(11)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~
お手紙、つづきです。
「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」
・・・というお話をしています。
・お手紙(10)はこちらからどうぞ。
(10)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
今日は、
「子どもが気づかないように、読む本の字をだんだん小さくしていく」
・・・というお話です。
さて、シオリさん。子どもが自分から本を手に取るようになるには、
「ぱっと見ただけで『読める!』と思える字の大きさ」と、
「その子に合った内容・物語」
・・・が大切だというお話をしてきました。
そのイメージとして、まずはこれ。
見開きでこのくらいならどうでしょう(これは見本ですが、通常の児童書は漢字に読み仮名がついていますよね)。
あくまで文字の大きさの目安として入れたダミーの文章なので、内容は気にせずに・・・お願いします。
これは、何の本ということもありませんが、小学1年生の国語の教科書のイメージです。このくらいなら、年長さんで絵本が大好きな子なら十分に読むことができますよね(読み仮名があれば)。
「ぱっと見ただけで『読める!』と思える字の大きさ」はファーストアクションを誘いますし、
「その子に合った内容・物語」というのはセカンドアクションを誘います。
これが両方あって初めて
子どもが自主的に「ページをめくる」ことにつながると思うんですね。
ちなみに、文字の大きさ見本(1)から、ほんの少しだけ文字が小さくなり、1行の文字数が増えた場合ですが・・・
このくらいならあまり変わらない印象。
文字の大きさ見本(1)が読めた子ならまったく問題なく読むことができそうですね。
同じ文字の大きさでも、挿絵がページの半分を占めたりすると、なお読みやすいです。
こんな感じ
こういうレイアウトは、例えばお手紙(9)でお話した「ミルキー杉山のあなたも名探偵」シリーズ(作・杉山亮/絵・中川大輔/偕成社)でもよく見られる構成です(下半分がほぼ挿絵)。
子どもが挿絵を見ながらストレスなく文章も読めるので、スラスラとページをめくることができます(ミルキー杉山シリーズは、見開き全面に絵があり、文章が少し・・・というページも多く、本当に楽しいです!)。
そして、文章メインの本をスラスラ読めるようになるには、繰り返しますが「白地に黒い字、縦書き」の本を繰り返し読むのがコツ。
挿絵がたくさんあってもいいのですが、メインで読む文章は
「白地に黒い字、縦書き」が基本。
この3つの条件に慣れることは、日本の出版物にかなり強くなることを意味します。
もちろん横書きの出版物もたくさんありますが、今の子ども達って横書きには自然と強くなるのではないでしょうか。
なので、子どものうちに縦書きを見慣れておくことはためになると思うのです。
最終的に一般的な小説を読めるようになるとたぶん一生、読書を自分の娯楽として気軽に取り入れられますし、
勉強面でも「読む」「文章を理解する」ことにストレスを感じづらくなるのでは・・・と思います。
いずれにしても、デメリットはないです!
――と、いうわけで
「こんな順序で本を読んでいくと、気づいた時には文章だらけの本でも、
挿絵がなくても読めるようになっているよ!」
・・・というお話を続けていきますね。
文字の大きさ見本(2)あたりに慣れてくると、こんどは
1年生の国語の教科書レベルと比べると、字が小さくなり、文章量も読みごたえが出てきますが、文字の大きさ見本(2)あたりを経ることで違和感は感じないでしょう。
実際にこのくらいの字と絵のバランスの児童書はたくさんあるので、子どもに合った内容の物語を探してみるといいと思います。
これに慣れたら、続いてこのくらいも読めるようになります。
ーーいかがでしょう?
だいぶ字が小さくなった印象ですが、子どもはここまでの段階で
「文章を読む」「物語に入り込む」経験を積んでいるので、
文字の大きさや文章量はおとなが思っているほど高いハードルにならないと思います。
それよりも、内容がおもしろいかどうかが重要になってくる時期です。
ちなみに長女が小学2年生の頃に夢中になった「科学探偵 謎野真実」(作・佐東みどり、石川北二、木滝りま、田中智章/絵・木々/朝日出版社)は、文字と絵のバランスがこれに近いです。
ーーさて、これに慣れたら次の段階
ここまでくると、文章のボリューム的には一般的な小説とほぼ変わらない印象になりますが、物語に夢中になっている場合はもう気にならないはず。
同じ児童書でも、低学年の子にいきなりこれを「はい」と渡すのは難しいけれど、ステップを踏むことで数年でここまでくることができると思うのです(話がおもしろいことが重要)。
ただ、児童書の挿絵は、子どもにとって読み進めるうえで大切なイメージの手助けになるので、少しでも挿絵が入っていることを喜ぶ子なら、その気持ちを汲んだ本選びをしてあげるのがいいと思います。
ーーさて、これに慣れて「読む」ことがすっかり体に馴染んだら・・・
このくらいのバランス・・・つまり、挿絵がほぼなくても読めるようになると思います。
実際、「ハリー・ポッター」シリーズ(作・J.K.ローリング/訳・松岡佑子/静山社)にはほとんど挿絵がありません。
日本で最初に出版された静山社の本を見てみると、絵と呼べるものは表紙と、各章の扉絵に書かれたイラストだけなんですね。
映画化されるまでは、読み手はあの壮大なファンタジーを文章のおもしろさと自分の想像力だけで楽しんでいたんですよねーーもちろん、子どもの読者も。
読み手一人ひとりの頭の中に、それぞれのハリー・ポッターの世界が広がっていたのだと思うと、それはそれでとても豊かなことだと思います。
読めること。想像できること。
これは、自分で磨くことのできる自分の宝物。
ーーでも、でもです。
いやいや、ステップを踏むとか、こんな面倒くさいことをしなくても、どんな順番で読んでもいいでしょう・・・と思う方もいるはずですよね。
ーーはい、もちろんいいんです。
すんなりいろんな本を読めるようになる子なら、それで大丈夫!
ただ、文章メインの本に苦手意識を感じているパパ・ママ、子ども本人・・・そういうご家庭もあると思うんですね。
そういう場合は、どんなものでも段階を踏めばたいていのことはできるようになる、ということをお伝えしたいんです。
ましてや読書は特殊技能ではないので、選ばれた人間だけが楽しめる娯楽でもなければ、知能の高さが必要な取り組みでもありません。
――ただ、慣れること、それだけなんです。
ここでちょっとだけ、最初と最後の画像を見比べていただけると嬉しいです。
ーー文字の大きさ、だいぶ違いますよね。
どんな読書家でも、最初は(1)からのスタート。
慣れれば、どんな分厚い小説でも読めるようになります。
見本(1)から(6)まで、似たイメージの文字バランスを持つ児童書はたくさんたくさんあるので、子どもの興味に合わせて「この本を読めたから、次はこれを読めるかな・・・」という感じで本選びをサポートしてあげるとベストかなと思います(子どもがどこかの時点で読みたい本を選べるようになればそれで大丈夫)。
ただ、それでも毎回親が本選びに関わるのは難しい・・・という場合、
試してほしいのが、このお手紙のタイトルにもなっている積読本に頼る方法。
「この話は好きそう!」
「今ならこれが読めるかも・・・」と見当をつけて、
あらかじめ図書館で何冊か借りたり、古本屋でまとめ買いして「家においておく」方法です。
読まないかもしれない・・・ということを頭におきつつも、
たくさん用意しておくという考え方なんですね。
何度かお話しているのですが、我が家の次女の場合はこの
「家にもともとあった本」の中から自分に合った本を自由に選んで、
読むチカラを(勝手に)育んでいたようでした。
たとえば、自分の気分やその時点の能力が「文字の大きさ見本(3)」の時、手にした本が「見本(6)」程度なら、「無理だな」と判断してそのほかの積読本をあさり、「見本(3)」レベルの本を見つけ出して読み始める・・・そんなことを、自由に繰り返していたのです。
ーーこれは本当に、親としてラクでした。
長女の時のように「次は何を読んでもらおう・・・」と考える必要がなかったのです。
なので、「次の本」を親が一緒に見つけてあげる方法でも、
積読本から自由に見つけてもらう方法でも、どちらでも良いのですが、
いずれにしても「ステップをスムーズに踏める環境」が
「本読む子」へのサポートになるのかな・・・と思います。
お手紙、つづきます。
〈いつの間に絵は減り文章増えていく ある日小説読んでる不思議〉
・お手紙(12)はこちらからどうぞ。
(12)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
・お手紙(1)はこちらからどうぞ。
(1)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)