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女性の発達障害について考える⑬ASD女子の小学校生活
■ASD女子VS.学校
はじめに
今回のテーマは
「ASD女子の小学校生活」
について考えていきます。
正規教育を受けるようになって
ASD女子は始めて
その特性が明らかになるというケースは
少なくありません。
なぜかというと
今まで家庭といった閉じられた環境から
学校という見知らぬ生徒達のたくさんいる
環境で過ごすことを強いられるので
問題が浮き彫りになりやすいのです。
ASD女子の場合
幼少期の頃は
特に診断が付きづらいことや
「大人しいから大丈夫だろう」
という判断から
早期診断や支援を満足に受けられず
学校では辛い思いをしてきた
という人は多いです。
✅ASD女子が小学校生活で見せる主な特徴
✅小学校生活を送る上で生じるASD女子の苦悩
✅学習面で生じる困り事
等を中心に
ASD女子の学校生活での
主な特徴について掘り下げていきます。
Ⅰ.ASD女子の小学校生活
小学校生活は幼稚園・保育園と比べると
過ごす時間が倍になります。
さらに過ごす時間だけでなく
通う子どもの数も倍になります。
子どもの数の多さや
拘束時間の長さに耐えられなかったり
不快な感覚に
耐えなければならなかったりなど
新たな困難にASD女子は直面します。
ASD女子は学校生活を送る上で
一見何の問題もなく見えます。
しかしASD女子は学習によって作った
「定型発達」の仮面を被って維持している
ケースがほとんど。
初めは問題なさそうに見えても
成長するにつれて求められることが多くなり
結果、仮面が剥がれてしまうことも
少なくありません。
小学校に進学する前
✅学校とはどんな場所なのか
✅何をするところなのか
などを事前に伝える必要があります。
Ⅱ.学校生活はストレスだらけ?
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ASD女子にとって
学校とは家族以外の人達と
長い時間を過ごす場所になります。
慣れない環境のほか
大勢の子ども達との交流で
ASD女子はストレスを感じてしまい
ASDの特性が表に出やすくなる
ケースも多いです。
学校生活を送る上で
ASD女子が遭遇する様々な悩み事を
述べていきます。
①場所の「変更」が苦手
ASD女子は
教室のレイアウトが変わっただけで
パニックを起こすことがあります。
他に席替えやクラス替えに対しても
混乱してパニックを起こす子も
少なくありません。
②次に何が起こるか分からない
多くのASD女子にとって
一般的な学校の環境はストレスだらけ。
「次に何が起こるのか分からない」
という強い不安感を抱き
学校に行くのを嫌がることがあります。
ASD女子はルールが決まっていて
次に何が起こるのか予測できれば
ある程度過ごせます。
学校に通う際も事前に
どんな場所でどんなことをするのか
案内・説明することで
不安は多少軽減されます。
③人付き合いについていけない
女子は成長するにつれて
友人関係が変化していき
人間関係も人物や人柄が中心となります。
女の子の人間関係の特徴は
他の女子や男子の噂をするようになり
さらに繊細な付き合いを求められ
おまけに友達への忠誠心も
ころころ変わっていきます。
ASD女子は年齢を重ねるにつれて
複雑化する女の子の人間関係に
ついていけないと感じやすくなります。
何故興味ない人間の話題や
今流行している話題をしたがるのか
などが分からないし
人間関係の複雑さを理解するのに
時間がかかります。
そして自分を保つことが難しくなり
休み時間がかえって
「恐怖の時間」になることも…
④集団行動に興味が無い
ASD女子は集団で遊ぶことについて
意味やメリットを見いだせない
と感じることが多いです。
またメリットよりも
デメリットを感じるという
ASD女子も少なくありません。
ASD女子にとって
1人で過ごすことは何よりも落ち着きます。
しかし遊びの場は
社会生活への順応の場
という認識が根強いため
1人で過ごすことは
あまり良しとされません。
⑤女の子らしくふるまえない
女子は特に
女の子らしいふるまいや
社交力への期待が大きいです。
しかしASD女子は
その期待通りにふるまえない/合わせることが
苦手。
女の子らしくふるまうことへの期待や要求は
いまだに根深くASD女子を蝕んでいます。
Ⅲ.学校の教育システムの特徴
そもそも学校の教育システム自体
定型発達向けに作られているのが特徴。
感覚過敏や
言葉の意味を理解するのに時間がかかる
などの特性を持つASD女子にとって
大勢の子ども達と
一緒に授業をすることは
視覚面でも精神面でも
苦痛に感じやすいのです。
さらに学校のルールは
社会の常識やコンプライアンスに基づいて
定められています。
一般常識自体が暗黙の領域なので
ルールそのものの意味や必要性は説明されず
「ルールは守りなさい」
とだけ押し付けられることはしばしば。
しかしASD女子は
ルールの意味や必要性をすぐに理解できず
説明されても
理解に苦しみ悩むことも少なくありません。
ある程度の年齢になると
「そういうものなんだ」
と理解できることでも
ASD女子にとって
理解できないことがあるのです。
私自身も
「そういう規則なんだ」と説明されても
すぐに理解できず
何度も混乱してモヤモヤした経験があります。
何回か経験して
やっと意味を理解する方が多かったです。
Ⅳ.ASD女子の学習特性
①学習面の困難
ASD女子もASD男子同様
学習面において
好きな科目と嫌いな科目の差が激しい
という特徴があります。
全科目学力が一貫しているというより
科目ごとに極端な凸凹があるのです。
ASD女子が
好きな科目と嫌いな科目で差が大きいのは
いくつかの理由が挙げられます。
✅ASDの認知特性の問題
✅生まれつきの処理速度と能力の問題
✅教え方
✅科目の特性
✅その科目に対して抱いている興味とやる気のレベル
ASD女子が科目ごとに
好き嫌いが別れやすくなるのは
生まれつきの処理速度と
能力の問題も大きいです。
他に科目の特徴や教え方によって
学習内容が分からなくなると
途端にやる気スイッチが切れてしまうのも
影響しています。
②学習面におけるASD女子の困り事
✅大勢の子ども達と一緒に授業を受けるのが苦痛
✅他の子がいると集中しづらい
✅大勢の子ども達と一緒に勉強する理由が分からない
✅感覚過敏に悩まされる
✅いつも空想に耽る
✅口頭での指示が苦手
✅他の子や先生よりも優れているという傲慢さ
ASD女子は
おしゃべりが早熟で語彙力も豊富。
一見早熟そうに見えますが
学習面でも十分に発揮しているとは
言い難いです。
何故なら学習の場でも
社交性を求められるため
倍努力をしなくてはならないからです。
③ASD女子の好きな科目
ASD女子の好きな科目として
主に「美術」と「国語」と
文学的でクリエイティブな科目が
挙げられます。
反対にASD男子は
「数学」や「理科」といった科目が
得意であることが多いです。
実は美術や国語といった科目が得意なのも
ASDの診断が付きにくい原因と
なっていることがあります。
私の場合も
国語や歴史が好きでしたが
反対に
算数や理科といった理数系は苦手でした。
Ⅴ.ASD女子は先生から嫌われやすい?
①先生ですら気づきにくいASD女子
ASD女子は
ASDの症状が一見からして目に見えづらく
ASD特有の反復行動などを
あまり見せないため気づかれにくいです。
ASD女子達は
環境に適応しようと努力します。
しかしその場にそぐわない行動や言動を
しばしば取ってしまうため
クラスメートや担任の先生からも
「あの子は空気が読めない」
「どこかおかしい」
と誤解されてしまうことも少なくないのです。
②先生から嫌われやすいASD女子
ASD女子の中には
特定の教科に詳しく
目に見えない暗黙の領域を認識していないため
先生が話している時に
口を挟んで知識を披露したり
間違いを堂々と指摘したりするので
先生から
「生意気な子」と誤解されることも。
ASD女子は決して
相手の気分を害してやろう
という悪意は持ち合わせていません。
自分の言葉が正論でも
時には相手の気分を害してしまうことを
ASD女子はわかっていないことが多いです。
ASD女子は
きちんとやりたい
自分を認めてもらいたい
と思っています。
しかし
必死の努力をしているにもかかわらず
相手を客観視する能力の弱さなどから
失言や失礼に見える態度を取ってしまい
先生を怒らせ嫌われてしまいやすいのです。
③発達障害への理解不足
また担当する先生達に
「発達障害への知識があるかどうか」も
非常に重要です。
学校の先生の中には
ASDの知識を持っていない人もいることから
偏見を抱くことも少なくありません。
「普通の子どもならできるはずだ」
という期待が
普通にふるまえないASD女子を
プレッシャーに追いやってしまいます。
発達障害の子供達を支援する
先生から聞いたことですが
大学の教育学部では
「発達障害」の知識に特化した教育が
未だ不十分であり
かつ教員になってからは
業務の忙しさが重くのしかかるため
自己研鑽が難しいという問題があります。
仮に研修での学習があったとしても
発達障害の知識に関する勉強が
不足しているのも背景にあります。
まとめ
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ASD女子にとって
小学校生活はストレス続き。
なんとか適応しようとしても
対応能力が限界を達してしまう
ASD女子は少なくありません。
✅自分がやらなくてはならないこと・やるべきことが分からない
✅「どうしてやらなかったの」と叱責されてもその理由を説明できない
✅次にやるべきことの状況をうまくイメージできない
✅「また間違えたらどうしよう」と不安が強くなって失敗が怖くなる
✅なぜ学校に行かなければいけないのか理解できない
✅友達への忠誠心・目配せや手振りを使う女子社会でうまくやっていけない
✅感覚過敏に悩まされる…etc.
ある意味小学校は
ASD女子が「私は普通じゃない」
と意識するきっかけになる場所とも言えます。
私も小学校に進学してから
友達付き合いや勉強面などで
トラブルを抱えいじめを受けました。
当時の教頭先生が
発達障害の知識を持っている方で
私をかなり心配してくださり
私が発達障害では無いかと親に受診を進め
結果私は自身がASDだと知りました。
私にとって小学校生活は
色々トラブルも多かったですが
自身が「普通の女の子じゃない」ことを
強く意識するきっかけになりましたね。