(13)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~
お手紙、つづきです。
「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」
・・・というお話をしています。
低学年までは動画やゲームがなくても十分楽しく過ごせます。
「みんな見てる」「そういう時代」は少し横においといて・・・
〝読む楽しみ〟にすんなり出会える時期を大切にしたいなと思います。
・お手紙(12)はこちらからどうぞ。
(12)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
今日は、
「二度と戻らない子ども時代に物語を『読む』ということ
その1」
と・・・いうお話です。
さて、シオリさん。
本ーとひと口に言ってもたくさんのジャンル・種類がありますが、私は子どもには特に物語・小説を読んでほしいと願っています。
理由はたくさんありますが、まず優れた物語はそれだけで子どもに
「ひとつの世界」を与えてくれるものだからです。
「これから一体どうなるの?」
「主人公は敵をやっつけることができるの?」
「どうやってこの問題を解決するの?」
・・・など、ハラハラドキドキ、ワクワクの体験をさせてくれるのが物語。
おとな読けに書かれた物語はハッピーエンドばかりとは言えませんが、
児童書の大半は、子どもにとって「読んで良かった!」と思えるような、後味の良いものが多いです。
ただ感動できる物語を・・・と言うのなら、アニメやマンガや映画でも
十分・・・と考える人もいるでしょう。
アニメや映画は私も大好きですし、我が家の子ども達もよく見ています。
でも、物語を
「読む」ことは、子どもにとって特別な体験
だと私は思うんです。
ーー文章を読むことが大切なんです。
文章メインの物語を、想像したり、自分のペースでゆっくり理解しながら読み進めていく・・・。
数百ページあるものなら、休みの日に1日がかりで挑んでも、読み切れないかもしれません。
そのくらい時間も頭も体力も使いますし、「流し見」や「ながら見」ができる映像作品と違って、
文字や文章を追うことは「読もう」と思わなければできない、自主的で能動的な行為
です。
――これが、素晴らしいことなんですね!
本好きな人ならわかると思うのですが、文章だけの物語(じゃなくてもいいのですが、文章メインの本)を読むことは、本好きなおとなにとってもかなり頭を使う――なかなか疲れることなんです。
けれど、疲れるということは、それだけ頭を使っているということ。
本好きな私も、疲れが溜まっていたり、考えなければいけないことが多い時は、ページをめくっても小説の内容が頭に入ってきません。
そういう時は、気分転換のためにマンガを読んだり、何度も観ている映画をかけたりします。
そしてあらためて、「小説を読むのってどれだけ頭のエネルギーを使うんだろう・・・」と感じたりします。
――と、いうことは、心身ともに成長過程にある子どもが
「文章メインの本」にじっくり取り組むことは、とても成長を促すことだと思えませんか?
そして、そうやって時間も頭も使った先に「読んで良かった!」という感動が待っていたとしたら・・・
それは子どもにとってどれほど素敵な体験でしょう。
児童書の中でもとくに物語・小説をお勧めしたいのには理由があって、
それは、
数え切れないくらいの作家が、「いま子ども達に伝えたいこと」
――大切なメッセージ――を、決して上から振り下ろした教訓めいた言葉ではなく「ワクワクする物語」として変換しているのが物語だからなんです。
そして子どもにとって、何時間や何日間もかけて「読んだ」物語は、
しっかりと自分の心に取り込まれていくものだからです。
――自分のペースで、すとんと理解できるまで、じっくり読むということ。
これは、誰にとっても情報が染み入りやすい状況であり、手段です。
子どものうちにぜひ取り組んでほしい体験だと思います。
読む、ということの情報量の多さについて、一例を挙げてみますね。
たとえば同じ物語の「映像作品」と「小説」があったとします。
大筋は一緒なのですが、例えば映像作品のほうで、主人公が海を見ながら立っているシーンがあったとします。
寂しそうな情景であることは読み取れるのですが、「主人公の心情」まではセリフで語られない・・・こういうことって、よくありますよね。
映像作品は映像で語ることがシゴトですから、なんでも言葉やセリフで表現するのは陳腐だったりもします。
これはこれで美しいのですが、見る側に「感じる」センスがなければ何も伝わってこなかったりもしますよね(特に子どもには難しい時もあります)。
けれど
物語・小説は、当たり前ですが「すべて文章で書いて」あります
。
なぜ主人公が海に行きたかったのか、海を眺めながら何を感じているのか・・・。
そんなふうに「人は何を考え、どう行動するのか」を、作家というプロが言葉を尽くして書いているのが物語・小説なんですね。
こういうものを、子どものうちに何冊も読む体験をすると、子どもは自然と「文章で考える」「文章から想像する」「自分の言葉を持つ」ようになります。
〇歳頃までに本をたくさん読んだ子は、読解力や語彙力が育つ・・・という話を聞いたことがありますが、あれはやっぱり、
吸収力のある時期、感受性のかたまりである成長期に「どのくらい読んだか」にかかってくる・・・ということなんだと思います。
そしてまたこの
「読む」習慣は、子どもにとって自分に対する自信にもつながる
と思うのです。
子どもにとって「それなりの長さのある」物語を頑張って読んでみる・・・というのは小さな挑戦でもありますよね(短いものから始めてステップを踏めば大抵の子が読めるようになります)。
それでもがんばって「読めた」と思う時、そしてまた「おもしろかった!」と感じられた時、
「本を読んでおもしろいと思える」自分に対する信頼感が生まれます。
この時、子どもは
「本を読む」というひとつの引き出しを獲得
するんだと思います。
今風に言うと、「本を読む」というアプリを自分にインストールする・・・という感じでしょうか。
そしてそれは、いちど獲得するとアンインストールされることのないチカラです(一度自転車に乗れると一生乗れるのと同じです)。
この信頼感は、
「読めた」という自分に対する信頼感と、
「自分を楽しませてくれる」本に対する信頼感
でもあって、これがあると、図書館や本屋に行くことが楽しくなってきます。
そしてまた、物語をたくさん読めるようになると、子どもはどんどん「自分の頭で考えること」が習慣になり、
さらには「考え方のパターン」「乗り越え方のパターン」を自然と頭の中にストックしていきます。
――なぜなのでしょう?
お手紙、続きます。
〈「どうなるの?」ページをめくる手止まらない 読書の筋肉いま鍛えてる〉
・お手紙(14)はこちらからどうぞ。
(14)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
・お手紙(1)はこちらからどうぞ。
(1)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)