのが良かったと思う。梅酢を使った酢飯もさっぱりとして好相性。なお、この梅酢も昨年京都の大変香りの良いローカル梅「城州白」を漬けた時のもの。京尽くしにしてみた。

食べてみると、それぞれの具がしっとり馴染み、互いに引き立て合っていることに改めて気付かされる。グリンピースは彩りかと思ったが、あった方が断然美味しい。やはり全ての具でバランスが取れていると感心した。美味しくて、ついたくさん食べてしまう。

少々手間はかかるけれど、その甲斐が十二分にある美味しさなので是非またつくりたい。鯖缶さえあれば材料は手軽に揃うので、気が向いた時にえい!とつくれそう。おすすめです。

続いて、白味噌を使ったものは以下2品。

◆里芋と大根の白味噌煮

汁を欲張りすぎて味噌汁みたいな写真に…。もうちょっと汁気を減らして撮ればよかった。
美味しい白味噌を使ったので、これまでとは全く別物に美味しくできた。やはり良い調味料は良い。

ポイントは、材料別にきちんと下ごしらえをすることと、出汁をとること。
大根は予め面取りと下茹で、里芋はごく軽く茹でて塩で洗い、ぬめり取りをしてから改めて両者を合わせて昆布とかつおのだし汁で落し蓋をしながら煮、最後に白味噌を溶き入れる。この白味噌は麹が多く使われていて旨味が濃いので、みりんや醤油等の補助的な味付けは殆どしていない。散らしたのはへべすの皮。

◆地だこときゅうりの辛子酢味噌

いつもは具材に酢味噌を和えて出すことが多いが、先に和えるとどうしてもきゅうりから水が出て味がぼやけてしまうので、きゅうりは予め塩もみしてよく絞り、刺身用の茹で蛸は食べやすい一口大のスライスにして盛り合わせ、上から辛子酢味噌をたっぷりとかけてへべすを添えた。
上の煮物と同様、この白味噌はそれ自体で十分甘くて美味しいので、酢味噌にする場合も砂糖やみりんは加える必要がない。今回は辛子と酢を混ぜて辛子酢味噌に。この味がまた美味しく、夫が「これどうやって作ったの!?」と驚嘆するほど。白味噌効果は素晴らしい。

この蛸は三浦の直売所「すかなごっそ」のさかな館で見つけた地蛸。茹で蛸が食べやすくスライスされ、四人分ほどたっぷり入っていた。もう半分はわさび醤油で。やはり佐島の地蛸は美味しい。

そういえば、随分前にも佐島の地蛸を丸ごと干物で買って食べた時もあった。あれも美味しかったなあ。蛸のポルトガル料理は美味しいんですよね。

さて、この日はもうちょっと酢の物の味が欲しくて急遽つくった冬瓜の一品が好評だった。

◆冬瓜の酢の物

薄切りにしてさっと茹で、水気を絞った冬瓜にごま油、酢、砂糖、淡口醬油を混ぜた酢の物衣を加えて和え(ちくわも入れたがなくても十分美味しい)、おろし生姜をのせただけだが、非常に美味しかった。

ポイントはやはり、面倒でも冬瓜の下ごしらえをきちんとすること。厚めに皮をむき、口に入れる大きさに切ってから塩水で軽く洗い、できれば砂糖で揉んでおくとあくが抜けた上に味もしみやすい。今回は下茹でするので軽い塩洗いだけで十分だが、これをするとしないとでできあがりの美味しさがぐんと違う。
シンプルな煮物、和え物こそ下ごしらえと調味料の質がものを言うので、面倒がらずに手をかけたい。

本日のワインはカーブドッチの白、セミヨン。ちょっと良い素材を使ったときや、手間をかけて丁寧に料理をつくった時にはカーブドッチを合わせたくなる。ちょっと硬質な感じもあるこのワインは、ばら寿司はもちろん、蛸や酢の物の味にもよく合った。ゆっくりと味わって飲みたいワインである。

食材の美味しい秋はどのジャンルのお料理も美味しい。季節の食材をどう食べようか考えるのも毎日の楽しみだ。

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