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心のnote|エッセイ・創作

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「きっと、誰にも、聞こえない。」 そんな心をふと、垣間見る。
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堂々巡り

堂々巡り

うだるような灼熱の日差し、喉を焼き切らんとする真紅のスープ

それらはまるで延々と続くかのように錯覚させ、人の手を一掬いの水へと誘なってゆく

その一杯が、さらなる業火を自ら招き入れるものだとしても

気持ちが湧き上がるわけ

気持ちが湧き上がるわけ

感情の突沸は「近すぎるから」起こるんじゃないか

と、ふと思った。

「ツアーで好きな芸能人に会えて興奮冷めやらない」

「友人への悪口を言われて咄嗟に手が出た」

「飼っていた犬が亡くなって会社に行くどころではない」

「普段は頭にもないのに、遠足前日に眠れなくなる」

どれも物理的、心理的、時間的近さが1つの要因のような気がする。

ふと思い出したときに、ぼんやりと、時にはっきりと感じる揺らぎ

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24時45分

24時45分

なんとなく時計を見た。

日時で言えば、今日は昨日になったあと。

そういえば何も食べていないなと気付いた途端、お腹が鳴った。
誰が聞いているわけでもないと、頭ではわかっていても気恥ずかしさがするすると詰め寄ってくる。

少しばかりの元気を糧に、何かないかと冷蔵庫を漁る。

最近、定番と化しているローソンの冷凍チャーハンをレンジにかけている間、500Wで4分半。

この前、実家に帰った時に元自室か

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「心はカバン。」

「心はカバン。」

いろんな物を詰められる

ピクニックならば、弁当箱を

防災用なら、非常食

目的に合わせて入れるから
目指す場所に迷ったときは
空っぽ、へしゃげてしまいがち

それなら、ひとまず、詰めてみよう

重さのフィットは、心のグッド

昔好きだった人に会う、そんな夢。

昔好きだった人に会う、そんな夢。

これはかつて一度、見たことのある夢。

屋外の公園か街路樹のほとりかどこか。
そんな静寂と落ち着きの入り混じる場所。

「外国とか行ってみたいと思わない?」
そう尋ねる彼女。
確か、英語教員の免許を持っていると
僕が言ったときに、そんな話をした気がする。

季節は秋。

身体が強張ってしまう前に、
寒さで縮み込んでしまう前に、
行動を起こしなさいよという
お告げなのだと思う。

<編集後記>
この

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いま、残業の気分です。

いま、残業の気分です。

「おつかれさまです」

いつもなら18時ごろのセリフも
今日は19時過ぎまでおあずけだ。

もう一人が早上がりしたとわかって
あと一仕事しようと心に決めた。

今日はあの人ももう上がりそう。

「おわったー」の声が聞こえるや否や
パタリのノートを閉じる。

いそいそと片付けをする私に
日常モードの彼からの誘い。

「このあと、ごはん行かない?」

オーバー

いつもは出かけない日曜日に
エアコンを買いに市街地へ出た。

行き際に長らく放置してしまっていた
コンポストを準備し、初めての生ごみ投下。

蒸し暑さに少々嫌気が差しつつも
お目当てを2台調達し、工事を取り付けた。

もともと切れていた生活用品と食品の補充で
塞がった手が空いた頃には、今日の任務を
終えたつもりになっていた。

こんなに盛り沢山の日は久しぶりだ。

仕事と風呂、寝るだけの日々。

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花びらを「花」と呼ぶけれど。



「自分は嫌な性格をしてる」
「こんな性格は変えたい」

そう、人は言う。

そんなときは、
落ち着いてゆっくり考えられる
時間をとろう。

日々にはさまざまなでっぱりがある。
歩いているだけでたくさんぶつかる。

雨風にさらされた草花が
その根をむき出しにするように、

人間も、大切でそれでいて繊細な心が
あらわになる。

そんな時はゆっくりと温かい土をかけてあげよう。
頑張っている自分の根っ

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「つもり」積もった「大丈夫」

「つもり」積もった「大丈夫」

入れたはずの砂糖が
微塵も感じられない
ブラックコーヒーだったり

手にしたはずの布巾が
音もなく横たわっている
シンクだったり

そうした一つ一つのことが、
よろめいた心を映し出すようで

泣けない私は、空を見る。

昨日、祖母が、亡くなった。

祖父、親戚のおばさん、
飼っていた3匹の犬やハムスター。

たくさんの死と向き合ってきた。

それなのに、ペットで泣けて
人では泣けない。

傍から聞けば、なんて不幸者なのだろう。

初恋の人にフラれた時の方が
よっぽど涙腺が緩かった。

涙は、どこから来るのだろうか。

恐怖と椅子と希望の光

恐怖と椅子と希望の光

人はなぜ映画館のスクリーンに
一喜一憂し、何かしらの想いを胸に
会場をあとにすることができるのだろう?

今や、あらゆる映画作品が公開とほぼ同時に
DVDやブルーレイの広告を打ち、
気づけば動画サブスクリプションの
コレクションの一つに肩を並べるこの時代。
人々が映画館へ足を運ぶのはなぜか?

「非日常の擬似体験だからだ」人々はありとあらゆる状況に慣れてしまった。
度重なるクレームも、信号待ちの3

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あぁ、もう、なんで、、

あぁ、もう、なんで、、

「もう一軒いかがですかぁ」
『そこの綺麗なお姉さん、このあとどう?』

トゥルルルルルルゥ
「だぁしゃぁりあぁす。ご注意くださぁい」

ざわつく雑踏を抜けて、いつもの道を歩く。
時折、耳の横を通り過ぎるカタンコトンという
電車の音だけが響いている。

明日も早い。

「ただい...ま...」
ついくせで出た帰宅を告げるその一言は
いつまでも宙を舞っている。
帰らなくなってからどれくらい経つだろう。

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行き場のないこの手は、気づけばまた、カップに延びている

行き場のないこの手は、気づけばまた、カップに延びている

目を開ける。
目を閉じる。

再び開いた目に映る時計の針。
思わず飛び起きる癖さえも抜けた
8日目の昼下がり。

いつもは出しっ放しのよそゆきのヒールも
今は靴箱で惰眠を貪っている。

優雅なブランチとは似ても似つかない
食べかけの出来合ものが喉元を過ぎたころ、
ゴミ出しを忘れていることに気づく。

ビンや缶の詰まった袋を手に
軒先に出た私の眼に映る
荒らされた袋と幾羽かのカラス。

「そっか、火

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上がらない声と見過ごされる現実

上がらない声と見過ごされる現実

ご存知の通りの惨状だ。
どこもかしこもストレスと
不安の掃き溜めと化している。

「リモートワークへ移行
できた仕事もある」
と言えば聞こえはいいが、
その中で渦巻く問題に気づかない人の
なんと多いことだろう。

子どもがいるご家庭では
学校や外遊びで使い果たされるはずの
力を持て余した彼らと対峙しながらの
仕事が余儀なくされる。

適度な距離感で過ごすことで
良好な関係を保ってきた人々が
一つの

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