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本の紹介、感想

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#本

中世音楽以前に関する音楽書15(+α)選

中世音楽以前に関する音楽書15(+α)選

先日、中世からバロックにかけてと、現代音楽の両方の作品が絶妙に混じったプログラムのコンサートを聴きにいきました。
「僕たちは古楽と現代音楽の対話を通して『数』と『トランス』という壮大な命題に想いを捧げる」


で、古楽も現代いずれの時代の音楽も大好物なのですが、ルネッサンス以前(このコンサートではヒルデガルド・フォン・ビンゲンとか中世のエスタンピとかペロタンとかファエンツァ写本とか演奏されたわけ

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日本の近代政治思想史がこんなに面白かったとは!

日本の近代政治思想史がこんなに面白かったとは!

渡辺浩「日本政治思想史 十七〜十九世紀」を読む

今回紹介する本は日本の近代政治思想史の概説書です。政治思想史なんていうと、すっげぇ難しそうに思えるし、全く自分の生活に無縁にも思えるしかもしれませんが、それがそんなことはないんですよ、って話です。

日本の政治思想史と聞くと、まっさきに丸山眞男氏の「日本政治思想史研究」あたりを連想する人もいるかもしれません。そして丸山氏の長年の思索の俎上に

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ラヴェルってこんな面倒な人だったんだろうなぁと心底思わされる小説

ラヴェルってこんな面倒な人だったんだろうなぁと心底思わされる小説

エシュノーズ「ラヴェル」を読む

ラヴェルという作曲家に対するイメージは、いろいろありそうです。
絢爛としたオーケストレーションから「オーケストラの魔術師」と呼ばれたり、ドビュッシーと並べられて音楽の印象派の代表的な作曲家とされたり、エッジが効いた何かの宝石か鉱石であるかのような硬質なピアノ曲が愛されたり、いろんな好まれ方をしていつつ、でも、何か本質は捕まえられてない感じがします。

あくまでも個

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美術館の学芸員、キュレーターってどんなお仕事?

美術館の学芸員、キュレーターってどんなお仕事?

「美術館の裏側」
「THE CURATOR'S HANDBOOK」
の2冊を読んでみる。

みなさんは美術展を最近観にいきましたか?
東京は音楽もそうですが、世界中のものが集まるという意味ではとても恵まれてますよね。今だって、渋谷、上野、六本木をはしごするだけで、村上隆の大規模展、めったに見られないほど作品が一同に会したボッティチェリ展、倉敷の大原美術館からエル・グレコの「受胎告知」がやってきてい

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「4分33秒論」を/から考える

「4分33秒論」を/から考える

この「4分33秒論」という本は佐々木敦氏が「『4分33秒』を/から考える」と題して、2008年3月から7月に月1回のプログラムとして計5回「4分33秒」について話した内容をまとめたものです。つまり10時間以上「4分33秒」について語ったり、いろんな資料を視聴したりという、そんなに「4分33秒」について話せるのかって素朴な疑問以上に、そういうイベントを企画するだけでも勇気いりますよね!w

最近は日

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私の好きな料理の本3冊

私の好きな料理の本3冊

いつも、自分の作った料理の写真なんかも、今週の食べ物、の中で紹介してたりするので、今回は少し変わったところで、自分の気に入っている料理の本を3冊、勢いで選んで紹介してみたいと思います。

まず1冊目!

三善晃「オトコ、料理につきる」

ってことで、一昨年亡くなられた作曲家三善晃氏の料理本というか、料理のレシピとエッセイ。
私が日本人の作曲家で最も好き、かつ、尊敬している三善晃氏は「遠

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読んでいなくて後悔した劇的な書「シェイクスピアのアナモルフォーズ」

読んでいなくて後悔した劇的な書「シェイクスピアのアナモルフォーズ」

「アナモルフォーズ」という単語はどの程度一般的なものなのでしょう。
日本語では「歪像画」といういささかなじみのない訳語があてられたりするのですが、正面からみるとひずんでいて正しく見えないけれど、横や斜めからみると歪みが修正された絵柄がはっきりみえる絵画やその技術をいいます。15世紀末頃から見られる技法で、わざとゆがませる視覚的な遊びということができるのですが、絵柄は様々で、エロティックな画像を正面

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厭な小説、三連発。どうして厭な話なのに惹かれるのか?

厭な小説、三連発。どうして厭な話なのに惹かれるのか?

嫌いなものほど見えちゃうことってあるのはなんでなんでしょう。ゴキブリが嫌いな人に限って最初にその人が見つけちゃうみたいな。なんかありそう、いそうって思ったときにそっちを見ちゃダメだ、って思うのにやっぱり見ちゃって、そのうえ、見つけちゃうパターン。これって、触っちゃダメそうなものに、やっぱり触っちゃうとか、いろんなパターンがある。(その割に幽霊とかお化けは嫌いなほど見つけやすいとかないような気もする

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